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fudanshi  作者: 真砂木
26/28

26話

 洗濯物をたたみ終え、伊達は置いていたスマホを手に取ると、玄関へ向かった。


 昨日ずぶ濡れになったスニーカーに足を突っ込む。


 ……、え。濡れてない


 生乾きを覚悟していた伊達は自分の足元を目を丸くして見た。


 センパイって魔法も使えたりするのかな…


 乾いている靴を不思議に思い、明石なら出来なくも無さそうだ、と突拍子もない事を考える自分に笑い、扉を開ける。

 鍵をしめて郵便受けに入れると、そうだ、と伊達は明石にメッセージを入れておく事にした。



 定刻通りに来たバスに乗って揺られうとうとする伊達。

 いつものバス停で降りた所で「いーくん」と聞き慣れた声に伊達は振り向いた。


「遥…、」

「ちょうど家に寄ろうと思ってたんだ」

「こんな、朝早くに…?」

「うん、先輩の家追い出されちゃってさ。近くだし、いーくん家行こうかなって」


 どっか行ってたの?と遥に訊かれ、伊達は昨日の事を掻い摘んで伝えた。

 休日の朝はまだ静かで、少し声をおとしながら話す。


「そっか…あーあ、オレがいーくんと同い年か先輩だったらなあ」


 迎えに行けたのに…と少し口を尖らせ言った遥の隣で、伊達は「何言ってんだ」といいつつ、擽ったそうにはにかんだ。



 昨日とは打って変わり空は澄んでいる。人けのない道を遥と並んで歩く。


 伊達はまた眠気がやってくるのを感じた。


「ね、いーくん。お腹すいた」


「あ、そう言えば俺も…空いたかも」


 ご飯の事を考えると、急に胃が空腹を訴えてきた。

 伊達のお腹が小さく鳴った。

 

 …昨日、店でまかないを食べてそれきりだから…、そういえば、センパイご飯の事も言ってたっけ。

 

 伊達は明石の部屋のテーブルに置かれていた栄養ドリンクや、固形の栄養補助食品を思い出す。


 あの人、食べ物とかこだわりなさそうだもんな…。と、伊達はぼんやり考える。


 「いーくん」

 「何…?」

 「帰ったら、何か作って」

 「…、いいよ。何がいい?」

 「いーくんの食べたいのでいいよ」

 「―そしたら…」


 …冷蔵庫の中身と相談だな…


 朝ごはんは和食にした。

 ご飯は冷凍だ。お味噌汁と付け合わせのお浸しと焼き鮭。

 お浸しは作り置きしておいたので、なめこ入りのお味噌汁と鮭だけ焼いた。

 お腹が鳴る。遥はすぐそばで盛り付け終わるのを今か今かと待っている。


 「よしっ、遥ゴー」

 「ラジャっ」

 二人で料理を居間へ運ぶ。

 

 直ぐに皿は空になり、遥が食器を洗ってくれるというのでお言葉に甘える伊達。

 行儀は良くないがその場で倒れ込むように寝転ぶと、すぐにでも寝れそうだ、とうつらうつらとしてきた。


 しかし、通知の音にビクリと目を覚ました。

 だれだろ…、くー兄かな…


 食欲が満たされ動作もゆったりとしてしまう。

 画面を開いて見ると明石だった。


"伊達氏君は魔法が使えるのか"


 ―…いや何で…?


 届いたメッセージの文面のわからなさに伊達が無意識に口元を緩めていると、遥が戻ってきた。


 伊達の横に寝転ぶと、遥は言った。


「ねー、いーくん。今度さ…店行ってもいい……?」

「店?」

「うん。バイトしてる所、いーくんが。だめ…?」

「え、別にいいけど」

「あと…、いつもぬいぐるみくれる人、いーくんの友だちにもオレ、会ってみたい」

「…七瀬くん…?」

「…うん」

「いいけど…?」

「やった、楽しみー」

「何で…?」

「ん?」

「んーん、伝えとく。予定教えてね」

「わかった」


 遥は、伊達の疑問をわかっている。

 でもあえて言わないのは、それを伊達が知る必要が無いからだ、と判断し触れるのをやめた。

 

 歯を磨きながら、自分の思い過ごしかもしれないし、と伊達は楽観的に捉えていた。




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