第19話
元の世界ではフリーターだった為、スーツで食事をする機会もなく、そんな機会がこんな場所で来るとも夢にも思わなかった。
まあだからと言って、緊張してご飯が喉を通らない、なんて事もないのだが、リーリンさんが表情は何時も通りだけど、上機嫌なのがわかるくらい尻尾が動いているのが、少し微笑ましかった。
晩御飯を食べ終わって、明日出発ということもあり、早めに風呂に入って10時前くらいまで瞑想も続きをした後、すぐに寝ることにした。
翌朝、朝御飯を食べると、準備が終わった馬車に乗り込み、中立商業都市に向う、長い旅が始まった。
移動を開始して、半日。
結局馬車にはシーリャとリーリンさんがいるので、ずっと瞑想をしているわけにもいかず、朝と昼1時間ずつ、夜は寝る前に2時間瞑想する事にして、それが終わるとシーリャ達と話すようにした。
一番最初に話したのは、半日たっても馬車から見える風景は平原のままで、本当にこの先が荒野になっているのだろうかっと言うものだった。
2週間近くは何もない荒野を進む事になると聞いていたので、ある程度覚悟していたのに前と変わらない風景だったので、ちょっと残念だと言うと、シーリャは少し笑った。
「今日はまだ、この景色のままだよ」
海外にでも行かないと、見る事のできない風景が見れる。
それを期待していた。
それなのにお預けを食らった感じで、少し残念だった。
夕方、日が落ちきる前に野営の準備を開始した。
準備の間、狼の獣人である、シャールとウメが狩りに出たのだが、丁度良い獲物がいなかった為、街で買った干し肉を使って晩御飯を作る事になった。
シャール達が取ってきた、山菜と干し肉を炒めた、野菜炒めみたいなものになったが、意外に美味しかったので良かった。
食べ終わった後、瞑想をして、寝るためにテントに入りると、そこにはシーリャとリーリンが居た。
ウィンティまでは、リーリンだけが護衛として、テントの外で寝ていたのだが、ここから先は今までより警戒を強めないと駄目だという事で、二人も同じテントの中にいた方が安全だという事で、これからは毎日一緒に寝ることになった
翌朝、目が覚めると、シーリャが腕に絡みつくように寝ていて、腕に押し付けられる胸の感触が、すごくこれはまずいと思わされたが、安全性を考えると一緒に寝るのをやめようとも言えず、結局少し注意するだけに終わった。
朝からビックリするような事があったが、日課にすると決めている瞑想だけは馬車の中で1時間確りした。
まあ、結局今回も何の成果も出なかったのだが・・・。
そんな事をしている間に、徐々に風景が変わっていき、あたりは荒野といえる風景になっていた。
ちょっと憧れていた、荒野を見る事ができ、窓から外を見ていたのだが、ふと周りの護衛の子達を見ると、少し緊張しているような感じだった。
みんな、なんで緊張しているんだ?
「みんな、なんか緊張してない?」
「荒野に入ったからだよ」
答えるシーリャは何時もと同じ感じだし、横に座るリーリンさんも同じく何時もと同じだと思えた。
二人は緊張していないのになんで?
「裕也、なんでって思ったでしょ」
「あれ、顔に出てた?」
「まあね。 それで知りたいのは、ボク達は緊張してないのに、周りの子は緊張してる理由でしょ?」
「そう、それが気になったんだよ」
「理由は簡単、この荒野で出る、最高レベルの魔物はあの子達全員で戦って1体倒せるくらいだろうから、それで警戒を強めてるせいで、緊張してるように見えるんだよ」
「あー、なっとく。 そりゃ自分一人じゃ勝てない相手が出てくる場所だと、緊張はするよね、って事はシーリャとリーリンさんは一人で対処できるってこと?」
「ボクは大丈夫かな」
「私も全力を出せば対処できると思われます」
サイクロプスを軽々倒した、リーリンさんが全力を出さないといけない相手・・・。
「リーリンさんでそれって・・・、いったいどんな化け物なんだ・・・」
「この荒野の最高レベルの魔物は、地龍、グランド・ドラゴンと呼ばれるドラゴンです」
「へー、ドラゴンか・・・・・・、ドラゴン!?」
「そうだよー。 遭遇確立は低いけどね」
「それでも、ドラゴンなんだろ? そりゃみんなが緊張するわけだよ」
「グランド・ドラゴンって言っても、若い個体だとブレスの吐ける大きな蜥蜴って感じでしかないし」
若い個体とはいえ、ドラゴンを大きな蜥蜴って。
この中でシーリャが一番強いとはわかっているけど、何処まで強いんだ。
「大きな蜥蜴でしかなかろうと、俺は遭遇したくない」
「もし遭遇したら、ボクがなんとかするから、裕也は安心して馬車の中でくつろいでいて」
「もしそうなったら、そうするよ」
どこかでドラゴンと遭遇する可能性があるこの荒野を、後12日間くらい移動する事になるのか。
護衛の5人を心配したが、自分には何もできない事はわかっているので、ただドラゴンと遭遇しない事を祈る事しかできなかった。




