第2話
神殿みたいな物があって、その中に聖剣の間はあるのだろうと思っていたが少し違っていた。
聖剣の間は城の敷地内に存在していた。
建物の中に入るとそこは鬱蒼と木々が生い茂っていた。
上を見ても空が見えないくらい枝葉で覆われ、太陽の光が差し込まない。
普通ならそんな暗い場所まともに歩くことも出来ないのだが、この場所は道沿いに足元が淡く光っていた。
何が光っているのか気になり、屈んで地面少し掘ってみるとそこには光る細い根が無数に存在した。
木の根にしては細すぎる、何の根だろうとあたりを見渡すと光る花があった。
なるほど、これはあの光る花の根なのか。
元の世界ではありえない光る花を見て綺麗だなと思っていると、リーラがこちらを見ていた。
「ユーヤ様どうされました?」
「あの光る花が珍しくてね」
裕也は手についた土を払い落とすと立ち上がった。
「聖剣を抜いた後でも、また見にくるよ」
「では、その時は私もご一緒させていただきますね」
「ああ、わかった」
先で待っていた王達に追いつくとまた一緒に歩き出した。
そこから10分くらい歩いたころ、道の先に一箇所だけ空から光が差し込む場所があった。
地面には魔方陣が書かれていて、その中心に一本の剣が地面に刺さっていた。
「これが聖剣」
白銀の柄、蒼いクリスタルのように透き通った刃。
勇者が持つに相応しいと思える剣がそこにはあった。
これから俺が使うことになる聖剣。
じっと聖剣を見つめていると王が「これこそがこの世界の至宝、聖剣クラウ・ソラス」と聖剣の名前を教えてくれた。
「クラウ・ソラス・・・」
じっと聖剣を見つめていた裕也は、吸い寄せられるように聖剣の下に歩いていった。
聖剣の前に立つと柄を握ろうとしたが、あまりにも美しい剣を間近に見て思わず息を呑んだ。
裕也は何回か深呼吸をして心を落ち着かせ、聖剣の柄を握った。
これを抜けば俺の薔薇色の人生が始まる。
フーと息を吐くと勢いよく聖剣を引き抜いた・・・・・・・・・。
とはならなかった。
あれ?抜けない。
力が足りなかったのか。
そう思い両手を使い、全力で引き抜こうとしたが結果は同じだった。
あれ、なんでここまでやって抜けないんだ。
焦った裕也は何度も引き抜こうとするが、聖剣は微動だにしない。
「なんでだ・・・・・・なんで抜けないんだ!」
聖剣が抜けないことに苛立ち声を荒げる裕也。
その姿を見ていた王は、横に立つ護衛の魔術師と何かを話し出した。
何度も・・・何度も引き抜こうと試みる裕也。
そうしているうちに話し終わった王が、護衛の騎士と裕也に近づいてきた。
そのことに気がつかず、もう一度聖剣を引き抜こうと手に力を入れた時、騎士が裕也の手首を掴み捻り上げると同時に足を払い地面に叩き伏せた。
裕也は衝撃で肺から空気がしぼり出され、グェッと蛙が踏み潰された様な声をあげた。
「何をするんだ!」
裕也は自分を地面に叩き伏せた騎士を睨む。
「私の代で勇者召喚を失敗するとは腹立たしい」
王は倒れる裕也を見て言った。
「は?何言ってんだ! お前らが勝手に召喚したんだろ、聖剣が抜けないのもお前達が何か失敗したんだろ」
「いいや、こちらは何一つ失敗していない。お前の存在自体が失敗だ」
「なんだと!」
王を殴るため立ち上がろうとした裕也を、騎士は腕の関節をきめ、立ち上がれないように足で押さえつけながら、ロープで手足を縛った。
「聖剣が抜けない者は勇者ではない、お前は用済みだゴミクズ。 ルスターン、この者を追放する。 捨てて来い」
裕也を押さえていた騎士は王の命を受け、裕也を担ぎ上げ聖剣の間を出ようとし歩き出した。
「くそ!失敗だと言うなら元の世界に帰せよ」
ジタバタと暴れ叫ぶが、騎士は何事も無いように歩いていく。
魔方陣の外で待っていたリーラの隣を通り過ぎようとした時、一縷の希望を込め叫んだ。
「リーラ、助けてくれ」
優しくしてくれたリーラなら、助けてくれるそう思った。
しかし、裕也が期待していた言葉は返ってこなかった。
「勇者様だと思ったから手を握るまでしてサービスしたのに、本当はゴミだったなんて不快ですわ。ルスターン、声も聞きたくないのですぐに黙らせなさい!」
「御意に」
ルスターンと呼ばれる騎士は裕也を宙に投げると、拳で鳩尾を貫きそのまま地面に叩き付けた。
裕也の体からメキメキと軋む音がした。
声も上げることもできず、胃液を吐き気絶した。




