第41話
大剣使いは確信していた。
この一撃は回避できないと。
自分達の必勝のパターン。
煙幕には視界を塞ぐ以外にも効果がある。
それは煙幕に魔力をこめる事で、獣人の魔力香の探知を阻害する効果だ。
隠蔽の魔道具は獣人相手だと、完璧だとはいえない。
何故なら魔道具が気配を消すために起動している魔術の魔力を、匂いとして探知されるからだ。
それでも普通の相手なら、接近を気付かれる前に、鞘いれた大剣で気絶させるのは簡単な事だ。
だが、今回の相手は違う、今まで捕まえてきた獣人の中でも、上位の能力を持っているだろう事はさっきまでの動きでわかる。
斬るなら胴体なのだが、流石にそれは出来ない。
元々、こいつを捕まえにきたんだ。
それに黒狐なんていう、大金で取引でる物を殺すだなんて勿体無い。
だから狙うは足。
自分が一気に出せる最大出力の魔力で身体強化をした、全力の一刀。
これを回避できるものなんていない。
その剣速は、目で追う事すらできなと思えるほどの物だった。
そして、それは確実にシーリャの右足をとらえた。
足を切り飛ばして、行動不能にしてこれで終わり。
そう思った。
だが、そうはならなかった。
一方的に足を切り落とせると思っていたのだが、そうはならず、剣と足がぶつかり合いった瞬間、衝撃波が生じた。
その衝撃波は辺りの煙幕を吹き飛ばした。
煙幕が晴れると、そこには少し地面から浮かせた右足だけで、大剣を受け止めているシーリャがいた。
「ばかな!?」
自分と同じ力量があったとしても、今の一撃を足だけで受け止めるなんて事はできるわけがない。
こいつは何者なんだ!?
動揺しながらも、大剣を引くと袈裟懸けに切り下ろす。
だが、その剣速は先ほどの物とは比較にならないほど遅く、迷いのある一撃。
そんな隙をシーリャが見逃すなどと言う事はない。
振り下ろされる大剣を右手だけで掴みとめる。
「さっきのは良かったのに残念だよ」
目も耳も鼻も全てを塞いだ状態の者に、全力の一撃を止められた。
それは心を折られるのには十分だった。
心の折れた人では、もう遊び相手にならないと、心臓を貫手で貫いた。
相手は打撃対策用の防具を装備している。
普通の貫手では、貫くなんて事はできない。
だから手だけ魔力をこめる事で貫通力を上げて、貫いたのだ。
手を胸から引き抜くと、血を吐きながら大剣使いは崩れ落ちた。
「面白そうなの一人おわりっと。 さてさて、逃げられないようにしないとね」
大剣使いが崩れ落ちるのを見た瞬間に、人攫い達は逃げようと反転した。
だが、そこに逃げられないように、石を投げ相手を牽制しながら、シーリャは接近して行った。
4人ほど、逃げるのに必死になって、石を投げられているのに気付かず、頭に直撃して即死した。
狙う相手を間違えた。
人攫いのリーダーはそう思った。
だが逃げることも無理だろう。
それなら、仲間の命を使ってでも、あいつに隙を作らせて殺るしかない。
石を剣で切り落としながら、仲間に指示をだすと、シーリャを迎え撃つ体制に入った。




