第十七話
※グロ注意
リンの異能は瞬間移動と類似点の多い「空間移動」。
東京に移動しようとして香織の使ったものと同じである。
いつもどこかで迷子になったり、落ちそうになっても頼ってきたこの能力。
リンは「あの時」も空間移動に助けられると思っていた。
しかしそれは――
間違いだった。
集団Ω侵略まであと1:00
―――――――――――
兄「いやいやいやいや あんな塩振りかけたら終わる奴のどこが良いんだ?」
姉「ちょっ……! 言い過ぎじゃない! ナメクジは世界最強よ……!」
リ「……(世界最強……?)」
いまだ別の意味のバトルが、……ナメクジバトル(?)は続く中それは起きた。
建物の爆発する音、そして、
「うわぁぁぁぁ 助けて!」
「足がもつれて……っ!畜生!くっくるなくるな!………ぎゃああああああああ!」
「えっ?―――」
何が起こったか分からないリン達の前に、逃げ惑う人々の悲鳴や断末魔が聞こえる。
唖然としながらもすぐに逃げようとした一同の数メートル先に、
突然黒い幾何学的な模様のついたマントに身を包んだ金髪男が降り立った。
そしてやや高い感じの声でこう言った。
「集団Ωの侵略の開始時間に居合わせるとはお前等も幸運だね~! おーい星屑! お客さんだから手厚く―― じっくりと葬ってね!! じゃあ頑張って~~♪」
リン達の地獄はそこから始まった。
集団Ωと名乗る金髪男達から異能を使って逃げるリン達と生存者。 金髪男が星屑と呼んでいたもの達は忍者のような格好であり、素早い動きで追いかけてくる。
「異能発動、空間移動!……あれ?空間移動空間移動!…使えないっ……!」
せめて一家だけでも逃げれれば…… と思ったリンだったが、無慈悲にも空間移動系の異能者対策の結界がそれを阻む。
そしてさらには……
兄「火炎放射……!」
姉「幸運の水!……」
兄姉「合体異能!二個が必ずしも一対になる訳じゃない(エブリカプル イズントア ペアー)!」
それは普段なら余り仲の良くない兄と姉の見せる、まさに二人を形象したような異能である。
またこの異能なら、星屑とかいう忍者を倒せる!!
そう思った私を今更ながら恨む。
星屑「星屑の世界へ(ダストインピーポー)……」
兄姉「えっ……」
兄と姉が協力して作った合体異能は星屑に当たったが、全くの無傷。 そして星屑は軽い動きをしながら聞いたことのないような異能を発動させ、信じられないことに空間に亀裂を発生させた。
それによって出された手裏剣のような形をした亀裂はどこまでも続く星空のような色をしていた。
そしてそれはあろうことか兄と姉にあたりそして……
兄「う、嘘だ…… こんな現実嘘……」
姉「消えたくない! ……消えたくない……」
兄姉「せめてリンは………生き残ってくれ(って)……」
リ「うっ……うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」
半狂乱になった私の前で兄と姉は消えた。 父と母も、他の生存者も消える中、リンはとにかく逃げ回った。
結界のような存在があるのではと逃げながら判断したリンは結界の中――東京の中で移動しまくって今に至る訳である。
彼女の近くに仲間はいない。 それは彼女の小さな心を十分なまでにボロボロにしていた。
路地裏にいつ消えてしまうかと怯えながら、何も飲み食いせずにずっと座って約11日……… 彼女はやっと仲間《五人組》を見つける。