第44話
ドルウンは片手でショートソードを持つ、攻防バランスの取れた剣術。
対するシーリャは、蹴りを主体にした素手による格闘術。
交錯する、剣と脚。
シーリャは四度蹴りを打ち込み、ドルウンはそれを剣で防ぐ。
攻めればすぐに殺されるの、そう思ったからこそ、師匠からならったこの流派の返し技を主体とした、型で構えている。
この、たった四度でわかるその一撃の速さ、そして重さ。
速すぎる、重すぎる。
こんなものに返し技なんて不可能だ!
それならどうする、可能性のない返し技を撃てるタイミングを待って、このままあの蹴りに削り殺されるか?
いいや、そんな事をすれば、この少女、いや狐族の武の長、戦狐に笑われてしまう。
剣士として死のうとしたのに、笑われて終わり?
そんなもの許せるか!
最初は愚策だと思った、攻めをする。
だがどう攻めればいい・・・。
頭でどう攻めるか考えながら、シーリャの蹴りを防ぎ、距離を詰めてくるところを剣で払う事で距離をとる。
消極的な動きをしているのは相手もわっている。
どうする?どうする?どうする?
何も思い浮かばないと、そう思っていた。
だが自分の今の状況を思い出し、ある事を思い出した。
剣士として、最後の輝き、一瞬の・・・閃光のように・・・。
考える暇を与えないように、シーリャは距離を詰め回し蹴りを放つ。
その蹴りを後ろに飛びながら剣とあいている手でガードする。
吹き飛ばされるように、距離をとると一瞬目を閉じた。
シーリャを相手に、一瞬とはいえ目を閉じるというのは自殺行為だ。
それでもドルウンは目を閉じた。
目を閉じたのを見てシーリャは好機と攻めようとはしなかった。
ただ待った。
この男の全力を見たいが為に。
目を閉じ、自分の魔力の源泉である内側を見る。
そこには属性の色が薄い魔力があった。
攻撃魔術を得意としていない者の色。
ここで、この魔力に色をつけて、攻撃魔術を使えるようにする?
そうではない。
では、何をする?
それは帝国の全剣術に伝わる共通の奥義。
普通魔力による身体強化は、その人の許容量を越えて使う事は出来ない。
だが、この奥義はその許容量を無視するために編み出されたもの。
イメージ・・・。
ビンに入った水が一気に出るイメージ。
ビンとは自分、水とは魔力。
魔力が一瞬にしてドルウンの体を覆う。
これは、そう、閃光。
使いこなしていない者が使えば、一瞬で魔力を命事燃やし尽くす技。
制御する事は考えるな、相打ちで良い。
目を閉じてから2秒。
目を開けると間合の外で、こっちの準備が終わるのを待ってくれているシーリャがいた。
ああ、待ってくれるのか、それならそのお礼はこの一太刀に乗せよう。
地面をおもいっきり蹴り砕きながら、シーリャに向い突進する。
右手に構えた剣を地に這わせながら走る。
間合の一歩外まで近づくと、ドルウンの体が急に沈んだ。
シーリャよりも低い体勢。
「喰らえ!」
地面から跳ね上がる剣。
腕が潰れる事を覚悟して放たれた一撃。
蛇剣三閃。




