019 栄光ある孤立
一方、寛太たちは、長きに渡る夜が終わり、学校へ行けるようになった。
寛太たちの目的は、壮麗グループで冷遇される親を持つ勝又由利と、梶原陽太との接触。このふたりなら、反壮麗活動に乗っかってくれる可能性が高いし、今は兎にも角にも戦力が欲しい。
そして、寛太たちはふたりの連絡先すら持っていない。そのため、多少リスクを背負っても、壮麗学園に行かなければならない。
「片山、ジャマーはまだ続くよね?」
「あぁ。PMCが追跡してくることはない」
「なら、それを私と霞によこして。片山とシャーロットは、壮麗学園に入れないでしょ?」
「まぁな」片山はジャマーを寛太に放り投げる。「その代わり、おれとスパイ女は無防備になってしまう。ここでコマンド兵でも派遣されようものなら、だいぶキツイだろうな」
「片山とシャーロットなら、きっと大丈夫だよ。ま、とりあえず行ってくるよ」
シャーロットは優雅に紅茶を飲みながら、西野兄妹にいう。
「壮麗グループは、私たちの想像を超えるような真似をしてくる。だから、細心の注意を払ってね」
「言われなくても。ねぇ、霞」
「ねむい……」
朝に弱い霞は、顔を洗ってエナジードリンクまで飲み、無理やり目を覚ますも、やはり眠たげだった。
「ともかく、行くよ。なに、梶原と勝又と接触して交渉すれば、きょうのタスクは終わりさ」
「分かったぁ……」
こうして、寛太と霞は、壮麗学園までタクシーを使って向かう。
*
勝又陽太は、あらかじめ寛太に仕組んでおいたタグ型のGPSで、彼女たちが壮麗学園へ向かってきているのを知る。
「……アイツら、コマンド兵も殺っちまったのに、なんで今更学園へ?」
片山には劣るが、勝又もなかなかのハッカー。だから、あの兄妹とその仲間たちがコマンド兵を撃破した情報をすでに仕入れている。そんな連中が、なんの目的で壮麗学園へ来るのか。わざわざ殺されに来るとも思えないが、学園側も相応の警戒をしていると思われるので、やはり死にに来ているとしか考えられない。
「ふーむ。まぁ、分かりやすい場所で待っていてやるか」
おそらく、あの兄妹の狙いは勝又であろう。なら、正門の前にでも立って、ふたりを出迎えたほうが良い。学園の敷居に入れば、それだけで危険性が急上昇してしまう。
「あら、クソ陰キャじゃない」
梶原が正門前で突っ立っていたら、彼の〝幼なじみ〟の勝又由利が現れた。
「この世はな、ぼっちのヤツのことをクソ陰キャっていうんだよ」
「うちは意図的に孤立してるだけよ。闘争心を失わないためにね」
「はいはい、そういうことにしておくよ」
こんな風に、梶原と勝又は幼なじみでありながら、関係性は良くない。口を開けば、互いを罵り合う程度には。
「さて、栄光ある孤立を守る勝又よ。オマエが闘った西野千尋ってヤツが、壮麗のコマンド兵を倒しちまったみたいだぞ」
「……え?」
「普通に考えりゃ、そんな大罪を仕出かしたヤツが壮麗学園に来るとは思えない。ただ、アイツにつけたGPSは、しっかり壮麗学園へと向かってきてる」
「……意味分かんないんだけど」
「おれだって分からん。ただひとつの事実として……おれとオマエの親が、壮麗グループで冷遇されてることがある」
「まぁ、そうらしいけれど」
「対して、西野兄妹の親は壮麗グループの取締役。近々、イギリス支部に社長待遇で招かれるようなヤツなんだな。それを頭に入れておいたから、西野千尋にGPSを仕掛けたのさ」
「いや、意味がさっぱり分かんないんだけれど」
「もしも、西野千尋が父を憎んでいるとしたら?」
「……?」
「もちろん仮説だけど、なにせ御曹司がコマンド兵を倒したんだぞ。なら、自身の父、あるいは壮麗そのものに恨みを持っていてもおかしくない」
「だとしても、ここへ戻ってくる意味なくない? 自殺したいんなら別だけど」




