28話 小ネタ
ホワイトデー中坊伊達くん
伊達はショッピングモールの二階から階下を見下ろした。
パステルカラーの風船が束になって至る所に浮いている。
バレンタインが終わって1週間。
ホワイトデーの商品が一階にはズラリと並んでいる。
お昼過ぎ、ちらほら商品をみるお客もいる。
伊達は、手すりを握りながらどうしようか、と悩んでいた。
毎年バレンタインが過ぎ、従兄の家にお邪魔すると、貰ったチョコレートを伊達におすそわけしてくれた。
一緒に食べて、それが行事のようになっていた。
美味しいお菓子のお礼にと、ホワイトデーに合わせて今より小さかった伊達がポケットに忍ばせていた、なんてことはない飴玉をはい、と渡した。
それから、ホワイトデー近くになると、毎年手近にあった飴や、お菓子などを一つ渡していた。
腐活の帰り、たまたま目に入った売り場に伊達の足がとまる。
新聞配達のバイトを始めたこともあって、今年は久々汰に何か買って返そうかと考える。
まだ先だけど、先にどういったものがあるか、下見してこようか…
上から見ただけで、すごい数があるのが見て取れる。
目移りしそう…とりあえず、行ってみるか…、と乗り込んでみたはいいものの、クッキー、チョコ、雑貨、etc.
…、全部かわいいな…!
美味しそうだな、だけど数の割に値段が高い。あ、このクッキー缶。値段もお手頃…買って帰りたい。
伊達は自分が食べたいもの目線で選んでいることに気づいて、はっとした。
浮かれたテンションを一旦落ち着かせ集中して考える。
何を渡したら喜ぶんだろ、くー兄は多分量よりも、質だよな…
あ、でも食べ物じゃないほうがいいのかな…
その後、時間も忘れてじっくり見てまわり、あーでもないこーでもないと思いを巡らせ、頭がぼーっとしてきた伊達。
あ、このマグカップの猫…かわいい。これをおそろいで買って使うカップルがいたら…
無意識に癒しを求めて現実逃避しだした。
思った以上に色んなことを考えるんだな…。これは、悩む…
今日は撤退しよう…どんな物があるか見れただけ良しとしよう。うわ、もうこんな時間…
少し見るだけのつもりが、ゆうに一時間を超えていた。
――それから
先送りにしている内に三月に入り、数日が過ぎた。
伊達は家に来ていた遥のリクエストに応え、キッチンに立っていた。
「なにがいいのかな…」
まだ久々汰に何をあげるか決めていなかった。
ぼんやり呟いた伊達の後ろからひょっこり現れた遥が、「何が?」と訊いてきた。
「っ、遥…」
「わっ、おいしそー、もう食べていい?」
「一個ならいいよ」
「やった。ねー、さっきなんか言わなかった?」
「んー、…あのさ参考に聞きたいんだけど、」
と、久々汰の喜びそうなものを訊いてみた伊達。
それを聞いた遥は、すぐにこたえた。
「何でも喜ぶよ、あの人」
「……、何でもいいってこと…?」
「うん、ソレとかでいいじゃん」
「、これ?」
「そう」
簡潔な遥の返事に伊達は「ほんとに?」と思ったことが口から漏れていた。
昔、例年通り一緒にチョコを食べている時、一つだけ店名のないラッピングされた袋を見つけた伊達が、「これ、手作りだよ、くー兄」と久々汰に言って渡した事がある。
それを受け取ると久々汰はテーブルの脇へ袋を置いた。
『食べないの…?』
『うん…、手作りは色々あって駄目なんだ』
『…、そうなんだ。くー兄の代わりにたべてあげよっか…?』
『それは、一沙樹が食べたいだけでしょ?』
と笑って交わした記憶を思い出す。
「くー兄って他人の手作りとか…苦手だと思ってたんだけど」
違うの?と、伊達は遥をみる。
「いーくん…それ本人に訊いてみなよ」
「うん」
何とも言えない遥の目に何故かすごすごと頷く伊達。
…ええ、ほんとに?
結局伊達は、その日遥に合わせておやつで出したチョコマシュマロを、ホワイトデーにもう一度作り、久々汰にあげた。




