第21話
池まではまだ距離があるが、一旦馬車を止めて降りると、裕也はじっと池のある方向を見た。
「うーん・・・、まったく見えない」
見えなくても当たり前と言えるくらいの距離がある。
だけど、横に立つシーリャの目には、確りと池が見えているようだ。
「これだけ距離があれば、しかたないよ。 ボクとリーリン以外の子はこの距離じゃ、見えないからね」
「そっか・・・。 こういう時、双眼鏡でもあれば便利なんだけどな」
って言っても、この世界にはないかもな。
そう思ったのだが、意外に双眼鏡は存在するらしい。
「双眼鏡なら売ってる場所があるよ」
「マジで!? それなら何で持ってないの?」
「南の方に行かないと売ってないし、値段が高いんだ。 まあ、こっち側で売ってたとしても、元から値段が高いのが、さらに高くなってるし」
「あー、値段か・・・。 でも便利だし、国として数個くらい持っていてもいいと思うんだけどな」
それを聞いたシーリャは、少し考えるような仕草をしたが、
「そうなんだろうけど、遠距離を見たりするのも、獣人は得意な人が多いから、あまり意味ないかなって、買ってないんだよね」
こういう話を聞くと、獣人って元は本当に獣だったのかなっと思わされる。
でも、そうだとしたら、何で人型に進化したんだろ、そういう疑問が残ってします。
まあ、今はどうでもいい事か。
「それで池のほうはどんな感じ」
「えっとね、バッファロー系の魔物が20匹くらいと、ウインドバードが数羽って所だね」
「水を取りに行くのには問題なさそう?」
「うん、大丈夫。 ついでにあのバッファローも狩って食料のたしにしよ」
食料のたしか、それなら前食べて美味しかったウインドバードも欲しいな。
「ウインドバードは狩らないの?」
「ん? 裕也、もしかしてウインドバード気に入ったの?」
街でウインドバードのケバブを美味しそうに食べていたのを覚えていたみたいで、そう返されてしまって、ちょっと恥ずかしくなった。
ぽりぽりと頬をかき。
「まあ、・・・な」
それを聞くと、シーリャはふふっと笑ったと思ったらすぐに、真面目な顔になっていた。
「いいよって言いたいんだけど、今回は無理かな」
「そんなに狩るのが難しいのか?」
「そうじゃないんだけど・・・」
狩れない理由、それは簡単な話だった。
ウインドバードを狩るには、シーリャがやるのが一番いい。
だけどこの荒野で、裕也と離れると、もしもの時対処ができない。
だから、シーリャは裕也から離れられない。
それなら、一緒に池の近くまで行って、ウインドバードを狩ればいいのだが、まだどの種族か断定できていない、バッファロー系の魔物いるため危ない。
結局、全ては裕也の安全のために狩りに行けない、そういうことだ。
「ごめんね」
「シーリャがあやまる事じゃないよ。 それより俺は水を汲みに行ってる間どうしたらいい?」
「ボク、メルー、レムの3人が残って裕也の護衛。 残りの4人で、水を汲みにいくって感じだから、この辺りでちょっと休憩って感じかな」
「それなら、ちょっとシーリャと二人でこの辺り散歩するって言うのも良さそうかな」
一日の半分近くを馬車に座って過ごす。
そのため、たまに散歩とかがしたくなる。
だけど、この荒野に入ってからは、散歩をしてるような時間もなかった。
でも今回、バッファローを狩って、水を汲んでくるのはそこそこ時間が掛かるだろう。
「だめかな?」
「えっと・・・危ないから、手を繋いでくれるならいいよ」
「わかった」
シーリャの手を取ると、何もない殺風景な荒野を二人で散歩する事にした。
裕也は、久しぶりの軽い運動だと思い、シーリャは、二人っきりで散歩をする事で、裕也が何かをしてくれる事を少し期待して。
二人は辺りを歩いた。




