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fudanshi  作者: 真砂木
8/24

8話

先日家に来た友人の伊達。


 抵抗感もあったはずだが、服を着てくれとダメ元で頼んだら、案外あっさり承諾してくれた。


 その後勉強してる最中、ふと伊達に

『意外と押しに弱いんだな』と言うと

『違う。七瀬くんだから』と見返され、…そうか、としか返せなかった。


 見た目で遠ざかる人も少なくない中、いつの間にか近くにいる存在。


 話す前は、ぼんやりとした印象しか無かったが、話してみると案外楽しい。

 七瀬の趣味を知った時も「つくったの?ほお…」と感情の乗った表情をする。普段がややあれなので、見ていて面白い。


 二人でいる時、無言で過ごすこともある。七瀬は趣味に没頭し、伊達は窓の外を見たり、寝てたり。

 接していく内に気付いた。本人は自覚していないだろうが、時々、淋しそうだ。


 七瀬はその瞳を見るのが嫌いではない。と言ったら何か色々誤解されそうだが。ほんの少しだけ魅入ってしまう。


 伊達はよくぼんやりしている。

 この前家に来た時もそうだ。


 いつも眠そうに隈を携え登校してくる。

 最近夢見がどうとか言ってたな、…それも関係あるのかもしれない。

 礼は後日談と言っていたがそういうわけにもいかない。

 一つは決まったが…


 何がいいか、中にラベンダーを入れたサシェを作りながら考えこんでいると、ドアをノックする音で我に返った。


 「兄貴、オレだけど」


 「順か…どうした入れ」


 ドアが開いて順が顔を出す。


 「あのさ、この前の…服まひろが礼言いたいって…」


 順の横からまひろが、ひょいと顔を出した。


 「お兄さん、おじゃましてます」


 「ああ、いらっしゃい」


 「服、ありがとうございました。早速着て、じゅんくんとクレープ屋さんに行って来ました」


 そう言ってスカートの部分を引っ張り見せてくる。


 順が「おい、まひろ…、」といって止めようとしたが、服を着て喜ぶまひろを見て黙った。


 「お、着てくれたのか。少しだけ見せてくれないか?」


 そう言って作りかけのサシェを机に置くと、丸椅子を寄せて近寄った。


 「もちろん!あ、おじゃましまーす」


 そう言って入ると、くるっとまわってみせた。


 「かわいいですよね、これ。ここのボタンもキラキラしててお気に入りです」


 「はは、お世辞でも嬉しいな」


 「お世辞じゃないですよ!順くんにも、似合うって言われて。…もう最高でした、今日はクレープも食べれて…見ます?」


 これ、ここです!と、いつも以上に喋るまひろについ笑みがこぼれる。

 そんなまひろを見たこともない顔で弟が見ていることにも。


 幸せそうだ…。

 二人から溢れ出るオーラに思わず七瀬もホッコリする。


 それじゃあ、失礼しましたー。と言って出ていく順とまひろ。

 帰り際に順がありがと、ぼそっと言って出ていった。


 ………あ、伊達甘いもの好きだ。確か


 それから次の日の放課後、伊達を誘ってみた。


 いつもより表情筋が豊かに、通常の倍にこにこする伊達に、誘ってよかったと七瀬は胸をなで下ろした。


 店に着くと、伊達は真剣な表情で悩みだした。

 さっきからずっとメニューの同じところに目線が行き来している。


 七瀬は少し考えて提案した。

 全部は食べれないから食べて、と伝えた後の伊達の顔。


 ついさっきの顔を思い出して笑いそうになった。

 抑えきれていなかったらしく、伊達に七瀬くんどした?と問われる。


 「いや、…なんでも。あ、伊達、手出して」


 「…?」


 「それ、枕元に置くとよく眠れるらしいぞ」


 「きれい…いい匂い」


 ラベンダーの刺繍が施されたその袋に鼻を近づけてそう言うと七瀬を見た。


 「もらっても、いい?」


 「伊達に作ったやつだしな」


 と七瀬は頷いた。


 「大事に使う」


 と伊達は存外穏やかな声で言うと、嬉しそうに微笑んだ。


 「…おう」

 「帰ろっか」

 「…、ああ。…そういえば、この店。まひろちゃんに教わったんだ」

 「え…!そうなの?」

 「順とこの前の服着て、食べに来たらしい」

 「そ、…そうなんだ…」

 「写真も見せてくれたな…仲良さそうだった」

 「…どんな風に、げふん」

 「どうした?」

 「…、んーん。」


 帰り道を伊達と喋りながら歩く。


 こころなしか、話を聞いている間、クレープが届いた時のように伊達の瞳が輝いて見えた。


 伊達との時間はあっという間に過ぎてしまった。


 いつもと違い、無邪気な伊達の一面を見た七瀬は近々またどこか誘うか、と静かに湧き立つ想いに穏やかに微笑んだ。

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