25話
『起きて、』
―……、ん…
『早く、起きて』
るさ…、
『起きて、一沙樹』
……、くー兄…?
「起きろ」
目を覚まして直ぐに、伊達はまだ薄暗い部屋の中、自分を呼び起こす人を焦点の合わない瞳で見た。
「起きたか、伊達氏。俺は今から日課の散策に出掛ける。服は洗濯しておくから、風呂にでも入ってるといい、腹が減ったらテーブルにあるのでも冷蔵庫の中のでも好きにしたまえ。戻ってきたら送り届ける。が…万が一遅くなる場合には、一応スペアを置いておく…、待っていろ。いいな?」
寝起きに優しくない明石の口調に、伊達は頭がまだはっきりしないまま、いつの間にか掛けられていた毛布を被りながら、かろうじて頷いた。
すぐに扉の開閉音がして、静かになった室内――。
…なんて言ってたっけ、
風呂…?というか…こんな、暗いうちからどこに行くんだ…センパイ…、
「―…そうだ…、」
ここは明石の部屋だということを思い出し、昨日の出来事を思い起こした伊達。
まだ起ききらない身体を無理やり起こして、取り敢えず身支度する。
お風呂、かりていいって言ってたっけ。
洗面台へ向かうと、伊達の服が入っていると思われる洗濯機が静かに稼働していた。
あ…、停電。なおったんだ
それから―
トイレをかりて、お風呂のお湯をかぶっていると、だんだんと頭が冴えてきた。
今の状況を把握し、起き抜けに明石の言っていた事を思い出す。
風呂を終え、乾燥し終わった服を身に着けドライヤーも拝借する。
時間を確認すると、まだ六時前だった。
明石はいつもこんな時間に起きているのだろうか、とまた一つ明石について知ったが、何をしているのかという謎もまた増えた。
お風呂や使った毛布、昨日濡らした床など、使用した部分を適当ながら掃除しておく。
勝手に色々やっているような気がしたが、体が勝手に動く。
何か言われたら、その時はそのときだ。と伊達は開き直る。
ふと昨日見た腐生植物の置物が目に入った。近くに寄って見てみる。
なんだろう…不思議な形だ。名前にタヌキが付く謎な植物。見れば見るほどどうなっているのかわからない。
まるであの人みたいだな…
しばらく観察していた伊達は、ふいに鳴ったブザー音で、借りた服を洗濯機に投入しスイッチを入れていたことを思い出した。




