第38話
獣人専門の人攫いっか。
隠蔽の魔道具、それにさっき胴を蹴った人の感触。
獣人との戦闘でまず対策しないといけないのは打撃攻撃。
基本的に素手である程度以上戦える人が多く、武器を使い戦う人も、武器と武器を持っていない手足を使った連続攻撃を得意としている。
武器の攻撃の間に、軽い蹴りやなど入れるのは獣人以外の人もする。
でもそこには決定的な差がある。
身体強化に特化した獣人の一撃は重い。
まあ、種族によってはそこまで重い一撃を出せない物もいるが、そういうものは逆に速く手数が多い。
どちらにしろある程度対策をしないと面倒になるだろう。
そこから最初に考えられるのは鉄の鎧。
しかし、フルプレートのような鎧になると、重さで獣人のスピードについていけないようになる。
スピードがついていけなくなるだけならまだ良いのだが、一定以上の能力がある獣人になると、鎧の中に衝撃を貫通させる技術を持つ者もいる。
そのため、普通の鎧では意味がないのだ。
そこから考えられたのが、皮系の鎧。
ある程度武器の対策も出来て軽いのが利点で、まあそれだけだと結局打撃の対策をしていないのだが、魔物の中には衝撃を吸収する皮を持つ物がいて、そういう魔物から取れる皮は打撃対策としてはかなり優秀だ。
ここまで考えてわかるように、相手は獣人専門と言うだけあって最上級ではないが打撃対策用の上級の皮鎧を装備しているのであろう。
まあ、こうやって数秒考えて、隙を見せても攻めてこないのは、さっきの二人の回復目的ってのもあるんだろうな。
でも顎を蹴った方は結構良い感じにはいってたのに、もう立ってるって事は、回復魔術を使えるのがこの中にいるんだろうな。
相手の装備、能力をさっきの攻防から分析して、どうやって攻めるか考えていると、相手のリーダーらしき人が話してきた。
「どうした。 降参する気になったか?」
「それは無いね」
「そうか、だがお嬢ちゃんはそこそこの力量はあるみたいだからこっちの戦力は、把握できたんだろ? それなら勝てないってのはわかっていると思うんだがな」
勝てない?いいや、そんな事は無い。
父さんに近いのが混じってるなら勝てないけど、そんな事はないし、大剣持ちとリーダーがリーリンと同等だったとしても勝てる。
それに相手はこっちを商品だと思っているのだから、殺さないようするから、そこに付け入る隙はいくらでもある。
まあ、かなり高いポーションくらいは持っているだろうから、手足は切り落としてもいいとは思ってるだろうけど。
・・・・・・うん、考えても答えは出ないや。
リーリンみたいに、相手を分析して魔力消費量を抑えてなんて考えるのがボクにはあってなかったんだ。
「勝てない? 黒狐のボクにおじさん達が勝てるとでも思っているの?」
「思ってるに決まってるだろ、銀狼を捕らえたこともある俺達がある、お嬢ちゃんくらい捕らえるなんて造作も無いさ」
「そうか、それならもう言葉は不要だね」
そう言うと、シーリャは地を蹴った。
狙うはリーダーと大剣持ち。
瞬時に距離を詰め、敵のリーダーを攻撃間合にいれると、心臓を貫くように手刀を突き出した。
5割の力で最短の動作の突き。
敵のリーダーは突きが胸に近づいてくるのにまだ、防ごうともしない。
大きい事を言っても、まあこんなもんか。
心臓を貫いて、後は周りのも逃げられる前に殺ろうか。
少しの油断、それを読み取ったかのように下から手を狙って剣で切り上げてきた。
ローブの間から剣が見えた瞬間、手を引き斬られるのを防ぐと同時に蹴りを腹に入れながら後ろに飛びのいた。
あのタイミングで間に合う剣速。
ほんとうにこの人はリーリンに近い能力なのかもしれない。
「それならいいよね・・・・・・」
何時もは最大でも5割。
そうでないと、すぐ敵を倒してしまう。
だから、手加減をしてきた。
「8割いくよ」
そう呟くと同時に、シーリャから野生の獣のような殺気が放たれた。




