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僕と天使の恋愛事情  作者: ノヴァ
ただならぬ日常の夜明け
2/41

その口付けの名は“契約”

 充分に暖まったのを確認しシチュー鍋の火を止めると、二人分を皿に注いでテーブルに置く。その傍らの皿に盛られているのは炒飯。

 今回は細かく切って焼いたマグロを牛肉の代用に投入した新しいフレーズだが、はたして美味いのだろうか。

『いただきます』

 二人で向かい合って座り、合掌。

 早速炒飯を口に含んでみる。

「…………うん、美味い!」

「本当です! マグロにもちゃんと味が染みてて全体のバランスが損なわれてません!」

 よほど美味いのか怒濤のように炒飯を口に掻き込むリエル。

 普通の少女なら女らしさが台無しになるはずのその行為は何故かリエルには当てはまらないらしく、スプーンで口に掻き込む動作の1つ1つが謎の幼さでカバーされていた。

 と、そんなリエルを眺めていた時だった。

 ちゃーちゃーちゃ、ちゃーちゃーちゃ、ちゃーらーら、ちゃーちゃーちゃちゃー。

 突如、咲良のスマホが爆熱しそうな音楽を奏で始めた。この音楽は母からの着信だろう。

 慌てて席を立つと部屋の角に行って通話マークをタップする。

『あ、サクくん? 今何してる?』

 やはり母親だった。

「うん、今ご飯食べてる」

『あらそうなの? あ、そうそう。母さん、こっちで仕事してたら緊急の仕事がまた入っちゃって』

「またカンヅメ?」

『そうなのよ。多分月曜の夜までかかるかも。だから、その間は家をよろし』

「おぉぉぉぉぉさかぁぁぁっ!!」

「うるさいよバカ!!」

 謎のリエルの叫び声で母親との会話が中断された。何いきなり関西イメージが一番強い都道府県の名前を発しているのか。

『あら、誰か一緒にいるの?』

「ええっと……。ちょっと知り合いの女の子とご飯食べてて」

 口が裂けても「女の子の天使と恋人になって一緒に暮らすことになりました」なんて言えない。そもそも口が裂けたら喋れないが。

 仮に言ったところでどういう反応されるかわからないうえ、何よりめんどくさくなる。

『ふぅん、サクくんが珍しいわね。あ、ゴムはリビングの棚の二段目n」

 ぷつん。

 ろくでもない話になりそうだったので強制的に通話を切った。いったい母親は咲良をどれほど変態と思っているのか。

 自分的には節度は弁えていると思っているのだが。

取り合えずスマホを待機状態にしてリビングへ戻ると、リエルはテレビの画面に釘付けになっていた。どうやらこの時間帯特有のクイズ番組らしい。

「お前、何やってんの?」

「何ってテレビ鑑賞に決まってるではないですか。本当はニュースを見たかったんですが、点けたらこれでしたので」

「本当にニュース見たかったのか?」

 リエルの今の釘付けようからしてそうは思えない。本当はこいつ何かバラエティ番組を見たかっただけで、理由付けにニュースを見たかったとか出任せを言ったに違いない。子供だってそうなのだから。

