第10話
あれから4日、魔物などと遭遇することもなく、次の街に向かっていた。
足のほうもまだ歩けないが、薬草のおかげか青く腫れもかなりましになっている。
この4日、村を出る前に思ったように、知ろうとした。
最初にシーリャの事をもっと知る前に、リーリン以外の護衛の事を知ろうとした。
護衛として聖王国まで来たのは、リーリン以外に5人。
村を出た初日に、シーリャに護衛の人の紹介をして欲しいと頼んでみたら、少し嫌そうな顔をした。
数日だがシーリャと一緒にいて、こういう頼みくらいならすぐいいよーっと、言ってくれると思っていたのだで意外だった。
これはシーリャの何時もと違う一面を知るいい機会だと思い、何故だめなのか聞いてみた。
シーリャはモジモジとしながら、尻尾を弄り答えた。
「みんな僕より年上で、もしかしたら裕也の好みかもしれないし」
ああ、なるほど。
取られる可能性を危惧して、紹介したくなかったのか。
ここでそんな事ないと言うのは簡単だ。
でも正直に言おう。
「絶対にその子達に靡かないとは言えない、だけど俺は自分を護衛してくれている人の事を知りたいんだ」
裕也は正直にそう答える。
「そこは僕の事が好きだから大丈夫、とか言って欲しかったな。でも上辺だけの大丈夫よりも、正直に言ってくれた事は嬉しいかな」
シーリャは尻尾を触りながら、少し笑った。
「好きとか、嫌いとか置いといて、今は純粋に護衛の人達の事が知りたいんだ」
「わかった。じゃあ、晩御飯の時に紹介するよ」
そして、村を出発したその日の夜、護衛の人を紹介された。
護衛の人をはじめて近くで見て、シーリャの危惧していることがわかった。
みんなが、裕也が思っていた以上に可愛く、本当にこの人達が護衛の人なのか?と思った。
そう思っていると、自己紹介をしてくれた。
最初は御者を担当する、メルーいう子だ。
彼女は狸の獣人で、お金の管理などをしている。
裕也が本当にこんな可愛くて華奢な子が、護衛なのかと疑問に思ったのを察したみたいで、マントの中に隠していたハンマーを取り出し、振って見せてくれた。
ハンマーを振る速度は一般人の裕也には、視認する事ができない速さで武器が振られる。
メルーだけが特別強いのかと聞いてみたが、そんな事はないらしい。
この世界はRPGとかのキャラと同じで、見た目ではその人の強さはわからないんだなっと再確認させられた。
次に長いたれ耳の子、ウサギの獣人のレムを紹介された。
イメージ的には、ペットショップで見たことがあるホーランドロップのような耳の女性で、シーリャへの忠誠心が強いみたいでウサギなのに忠犬という感じの人だった。
3人目はリーリンさんと同じ猫の獣人のタリスと言う子で、話しているとリーリンが凄いという言葉が多く、同じ猫族で近衛騎士団長をしているリーリンの事を、尊敬しているのが良くわかった。
4人目と5人目は二人とも同じ狼の獣人で、シャールとウメ。
シャールは少しぶっきらぼうな子で、ウメはその反対でおっとりとした子だった。
紹介された時ウメだけは、日本にもある梅という名前だったのでその辺りの事を聞いてみると、獣人は日本由来の名前の人は結構いるらしい。
シーリャの母も、日本っぽい名前をしているそうだ。
護衛の紹介をしてもらい、できればみんなの事をもっと知りたいと伝えた。
今までは、シーリャとリーリン以外は離れた場所でご飯を食べ、俺とできるだけ接しないようにしていたみたいで、それをやめて一緒にご飯を食べて、話そうと言った。
守られているのに、守ってくれている人の事を知らないというのはいやだと言うと、シーリャも同意してくれた。
その日から、テントも近くに配置して、みんなと話すようになった。
次の日は地図に載っている、池がある場所まで行った。
シーリャは一緒に水浴びしようと言ってきたが、丁重に断って一人で水浴びした。
久しぶりに体を洗うことができ、喜んでいると、俺が水浴びをしている事を知らされていなかったシャールに、裸を見られるというハプニングがあった。
叫んで殴られるかと思ったが、シャールは裸を見てごめんと言ってさって行った。
ぶっきらぼうな子だけど、悪子じゃないんだなっと思えた。
そういえば、魔力香で俺がいるのがわかるだろうから、もしかして意図的に除いた?
そう思いシーリャとリーリンに聞いてみると、魔力香の範囲が広く、ある程度以上の探知能力がないと、その一帯の何処かにいるとしかわからないそうだ。
そんな事もありながら、少しずつみんなの事も知っていった。
そして、5日目の昼ご飯を食べて移動を開始して1時間ほど経った頃、シーリャとリーリンの様子が少し変わった。
二人とも耳を動かし何かを探るようにしている。
「何かあった?」
「魔物や亜人の動きが活発化しているという話は、本当だったようです。 今日までも近くに魔物達の気配は感じる時はありましたが、少し道を帰るだけでどうにかなっていましたが、今回はまずいですね」
そうリーリンが言うと、シーリャはメルーに指示を出し、馬車をとめた。
「あと5分ほどで、魔物達が来よ。回避しようにもたぶん4~50匹くらいいるみたいで、回避しようが無いんだ」
「な・・・、そんならはやく逃げよう」
大量の魔物が来る事を知り、裕也は逃げようと言った。
だが、シーリャは首を横に振った。
「反対方向に逃げるとしても、相手がこっちに直進してくる事しかわからないし、馬車に乗っている状態で戦闘になると、裕也を守りにくくなるんだ」
「じゃあ、どうする?」
「ここで迎え撃つ、大丈夫みんな強いからどうにかなるよ。それにもしもの事も考えて、僕は裕也の隣にいて確り守るから」
本当にシーリャ達が4~50匹の魔物を倒せるかわからない、だけど信じよう。
俺の命は一度シーリャに助けられたんだ、今回も守ってくれるはずだ。
「わかった。俺どうすればいい?」
「裕也は僕と一緒に馬車の中にいて、戦いを見物するだけでいいよ」
見物って、そう思ったが自信満々のシーリャの顔を見ると、大丈夫なんだろうと思えた。
「リーリン何時もくらいのラインで、敵に突破されないように戦ういいね?」
「はい」
「突破された子は後でお仕置きね」
「皆にはそう伝えます」
そういうと、全員を集め話した後、馬車から一定まで離れるとリーリン達は横に一列に並んだ。
あそこで食い止めるのか。
各々が武器を取り出し構えると、リーリン達のほうから地鳴りが聞こえてきた。
「さあ裕也、戦闘の始まりだよ」
シーリャがそういうと魔物達が走る時におこる土煙が見えてきた。