6話
こんな心あらずで勉強なんか出来るだろうか。気を抜くと、今の一連の流れを解読しようと空想の世界にとびそうだ。
いや、勉強をしに来たんだ勉強。
そう自分に言い聞かせ、頬を叩いて戻ってきた伊達。しかしそこには、なぜかワンピースをもって待ち構える七瀬がいた。
「なあ、伊達ちょっと頼みがある。これ、着てくれないか?」
「…、なんて?」
「イヤなら断ってくれていい。…着たイメージが合ってるのか知りたい…だめか?」
「…ええ……、マネキンに、なる分にはいいけど…、はいんの…?」
「背格好同じぐらいだから…少しはかってもいいか?」
「どうぞ……」
すぐに手際良く採寸をすませ、大丈夫だなと七瀬はワンピースをあてがい、威嚇スマイルをみせた。
言われた通りインナーパンイチで着てみる。腰に手をあて伊達は開き直る…どや。
「…」
「…」
七瀬は何も言わず、いかつい真面目な顔で身体周りをチェックする。
笑いもおこらないのはさみしいなという自分を発見した伊達。
七瀬は伊達の腕を横にあげたり、首周りを直しながら話しかける。
「…、着てみてなんか腕上げにくいとか、動きにくいとかきついとかある?」
「……ない、と思う。参考になんのこれ」
「ちょっと歩いて」
長袖ロングワンピースで部屋を歩く伊達の背後にまわりこむ七瀬。
止まってと言われ立ち止まる。
スカートの裾の部分をつまんで、何やら作業をしている模様だが見えない。
机にむかい書き込んでる姿が職人…
顔をあげた七瀬に「もう着替えていい」と言われて丁寧に脱いで返す。
「つき合わせてわるい、助かった」
「いーや、役に立てたなら良かった」
首をふって返事をする。真剣な人をみたら背すじがのびる感じするし、そんな作り手の七瀬を尊敬する。
「なんかお礼する、考えといて」
七瀬の申し出に、伊達はお礼なんていい、と断ろうとした。
けれど一瞬閃いて、思ったことを言おうと口を開きかけた。
頭に浮かんだ、順とまひろのことを知りたい、という言葉を一度セーブする。
「…あの、このワンピースを渡した後日談を聞かせて下さい」
「…いいぞ、…そんなんでいいのか…?」
「うん(おれにとっては)。着ただけだし」
「…なら、…わかった」
「勉強するか」
「するか」
友のためにひとはだ脱いだ日。