「ほら、テレビは飯食べながらでも見れるだろ。食わないんだったら僕が食うぞ」

「ああ、待ってください! 私も食べますから!」

 そうして再び二人は席について夕食を食べ始める。しかし食べていて思ったが、マグロが若干小さく感じる。

 当然焼いている間に小さくなったのだろうが、やはり水分の抜ける具合を考慮してもう少し大きめにカッティングしておくべきだったか。

「ところで先程の電話はお母さんですか?」

「うん。今度の月曜まで帰ってこれないらしいから、それまでは安心出来る」

「それはよかったです! 私もここに腰を落ち着けられて安心しました」

「いつから家に居候出来ると錯覚してんだお前は」

 未だに自分の立場を把握していない天使をドスの聞いた声と共に睨み付ける。その途端、リエルは顔から冷や汗を垂らし持っていた食器類を机に置いてこちらを見た。

「いいか。確かに、お前は僕を大天使にするためにやって来た。だけど、お前の分の衣食住は面倒見切れんぞ」

「えっ、だって今ご飯を食べさせてくれてるではないですか」

「それは今この時点での家主が僕だからだ。だから僕はお前を泊めてやる」

「けどさっきは面倒見切れないって……」

「それは僕の母さん視点での話だ。母さんが月曜に戻ってくれば、その瞬間からこの家の主は母さんだ。僕じゃない。そして母さんは家の生計を一人で立ててくれてる。そんなときにもう一人家族が増えたらどうなる?」

 できる限りの弁舌を振るい、リエルを指差して解答を求める。

「……もっと仕事が大変になる?」

「そう、その通りだ。それにお前みたいな訳分からん理由だと母さんも泊める気が失せるし……。まぁ、僕もお前と居たいし出来る限りの口添えはするけど」

「ううっ……。居候って簡単そうに思えてかなり大変ですね」

 どんよりとした顔でシチューを啜り始めるリエル。恐らくこいつはアニメや漫画みたいに居候が簡単に出来ると思っていたのだろう。が、現実がこれだと出鼻を挫かれた気持ちになるのだろう。

 現実とアニメは違う。

 当たり前の鉄則がそこにはあった。

 そしてそうこうしているうちに、二人の皿は空になった。

「あー、美味しかったです!」

「じゃあ食器をシンクに持っていって。水に浸けといて後で洗うから」

「了解です!」

 びしっ、と敬礼するリエル。いつの間にか咲良>リエルという上下関係になっている気がする。まぁ今は咲良がこの家の主なので当たり前と言えば当たり前だが。

 ダイニングの奥にリエルの姿が消えたのを確認すると、直ぐ様咲良は二階に行き自室の部屋の箪笥からパジャマを二人分引っ張り出す。余分な一着はもちろんリエルの物だが、問題は下着。女性物の下着が咲良の箪笥に入っている訳もなく、かといって母親の物を勝手に使うわけにもいかない。

