第40話
ファイア・アローは、魔術師の力量を見るのには良い魔術だと言われている。
詠唱で炎を1本矢の形にして飛ばすのは、魔術師なら誰でも簡単に出来るだろう。
だが同じ詠唱を使った魔術でも、人によって同時に出せる数が違う。
ファイア・アローならば5本同時に出せればまあまあ、10本を越えれば優秀といったところだ。
いま飛んで来てるのは、ざっと数えると100前後。
18人全員が攻撃魔術を使えるとは思えないので、たぶん10人前後で撃ってきているのだろうと思う。
つまりは優秀な魔術師が何人かは確実にいるだろうという事だ。
勿体無いな。
獣人は攻撃魔術が不得意なのもあり、優秀な魔術師が、人攫いなんてやってるのが勿体無いと思えてしまう。
どこかの国の軍に入れば良いのにとは思うのだが、たぶんそういうことには向いてない人達だったのだろうとも思った。
無駄な考えだね。
そんな事を考えている間にも、ファイア・アローはシーリャに向って飛んで来る。
「さて、やりますか」
魔力を多めに入れたのであろう、他より弾速の速い1本がシーリャの肩を狙って飛んで来る。
構えを取ると、その1本を手の甲で払い炎を霧散させた。
最初の1本を払うと同時に、残りも一気に間合に入ってくる。
全部が当てるために撃ってる物ではなく、動きを制限する目的の物も混じっている。
それをわかったうえで、当てようとしてる物だけ手で払い。
最小限の動作で回避できるものは回避していく。
最初の1本目から約5秒。
ダメージを受ける事無く、残り5本。
その5本はある一定まで近づくと、加速して、その上避けにくいような角度から迫ってきた。
だが、それだけでは何の意味もない。
加速しようが、避けにくいように使用が関係ない。
地面を這うように足を狙ってきた物は、足で払い、後ろから来るものも、尻尾で払い落とす。
これで終わりって事はないよね。
そう思い相手のほうを見ると直系1メートルほどのファイアボールが10個放たれた。
ファイア・アローが効かなかったからファイアボール?
なにかそれは安直な気がする。
それならこれは、何か意図があるはずだ。
この状況から推測して、相手が何をしようとしているのか見破る。
そんな事が出来れば良いっとは思うのだが、シーリャ自身、そういうのは不向きなのはわかっている。
だから、考えるよりも、視角、音、気配、魔力香で相手が何をしようとしているのか、探る。
ファイアボールの魔力が、攻撃的なものじゃない気がする。
・・・・・・大剣使いの気配が消えてる。
前の人達からは、確り気配がする。
気配などからたぶんと答えを出して、それに対応するために意識をそれに向ける。
ファイアボールの1個がシーリャに当たらない位置で、急に空中で爆発する。
爆発と同時に、音と衝撃がシーリャを襲う。
やっぱり。
最初の1発目で耳を塞ごうとしてきた。
残りのファイアボールもシーリャに当たる事無く炸裂していく。
音、爆風そして煙幕となって、シーリャの五感を封じようとしていく。
そろそろ来るかな。
五感を封じだけ、なんて事で終わるはずは無い。
気配ではわからないが、隠蔽の魔道具を使った大剣が死角近づいてきているだろう事はわかっている。
最後の1発の爆発の音に混じり、シーリャに向って、大剣が振られた。




