第16話
食堂について、さて何を食べようかと何時もなら迷うところなのだが、今日は魔術書の続きも気になるので、メニューを見て選ぶのも面倒っというかメニューを見ても読めないので、適当にシェフのオススメを頼んでみた。
まあ、この街一番と言える宿であるし、不味いハズレが出て来ることはないだろうと思っていた。
だが、ある意味ハズレが出てきた。
出てきたのは鳥肉のソテー。
昼に鳥肉食べたところなので、まずったなっと少し思った。
ウェイトレスが言うには、今日はウインドバードの肉が手に入ったので、このメニューになったらしい。
しかし、この宿で出すような鳥肉を、露店のケバブ屋が使っているのが凄いのだろうと思ったし、シーリャ達も不満そうな顔をしていなかったので、まあ良いかと諦めた。
食事を終え、シーリャ達が食後の紅茶を飲んでいるところ、先に部屋に戻る事を告げ、魔術の練習をするために部屋に戻った。
さっき読んでもらった部分で、魔術の初歩は全てわかった。
後は実践するだけだ。
まずは自分の中の魔力を感じ取るところから始める。
魔力を感じるための方法として何種類か書かれていたのだが、自分としてはこれが一番最適だろうと、床に胡坐をかいて座り、目を閉じる。
力まずゆったりした気分になる事、それが重要らしい。
つまりは瞑想と同じ理屈なのだろう。
自分の中に目を向けるイメージ。
魔力量は普通の人より多いらしい、それなら簡単に魔力を感じ取る事は出きるはずだ。
・・・・・・・・・、あれ?
目を閉じて数十分たった。
でも何も感じられなかった。
何十分もたったと錯覚してるだけで、本当は数分し語ってないのでは、と思い目を開けて時計を確認するが、やはり瞑想を開始してから30分近くたっていた。
魔術書には、魔力を感じる事はさほど苦労はしないと書かれていた。
人によって表現の仕方は少し違うらしいが、熱かったり、冷たかったり、何かしらの感覚を自分の内部に感じるらしい。
しかし、何も感じられなかった。
胡坐をかいて座るのが、自分にはあっていないのかと思い、今度はベットに横になって目を閉じた。
数十分、目を閉じて自分の中を探ったが、やはり何も感じられなかった。
目を開けて時間を確認しようとすると、シーリャとリーリンが部屋の椅子に座っていたので、ビックリした。
「二人とも、いつ戻ってきたんだ?」
「ついさっきだよ。たぶん魔術の練習しているだろうと思ったから、邪魔にならないように、気配と音を殺して入ってきたんだよ」
直接戦闘もかなり強いはずなのに、そんな芸当もできるのか。
元の世界でなら、自分と他人の差を比べて、そこで諦めてします事が多かった。
自分と二人や護衛の子達との力の差。
そんなのは、わかっている。
諦めるな、ここで諦めたら選択肢がなくなる。
「練習をしてたんだけど、上手くいかなくて」
「どこで上手くいかなかったの?」
「一番最初の自分の魔力を感じるところ」
「うーん、なんでだろ? 魔力が大きいと感じやすいって書いてたから、裕也くらいの魔力があれば簡単だと思ったんだけどな」
シーリャが言うように、魔術書にはそう書かれていた。
魔術書が間違っているのかと思いたかったが、自分自身でも内容は確りした物だと思えたし、二人も内容がおかしいという事はないと言った。
それなら自分に問題があるのか?
わからない、それなら今日はいったん練習は諦めるか。
「何処が悪いかわからないから、もう一度最初の部分読んでくれる?」
「いいよ、そのかわりご褒美欲しいって言って良いかな?」
「ご褒美か、内容によるけど」
「ボクと一緒のベットで寝る」
流石に部屋に3人なら、最初の時みたいにネグリジェでせまって来る事もないだろう。
「あー・・・、リーリンさんもいるし、一緒に寝るだけなら良いよ」
「やった」
シーリャと一緒に寝る事はあとで考えよう。
とにかくは、もう一度読んでもらうって、何か糸口を見つけないと。
元の世界では、いろんな事を諦めていた。
だが、今回は諦めるわけにはいかない。
選択肢がシーリャとの結婚だけじゃないようにするためにと。
そう考えているが、シーリャの事が嫌いというわけじゃない。
ただ、それしか選べないというのが嫌なだけだ。
それに、それしかないから結婚するだと、シーリャに失礼だとも思う。
まだ練習を始めて2時間くらいだ。
ゆっくり、確実に覚えていこう。
シーリャに寝る時間になるまで、魔術書を読んでもらった。
布団の中で魔術書に書いていた事を、考えよう。
「じゃあ、そろそろねよっか」
そういえば、そういう約束をしたよな。
シーリャを見ると普通のパジャマを着て、ベットで待っていた。
前みたいなネグリジェを着ていたら、断ろうと思ったがそうでもないので、一緒に寝ることにした。
一緒のベットに入り横になると、嬉しそうなシーリャの顔があった。
「おやすみシーリャ」
「うん、おやすみ」
そう言うと、シーリャは手を握ってきた。
このくらいは良いだろう。
目を閉じると、今日は考えるのはやめよう、そう思いゆっくりと眠った。