 仕方なく咲良はスマホの電話帳を開き、その中の一人に電話をかけた。

『あ、龍川くん? こんな時間にどしたの?』

 数コールの後に電話に出た声は少女の声。相手は2件隣に住む、クラスメイトの轟紗香(とどろきさやか)。近所ということもあってそれなりに交流があったのだ。

「ごめん。こんな時間に悪いんだけどさ、お前の下着貸してくんね?」

 ガタン、と電話の向こうで何かが倒れる音。恐らく椅子に座って話をしていた所に今の発言を食らってずっこけたのだろうか。

『ご、ごめん……。まさか龍川くんに女装癖があるとは思わなくて……』

「僕が着るわけないだろ。実は知り合いの同年代の女の子を数日預かる事になってさ」

『なるほど、だいたい分かった』

 補足と同時に一言で切り捨てると、紗香はアバウトに理解の意を示した。

『つまりその娘の分の下着が無いから貸してほしいって事ね』

「うん。上下一着あればなんとかなるから、よろしく頼む」

『それにしても龍川君が女の子と……。むふふ』

 何やら怪しげな呟きを最後に通話は途切れた。

 しかし何がともあれ下着問題も解決。少しながら安堵の息を漏らすと、咲良は再び一階へと降りていった。

 リビングへ戻ると、そこには再びテレビに釘付けになっているリエルが。

「な、なんなんですかこのアニメっ!? 限りなくアウトに近いネタが何故にこれほどまでに乱用されてるんですか!?」

 どうやらリエルが見ているのは深夜アニメの再放送らしかった。確かあのアニメはとある動画サイトでアニメ史上最高の再生数を記録したとかで有名だったはず。

「やっぱアニメ好きなんだな」

「もちろんです! 一番お手軽な娯楽として、アニメに勝る物はありませんっ!!」

 こちらに身を乗り出して高らかに主張するリエル。その眼は台風の中でも輝けそうな程にシイタケになっていた。

「あ、そろそろ風呂入るか?」

「じゃあ一緒に入りましょう!!」

「どうしてそうなるんだよ」

「だって『人間界では恋人同士は一緒にお風呂に入るのが基本』と天界で学んだんですけど」

「お前ら天使の教育思想はどうなってんだ」

 恐らく天使は皆フラグ建設の研修を受けているようだ。しかもそれなりにレベルが高そうなのを。

「あのな、アニメと違ってちょっとやそっとじゃカップル一緒に風呂に入ったりしないんだよ」

「マ、マジですか…………っ!?」

「マジだ」

「つまり咲良さんは私に一人で風呂に入れと?」

「オフコース」

「………………」

「………………」

「ならば私にも考えが」

 そう呟くなり何を思い立ったか、リエルは胸元に手を突っ込むとスマホをそこから引き抜いた。余談だが服の隙間から見えた胸は豊満かつ美しかった。

「咲良さんが一緒に入ってくれないなら、アズラエル様に虚偽報告してその命を」

「それバレたらお前もヤバくね?」

「…………バレなきゃいいんですよバレなきゃ」

「お前絶対後先考えずに行動起こすタイプだろ」

「ぐぬぬ…………っ!」

 どこから取り出したのか分からないハンカチで歯噛みしているところから察するに図星だったらしい。

「ほら僕も皿洗いとかしないといけないし……。明日は一緒に入ってやるからさ」

「本当ですかっ!?」

「本当本当。だって僕は真空パックは破るけど約束は破らない男だから」

「いやそんなこと知りませんけど……とにかくバンザーイ!」

 余程嬉しかったのかリエルは大袈裟なリアクションで一人万歳三唱していた。実を言うと今の発言は状況打開の為の口実だったのだが。しかし何にせよ納得してもらえてよかった。明日はちゃんと背中を流してやろう。

