23話
結局、明石が差す傘に入り、一緒にコンビニへと向かうことになった伊達。
何か道が妙に暗いな、と思いながらも明石と二人、ひたすら歩く。
先輩があまり喋らないのって新鮮だな、と雨に打たれる地面を見ながら伊達は思った。
「「……」」
そんな事を思っていると、横で明石が急に言った。
「停電だな伊達氏!」
「…え、停電?」
そう言われてみれば、電気が…消えていたのか。目が慣れていて気付かなかった。というか、なんか楽しそうだな先輩。
チラリと明石の方をうかがう。
…なるほど、人間観察してるのかな。
ここを歩いているのは当たり前だが伊達と明石だけではない。
一方通行並みに狭いこの道には、表通りと裏通りの栄えた賑わいに対して比較的静かではあるが、ちらほら店も立ち並ぶ。
数分前の伊達のように、雨宿りしている人や電話口でやり取りしながら大声で話す人、走り去る原チャリに乗った坊さん…。
明石の視線の先を追うとそんな人達が居た。
すれ違う人々を見て機嫌良さそうに口角を上げている。
何を考えているんだろ…
伊達は読めない明石の思考に思いを巡らす。
そんな風にしているうちに、雨脚が少し弱まってきた。
「…見ろ、伊達氏。いや、そっとだ、いいか露骨な視線を、向けるのは野暮というものだ」
何だか先輩の息継ぎが激しくて心配だ。
「……何ですか。あ、」
反対車線の向こう側から…この前の、店に来た無敵カップルが見えた。
「気付いたか。そうだ向こうから歩いてくるカップルをよく注視したまえ、見えるか?あのキラキラと輝きを放つオーラが」
思わず見えます、と言いそうになったが何とか耐える。
チェックのシャツを着て、斜めに下げたショルダーバッグは、見るからに学生ですといった雰囲気の黒髪の人で、一緒に歩くのは背が高く、黒い服を身に着け肌の白さが異様に目立つ。
そのマスクの下には小綺麗な顔が隠れている事を先日拝見してしまったので、知っている。
対照的な雰囲気の違う二人が並ぶと、存外目立つ。
腐男子仕様のフィルターがかかっているからなのか知らないが。
距離が近づくにつれて、伊達の胸も高鳴る。
相合傘してるし、しっかり今度は見れた、手繋いでる…。
雨の中、繋いだ手を仲良さげに振って歩いている、…尊い。
また会えて、というかお目にかかれて眼福です。またのご来店を心よりお待ちしております、と心のなかで合掌しながらすれ違う。
「幸せそうだなっみたか、伊達氏、」
「先輩、危ないんで前見てください」
人が興奮してるのをみると、逆に落ち着いてしまうもんなんだな、と明石をみて一気に冷静になった伊達。
……………。
「せんぱい!」
何時までもすれ違ったカップルを目で追っている明石を伊達は大きめの声で呼んだ。
「…ああ。失礼した、俺としたことが、不躾な視線をおくってしまったな」
少し歩くと、辺り一帯は暗いのに、一際明るく灯っている場所が視界に入った。
コンビニの前までやってきた時、何とか辿り着けた事に伊達はホッと胸を撫で下ろした。
伊達は頭のどこかでフラグと言う単語から意識をそらしていた。
「先輩、先帰ってください」
「いや、少し電話をしようと思う」
ポケットから端末を取り出して、どこかへ連絡し始めた。そんな明石に「俺傘買ってきます」と一応伝えてからコンビニに入る。
レジに並んでいると、店内にいた客の声が通り過ぎ様耳に入る。
「停電とかマジかよ」
「これ復旧すぐするよね?」
「困るー」
「え…電車大丈夫…?ヤバくね」
運転見合わせ。という声が聞こえ、先輩の方を咄嗟に見た。
後ろ姿が見えて、まだ誰かと通話中らしかった。
混んでいた為、少し待たせてしまった。先輩に買った肉まんを渡す。
「これ、よかったら…食べてください」
「おお、遠慮なく頂くとしよう。礼を言うぞ伊達氏」
嬉しそうに喋りながら袋を開け、齧り付く明石に、平然としているが大丈夫なんだろうか、と伊達は思った。
「…先輩、帰り俺が言うのも何ですが、大丈夫ですか?」
「ああ、電車か?心配せずとも少し歩けば着く。それより君は大丈夫か?」
「俺は…バスなんで…たぶん」
「もう混んでるんじゃないか?」
「…そうですね…待つかもな」
「乗り場まで付き合おう」
「え…」
そこまでは悪いんでいいです、と伊達は断った。
混んでたとしても臨時でバスも来るはずだし。何とかなる…はずだ。




