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サイバーパンク2.0.2.5──だから中卒無職の寛太は〝チートスレイヤー〟と呼ばれる  作者: 東山統星
シーズン0 さぁ、馬鹿騒ぎの時間だ

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009 困ったときはお互い様

「なにか飲むか?」

「紅茶、飲みたい」


 抑揚のない声だった。


「Tバックならあるけど」

「それで、良い」


 さすがイギリス人らしく、紅茶が好きなようだ。寛太は紅茶を作り、彼女へ差し出す。


「ほら」

「ありがとう」

「日本語、上手だな」

「MI6所属だから」

「そんな機密情報、バラして良いのかよ?」

「貴方は、直感的に信頼できるから」


 目の前にいる銀髪少女が、壮麗グループ幹部の子どもだと知ったら、どんな顔をするのだろうか。まぁ、今は友好的であるべきだとも思う。


「それで、MI6所属の⋯⋯名前は?」

「シャーロット・テイラー。偽名だけどね」

「だろうね。偽名じゃなかったら、相当イカれてる」

「貴方の名前は?」

「西野か、千尋」


 こちらも偽名だが、事情があるので仕方ない。


「西野千尋⋯⋯、どこかで聞いたような」

「ありふれた名前だしね」はぐらかす。「ところで、なんでシャーロットは私の家のベランダにいたんだ? ここ、3階だぞ? 普通、落下しないだろ」

「壮麗の連中に追われてた」

「壮麗の?」

「今、この世界は3つの勢力に分かれている。壮麗に与するものと、壮麗と対峙するもの、そしてそれらを巧妙に利用する無法者」

「で、シャーロットは壮麗と対峙して逃げおおせたわけだ」

「いや、私はMI6だけど、同時に無法者」

「は?」

「イギリス諜報機関のライセンスも所有してるけど、私の本質は無法者。刑務所内で、MI6のライセンスを獲得したから」

「なかなかイカれてるな」

「まぁね」


 シャーロットは紅茶を飲み終わる。そして立ち上がり、あたりをキョロキョロと見渡す。


「どうかしたの?」

「いや⋯⋯私には敵が多いから」

「ここに白昼堂々攻めてくるヤツもいないだろ」

「それでも安心できない」

「職業病ってヤツか⋯⋯」目を細める。「ま、この家には滅多に親も帰ってこない。妹⋯⋯じゃなくて姉はいるけどな。それに、空き部屋もある。とりあえず落ち着くまで、ここへいたらどう?」

「そうして良いのなら、そうする」


 シャーロットは、あいも変わらず無表情で言い放つ。


「なぁ、ひとつ良いか?」

「なに?」

「シャーロットは、誰を始末しようと思ってるんだ?」

「言えない約束だから」

「そりゃそうか」


 馬鹿正直に暗殺対象を喋るほど、愚かでもない。というか、そんな真似をしていたら暗殺者なんてできないだろう。


「さて、ちょっと埃っぽいけど、ベッドとテレビくらいはある」


 寛太は、空き部屋のドアを開ける。その言葉通り、埃っぽくてベッドとテレビしかないような部屋だ。


「ありがとう」

「困ったときはお互い様だよ」


 シャーロットは、ベッドにふらふらと向かっていき、そのまま倒れ込んでしまう。よほど疲れているのだろう。傷等もあるはずなのに、彼女はすでに寝息を立て始めていた。


「変なヤツ⋯⋯ふふっ」


 銀髪の少女になってから2日。妙に刺激だらけの日々だ。


 *


「⋯⋯、」


 寛太は目を覚まし、頭に銃を向けられているのを知る。目つきが悪く、髭面の白人がふたり。なにも喋らず、ただ寛太へ手を上げるようにジェスチャーしてくる。


(ツイてねェな⋯⋯)


 おそらく、シャーロットに探知機でもつけていたのだろう。それで、寛太がシャーロットを拉致したのだと勘違いしたのか。

 寛太は手を上げ、そのまま背後に突きつけられた拳銃とともに、出口へと向かっていく。


(つか、霞はなにしてンだ?)


 カテゴリー5の霞がいれば、状況は一気に逆転できる。あの妹が素直に拉致されるわけもないので、なにか理由があるはずだ。


(シャーロットは、すでに回収されたみたいだな。クソッ、災難なんてレベルじゃねェぞ)


 ドアへ向かって、エレベーターで下に降りたとき、

 ぼぉお⋯⋯、と炎の音が聞こえる。

 そこには、ヒットマンを睨みつける霞とシャーロットがいた。


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