「ほれ、パジャマ」

「ありがとうございます、それでは!」

「あ、風呂は廊下出て右の突き当たりだからな」

 またも姿勢よく敬礼すると、リエルは廊下へとその姿を消した。

 さて、こちらはこちらで仕事を。


 ピンポーン。


 咲良が流し台に手を伸ばした瞬間、玄関のチャイムが鳴った。明らかにこの状況で来るであろう人物はただ一人しか想像がつかない。

 客を待たせぬように急いで玄関に駆けていき、扉を開ける。

 ガチャ。

「やっぱり紗香か」

 扉の向こうには、先程下着の注文を依頼した紗香が紙袋を片手に立っていた。

「やっほい、龍川くん。はいこれ」

「おお、ありがと」

 差し出された紙袋の中身をちらりと確認すると、咲良はそれを受け取って玄関の棚に置いた。ちなみに白だった。

「サイズ合うか分かんないけど、大丈夫かな?」

「うん、多分大丈……夫…………?」

 ふと紗香の上半身を確認する。

 ──起伏が少ない平野。

 リエルの体型を思い出す。

 ──日本アルプス×2。

「……下はともかく上はダメかも」

「薄々感づいていたけどやっぱりか」

 小さいことを自覚しているらしく、滝のように豪快な涙を流す紗香。同年代の少女は皆自分より大きいと分かっての行動だったのだろう。

「ま、まぁ上は龍川くんが今度買ってあげて。下はそのままプレゼントって事で」

「僕が女性用下着売場に行って買えるとでも?」

「大丈夫だよ。龍川くんはどっからどう見ても女のこぅにゅ」

「僕は男だって言ってるよね? 間違っても僕っ娘じゃ無いからね?」

 コンプレックスをストレートに突かれたせいで怒りを覚え、紗香の頬を両手で左右にのびのびと広げてやる。それなりの餅肌で引っ張ってて気持ちよかった。

「ひゃ、ひゃあははひはへうははははひへ」

「ほい」

 異星人並の聞き取りづらさの紗香の言葉を翻訳し手を放してやると、赤くなった頬を擦りながら紗香は帰っていった。

 最早用事は済んだのでドアを閉めて今度は風呂場の脱衣所に向かう。

 シャワーの音がするので、どうやらリエルは普通に入れているようだ。

「おーい、リエル。湯加減はどう?」

『いい感じですよー。風呂場自体もそれなりに広くて快適です!』

 どうやらお気に召しているようだ。かれこれ産まれてからずっと使っているが、この風呂はいい風呂だ。あと10年は龍川家の人間の垢を落としてくれるだろう。

「じゃあここに下着置いとくな。多分上が小さいから、今日着てたの着てくれ」

『えっ、なんでサイズ合わないって分かるんですか?』

「…………察してくれ」

 紗香の名誉を守るためにも、こちらから出す情報は最小限にしないといけない。名誉が傷付いたが最後、二人揃って半殺しにされるだろう。

「じゃあゆっくりしてて。僕はまだやることあるから」

 そう告げると、まだ片付いていない皿洗いを終わらせるべく咲良は脱衣所を後にした。


******


「ふぁう………。やっと就寝できますよ」

「寝るのが遅くなったの8割方お前のせいだからな?」

 家事を粗方全て済ませ入浴し、咲良はリエルと共に自室に来ていた。

 あの後皿洗いが終わったにも関わらずリエルが中々風呂から上がらなかった為に咲良の入浴時間が遅くなってしまったのだ。

 結果、現在時計は11時半。

「だって咲良さんがゆっくりしてていい、って言ったから……」

「ゆっくりって言っても限度があるだr」

「それにしても、見ただけで咲良さんがそれなりにオタクっていうのがよく分かる部屋ですね」

「話聞けよ」

 間髪入れずに突っ込むも、全くリエルの耳には届いていないようで、相変わらず咲良の部屋を見回している。

 しかしそれもそのはず。部屋の棚という棚には小説や漫画、プラモデルがみっちり占領しており、机の上には携帯ゲーム機とそれ対応のゲームカセットが山積み。萌えキャラがプリントされたポスターも一枚だけ貼ってある。

 誰もが一目で「オタクの部屋」と認識できそうだ。

「うへぇ……これって同じスケールの他の奴が2000円程度なのに対して定価が22800円するプラモでは無いですか……。これを買って組み上げて塗装までするとは……化物ですか咲良さんは……っ!?」

