第51話
「シーリャ、夜に何かあったのか?」
「・・・・・・何もないよ・・・」
今まで見たことない、不機嫌な顔をして何もないって。
こちらに目を合わせないようにしてながら、尻尾をパタパタと早く大きく左右に振られていた。
家の猫も不機嫌な時、こんな感じに尻尾を動かしてたな。
無理にでも聞かないとこのままだし。
て言うか悩みを相談とかされた事のない俺がなんでこんな事してるんだろ。
それにリーリンさんの方が、こういうのは向いてると思うのにな。
まあ、そのリーリンさんが口出しできない、深刻な問題なんだけど。
「はぁ・・・」
どうやって聞いたらいいのかわからない。
そのせいか、ため息をついていた。
それを聞いたシーリャは、不安そうな顔でこちらを見た。
何もないと嘘を言ってる事で、嫌われたのじゃないのか、そう思ってるのかな。
そんな事は無いんだけど、言わないとわかるはずないし、不安な顔をさせてしまうよね。
「何もないって言ってるけど、心配なんだ」
心配と言う言葉を聞いたシーリャは、不機嫌に揺らしていた尻尾をとめた。
「どのくらい心配?」
「凄く」
「凄くか・・・」
話すべきか考えた後、シーリャは夜に何があったか。
そしてリーリンと何を話したのか。
同族を助けたい、だけど助ける事ができない、シーリャの目から涙が流れていた。
「今も聖王国では獣人が虐待され、殺されている。 だけどボクには何も出来ないんだ・・・」
なんとかしてあげたいけど、リーリンさんが無理って言ってる理由は、死んでるから以外にたぶん・・・。
「リーリンさん、他にも助けに行けない理由ってあるんでしょ?」
「やはりわかりましたか」
「攫われて奴隷になってる人が数人だけって事はない、だって奴隷が禁止されているに近い状態なのに、危険を冒してまで売るんだから、かなり利益にならないとやらないでしょ」
シーリャはなるほど、と言う顔をした。
「言われてみたらそうだね」
「数人だけで利益が出るようにしようとすれば、その貴族とかに売る獣人が全員、シーリャみたいに黒色の髪とかしてないと、駄目だと思う」
「じゃあ生きてる子がいる可能性が高いんだね」
「ああ、それでもリーリンさん、助けに行けない本当の理由、教えてもらって良いですか?」
「理由、それは聖王国を刺激しないためです」
まあ、そういうことだよね。
魔王との戦争の切り札である、勇者を召喚できるのが聖王国だけ。
やっぱりそこが問題になるんだよね。
あれ、そういえば
「今奴隷になってる人は助けれないけど、これ以上奴隷にされないようにはできるんじゃないかな」
「そんな方法があるの?」
「まず、獣人を攫う盗賊とかがいて、それが聖王国と繋がりがある、奴隷商人に売る。 で、その奴隷商人が貴族達に売るって流れになると思うんだよ」
自分が言ってる事が間違ってないか気になり、リーリンを見ると、合っていると言う感じに頷いてくれた。
「つまりは獣人を攫ってる盗賊をどうにかすれば良いだけって事だよ」
でもこれってリーリンさんもわかってると思うんだけどな。
「そうなのですがそうした場合、聖王国の貴族が奴隷を買えなくなる事で問題が起きると思います」
「何でそう思ったの?」
「奴隷を買っている貴族の中には、王族に近い者もいるようなので、そういった者が遊び道具である獣人が手に入らなくなった場合、獣王国を攻める口実にしてきたりする可能性があるかと」
あれ、おかしいな。
リーリンさんなら、そんな事を口実にできないって事をわかると思うのに、何で出来るって思ってるのかな?
「俺はそれを口実に出来るとは思わないな」
「聖王国ならば、やりかねないと私は思います」
聖王国ならやりかねないっか。
そういわれると、納得はできるんだけど。
やっぱり、そうはならないよな。
うーん、もしかしてこっちは気がついてるけど、リーリンさんは気がついてないことがあるのかな?
「いちよ俺が出来ないって思ってる理由を聞いて欲しいんだけど、聖王国の人達は獣人嫌いなんでしょ?」
「そうです」
「それなら、自分達が嫌っている者を欲しがっていて、それが手に入らないのは獣王国が邪魔してるからだって言うのは言えないと思うんだよ」
「あ、確かにそうかもしれません」
「それに奴隷を禁止しているのに、奴隷が手に入らないからって戦争を起こそうとすれば、他の国も黙っていないでしょ。 そうなれば、聖王国対それ以外の全ての国ってなる可能性が出てくる」
「言われてみれば、そうです」
ああ、なるほどね。
聖王国とは戦争できない、刺激してはならないって考えすぎて、見落としてるって感じなんだろうな。
「それに盗賊を捕まえてたら、聖王国が文句を言ってくるなんて、それは盗賊をかばってるというのと同じだから、聖王国の名に泥を塗ると同じ事だから大丈夫」
リーリンは獣王国と聖王国の関係などを良く知っている。
そのせいで、視野が狭くなっていたのだろう。
裕也に言われて、それに気がついて、珍しく恥ずかしそうな顔をしていた。
シーリャは何もできないと思っていたところを、同族の為に出来る事のがあるとわかった事で、凄く喜んでいた。




