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僕と天使の恋愛事情  作者: ノヴァ
ただならぬ日常の夜明け
3/41

デートと修行と、時々女体化《その1》

 ちゃらっちゃー、ちゃーちゃー。

 ちゃらっちゃー、ちゃーちゃー。

「ふぁ……?」

 枕元の携帯アラームが奏でる豪華かつ軽快な音楽で眼が覚めた。この曲は日本語版だと歌っているのが七色の声の声優なのでかなり好きだ。

 窓から入り込む陽射しはまだ少し冷たく、時刻が早朝であることを暗に示している。

 すー……。すー……。

 その時、耳元に寝息が飛び込んできた。

 振り向くと、そこには笑顔で眠るリエルが。規則正しい寝息を立てるその姿は、まさに天使その物だった。実際天使だが。

 と、柔らかに閉じられたその瞳がゆっくりと開かれる。

「あ……咲良さん……。おはようございます」

「おはよ、リエル」

 朧気に咲良を見つめるその瞳はとても可愛らしく、今なら何を言われても許せてしまいそうだ。

「ほら、起きろ。今日は買い物にいかないといけないんだから」

「えっ、いやその……。まだ早いですよ、家族3人なんて……」

「なに考えてんだお前は」

 勝手に恥ずかしげな妄想を始めるリエルをバッサリと切り捨てる。どうでもいいが家族3人だと咲良の母親がカウントされていないのは突っ込んでいいのだろうか。

「お前の下着だよ。下はいいとして上は今着てるそれしか無いんだろ?」

「咲良さん。デリカシーの無い発言は控えてくださいよ。セクハラで訴えますよ」

「なら昨日の不法侵入とシチュー物色を訴えるぞ」

「ぐぬぬ……」

 自分の愚行の的を射られて言い返せず、パジャマの裾を噛み締めるリエル。何故かその悔しげな表情も堪らなく好きだった。

「そうだ、今から先週録画したアニメ見に行くけど来るか?」

「ほら、早く行きましょうよ咲良さん」

 気付くと目の前にいたはずのリエルは部屋の外からドア越しにこちらを手招きしていた。

 なんという超反応。どうやら彼女はアニメに対してただならぬ情熱を持っていたりするのかもしれない。

 眼が冴えてしまったので眠るわけにもいかず、咲良もベッドから出てリビングに向かう。

 テレビの電源を入れ、DVDプレーヤーを再生すると、早速オープニングが流れ始めた。

 確かこのバトルアニメは昔放送されていた原作アニメのリメイク作品で、当時のキャラクターも出てくるというファンに嬉しい内容だったはず。

 やたらテンションの高いオープニングが終わると、CMを挟んで本編が始まった。

「おおっ、見てくださいよ咲良さん! 主人公の必殺技が敵キャラに炸裂しましたよって何で倒れないんですかこの敵キャラ!?」

「お前もうちょっと静かに見れないのか?」

「おおっと、私としたことが。ついつい熱くなってしまいました」

 てへぺろ、と言いたげなジェスチャーで弁解したリエルは再びテレビに向き直り、今度は静かに観賞し始めた。

 そしてあっという間に30分が過ぎ、別のアニメが始まった。

 こちらは人気のカードゲームを主題としたアニメで、やたら声優が豪華なので有名だ。

 ちなみにリエルには言ってないが咲良もこのカードゲームをやっている。

「おおぉぉ……っ!? な、なんというクオリティ……。人間界のアニメ……末恐ろしい……っ!!」

「そういや、天界でもアニメってやってるのか?」

「もちろんやってますよ。どう足掻いてもそれなりに人間界とはタイムラグがありますけどね。だからこうして本場のアニメを見られるのは天使にとってこの上ない喜びなんです!」

「なるほど……」

 古今東西、若者のアニメ好きは変わらないらしい。

 テレビに向き直ると、主人公が無駄に派手なパフォーマンスで切り札を召喚していた。何故全ての最上級レアリティのカードをアニメ内で出さないのかが不服だ。自分のデッキの切り札が活躍しないのは残念でならない。

 そうして見ている内にエンディングが終わり、次のアニメが始まった。今度はヒーロー物だ。次に始まるアニメまでを一度で録画しようとすると、このアニメが入ってしまうので咲良的には嫌だった。

「じゃあそろそろ朝飯の準備するか」

「えっ、咲良さんは見ないんですか?」

「ああ、僕ヒーロー物は興味なくて。昔は見てたけど」

「まぁ、人間そんなもんですよ。じゃあ私はこのまま見ときますね」

「了解」

 ソファーから立ち上がりダイニングへ向かうと、エプロンを纏って調理を始める。

 メインは昨日の残りの炒飯。それに汁物を付ければいいだろう。取り合えず冷蔵庫から取り出した炒飯をレンジに入れ暖め開始。

 その間に小さめの鍋にお湯を沸かし、粉末スープを投入。少ない具材を一口サイズに切った野菜でカバーする。

 ちゃらちゃ、ちゃらちゃ、ちゃらちゃらちゃ。

 独特のリズムの音楽でレンジが暖め終了を告げると、中の炒飯を取り出し皿に注ぎ分ける。

 数分もするとスープの野菜もいい感じに柔らかくなり、料理は出揃った。

「おーい、料理出来たぞー」

「おお、ようやく出来ましたか!」

 リビングに向かって声を掛けると、数秒と経たずしてリエルはダイニングテーブルに座り込んでいた。そんなに飯が食いたかったのかこいつは。

『いただきまーす』

 咲良も椅子に座り、リエルと共に合掌。仄かに湯気が立ち上る朝食をついばみ始めた。


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