 今度は数個並んだ棚の上に設置された巨大プラモを観察するリエル。小遣い4ヵ月分を注ぎ込んで造り上げた出来栄えは伊達じゃない。

「ほら、もう遅いから早く寝るぞ」

「あ、咲良さん。寝るのはもうちょっとタンマで。まだ契約が済んでませんでした」

「ん? 契約?」

 またややこしくなりそうな単語が出てきた。今度はいったいなんだ。

「夕飯の前に咲良さんは『天使を目指す』って言いましたけど、それだと単なる口約束なので上にも認めて貰えるように制式な契約を結ばないといけないんです」

「なるほどねぇ……」

 一応、口約束も契約に入るはずだったが、その辺りはどうなのだろうか。

「咲良さん。私と契約して、天使になるんです!」

「いや言われなくても契約するけどさ。で、なんか契約書とかにサインすんの?」

「いえいえ、もっと簡単な事ですよ。では早速」

 そう言うとリエルは咲良の面前に歩み寄った。

 服と服が密着せんとする距離まで近付くと、今度は咲良の背中に腕を回し始める。

 そして頬を軽く染め、目を閉じて可憐な唇を咲良のそれに近付け──。

「ちょっと待て」

 状況がいまいちよく理解出来なかったので、ぐい、とリエルの両肩を掴んで引き剥がす。

「な、なんですか咲良さん! もっと色っぽい方が良かったんですか!?」

「問題はそこじゃねぇよ。ちょっと契約って具体的にどうゆう事すんのか教えてくれ」

「簡潔に申しますとキスですね。天界からはディープキスが推奨されてます!」

 なんだろう。目の前の天使の笑顔が今は悪魔の微笑みにしか見えない。

「あ、あのさ……」

「なんです?」

「契約……しないと…………駄目なの?」

「もちろんです。契約することで咲良さんも天使になることが可能になるんですから」

「や、やっぱそうだよな……」

 間近で会話しているこの瞬間にも、自分の頬が熱くなっていくのを咲良は感じていた。どうあがいても自分はリエルを異性と認識しているのだ。そして、自分の初めての恋人としても。

「どうしても……なんだよな」

「どうしてもなんです」

「………………」

「………………」

 二人は互いに見つめあい、流れていく沈黙の時間。

「お願いします、咲良さん」

 沈黙の後に声をかけられ、咲良は気づいた。

 ──リエルの眼が、遊び心抜きの真剣なそれになっていることに。

「咲良さん……お願いです」

 その眼差しのまま、リエルは両手を咲良の首に回し身体を寄せてくる。

 胸の双丘が身体に触れどんどん身体が硬直していく咲良。

 思えば、確かに自分にはリエルに従うしか方法はない。そうしなければアズラエル様とやらに命を奪われるらしいので、まだ人生を謳歌しきっていない咲良にとっては大変に悲しいことである。

 かと言ってこのまま契約するのも気が進まない。具体的に内容ではなく方法が。

 この状況でホイホイと口付け出来るほど咲良は男が出来ていない。

 緊張と恥ずかしさと何か分からない感情が脳内を駆け巡り、自分が壊れてしまいそうだ。

 なら、さっさと済ませた方が良いかもしれない。それが今の咲良とリエルにとって良いことならば。

「わ、分かった……リエル……。契約……するよ」

「……ようやくその気になってくれましたね」

 どうにか決心をつけ胸の中の天使を覗き込むと、こちらを向いて微笑んでいた。

「か、勘違いするなよ! 僕だって長生きしたいし……死ぬのは嫌だからな」

「ふふっ。どういう理由であれ、咲良さんが契約してくれて良かったです」

 そう呟くと、眼を閉じてゆっくりとその桃色の唇を近付けるリエル。

 それに応えるように、リエルの腰と後頭部に手を回す咲良。

 薄目になって顔を近付け、やがて視界にリエルの顔しか映らなくなる。

 そして。


 ──ちょん。


 二人の唇が、恋の始まりを告げるように触れ合った。

 後は本能に任せろ。

 脳がそう信号を伝達し、咲良は舌をリエルの口内に入れる。

「……んんぅ……っ!!」

 二人を結び付けるように絡ませる。

「ん……っ! んぅ…………」

 リエルの舌を招き入れ、二人の唾液を混ぜ合わせる。

「……んんっ!? ……ぁむっ……んくっ……」

 びくん、と身体が跳ねたかと思うと、力が抜けたのかリエルは膝を折ってその場に崩れ落ち始めた。

 間一髪それを抱き留めると、ベッドに座り太股に座らせ再開。

 その状態で続けること数分。ようやく互いの唇が銀の橋で繋がれつつも離れた。

「はぁ……はぁ……」

 力が入らないのか、身を委ねるように倒れ込んでくるリエル。

 焦点の合っていないように見える虚ろな瞳は色っぽく濡れて、呼吸も肩で息をするように苦しげだ。

 しかし苦しいのは咲良も同じだった。本能に任せすぎたか、気力で意識を保つのがやっとという状況。

「さ……咲良……さん…………。契や……」

 何か言葉を呟きかけてベッドに倒れるリエル。それを最後に、咲良の意識は消失した。


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