第20話
荒野の旅は一日、二日と順調に進んでいった。
魔物にも遭遇しないし、誰かが病気になる事もなく、毎日三食美味しいご飯が出てくる。
だからと言うのも問題だが、失念していた。
旅を始めて三日目の朝。
「今日はちょっと、騒がしくなるかも」
朝御飯を食べ終わった後、急にシーリャがそう言って来た。
「騒がしくなるって、何があるんだ?」
「まあ、わかるとは思うだけど、水を取りに行こうと思うんだよ」
「水?」
「うん、水。 元々馬車に乗せれるが五日分限界だから、途中で補充しないと駄目なんだよ」
言われて、あ・・・と思った。
水が補充もなく、無尽蔵に使える。
魔術のある世界だから、そう勘違いしていたのだ。
「でも、水を取りに行くだけなのに、騒がしくなる事なんてないだろ?」
「そんな事ないよ、だってこんな荒野だから水がある場所って限られているから、いろんなのがその、池や湖に集まってくるんだよ」
いろんなの、つまりは魔物達も集まってくるという事だろう。
池や湖は地図ものっていて、探す必要はないみたいなのだが、地図には危険度が色で記されている。
しかし、それは目安でしかなく、たまにその場所に来るはずのない魔物がいたりするので、タイミングが悪いと水を補充できないという事もあるみたいだ。
なるほどなと思っていると、ある事に気付き少し、自分が不甲斐ないなっと思ってしまった。
ある事と言うのは、そう、魔術だ。
魔術が使えるようになっていれば、そんな危険がある場所に行かなくても、いつでも水が作り出せる。
そう思うと、練習を始めてそろそろ一週間になるのに、何の成果も出せない自分が嫌になりそうだった。
「裕也、もしかして、魔術の事気にしてる?」
内心で、そんな事を思っているのが、表情に出ていたようだ。
ここで、気にしてないというのは簡単だけど、こういう時って、真面目に話したほうがいいかな。
「まあ、気にしてないって言ったら嘘になるよね」
「う~ん、気にしなくても良いよって言っても、気にしちゃうよね」
「うん・・・」
「みんなと話して、いちよ国につけば、何個かどうにかする方法を試せるから」
「ほんとに!?」
何の成果もなかった中、可能性があるといわれたせいで、両手でシーリャの肩を掴んで、詰め寄ってしまった。
「そんなに顔を近づけると、キスしちゃうよ」
そういわれ、自分が何をしてるのか気がつき、すぐに離れた。
「ごめん」
魔術が使えるようになる可能性ある、それだけでこれだけ取り乱すとは、ほんと駄目だな。
「気にしないで」
「それで、方法ってどんなの?」
「まって、その前に池に向って、移動開始しよ」
「わかった、続きは馬車の中で」
「りょーかい」
そう言うと、二人で話し込んでいる間に、移動の準備が終わっていた馬車に乗り込んだ。
馬車が移動を開始してすぐに、その方法について聞いた。
「方法は二つ。 一、母さんに相談する。 二、この本の著者に会いに行く」
「母さんって、魔術師なのか?」
「うん、まあ、そんな感じ。 母さんは狐族の巫女で、人が使う魔術とは少し違うかもだけど、得意だから解決策は何か見つけてくれるかも」
巫女っか。
「巫女って事は、神様に仕えてる人って感じなのかな?」
「それもあるけど、獣人族で巫女って言われる人は、魔術に長けているってのが条件になるんだよ」
「なるほどね、それで二の著者に会いに行くって?」
「この本なんだけど、ボクの知り合いが書いてたんだよ」
「え? マジで!? あ、でも俺がそれ見たときには最後のページとかに名前っぽいのなかったけど」
「えっとこれ」
シーリャは取り出した魔術書の最後のページを開くと、そこに書いている記号みたいな印を指差した。
「これが知り合いのサインと似てるんだよ、だからたぶんその人かなって」
「それ、サインだったのか」
「名前出したがらない人だから」
名前を出したがらない、有名な人なのかな?
聞きたいけど、シーリャが名前を言おうとしてないって事は、今はまだ聞かないほうがいいんだろう。
「じゃあ、獣王国についたら両方試す方向で頼むよ」
「うん任せて」
話が一段落したと思ったら、馬車がスピードを緩めた。
「そろそろ池に着くみたいだね。 もし何かあっても慌てないでね、絶対ボクが守るから」
「ああ、信頼してるよ」
池で何かに遭遇するかもしれない、だけど今までの事もあり、俺はシーリャ達の事を信頼してる。
馬車の近くまで魔物が着たら慌てるかもしれないけど、まあそうはならないだろう。




