22話
雨だ。
軒下で雨宿りをしていた。
ある日のバイト終わり、店から少し歩いた所で天気が怪しくなってきた。
ゴロゴロと鳴る空模様。
伊達は今日、傘を持っていない。
一分もたたないうちに土砂降りになった。
大粒の雨が地面に叩きつけられる様をしばらく見ていた伊達。
通りかかった明石に見つかり、なぜか二人並んで相合傘。
「何この状況…」
できるなら、俺以外で見たいシチュエーション…。いや、そんな"相合傘"という感じでは全くないけど。
「何か言ったか?」
「いいえ、何も…!」
雨音が大きくて、案外声を張り上げなければよく聞こえない。
明石の差す傘の下、伊達は叩きつける雨音を聞きながら、こうなる前のやりとりを少しだけ思い出す。
「――こんな所で何をしているんだ、伊達氏。雨宿りか?」
「あ、いえ…気にせず行って下さい」
瞬時に一緒に帰る流れになりそうだと感じ取った伊達は受け流そうとした。しかし相手は明石だ。
「そうか、しかしあれだな、昨今の雨には参ったものだ。如何せん急だからな、天気予報も当てにならん」
「…何で、こっち来るんですか…、帰らないんですか…」
隣にやって来て傘をたたむ明石。
「愚問だな。雨の日に目の前で小さな猫なしい犬が独り鳴いていたら、伊達氏、君はどうする?そのまま通り過ぎていくか?足を止めるか、どっちだ」
「…わかりません。今のとこ遭遇したことないんで」
一瞬まくろの顔が浮かんだ。
しかし口から出た自分の言葉が思いのほか冷たくて、何だか笑えた。
先輩の脈絡の無さはいつもの事なのに。
足元の鉢に植えられた花を見ながら伊達が自嘲していると、明石が言った。
「そう言われれば、俺も無い。よくある子猫を拾う攻めの描写にずぶ濡れになって帰ってきて、そこから猫との共同生活を経て、しばらくした後、受けと出会い共に猫を愛でていくことになるんだが…」
「センパイ、…帰らないんですか?」
「帰るとも。どうだ、途中まで一緒に」
「遠慮します」
「なぜだ?やはり誰か迎えを待っているのか?では俺もここで雨宿りしよう」
なんでそうなるんですか、という言葉を飲み込む。伊達は考える。
一人であれば気長にしばらく様子見できるが、先輩がいる。付き合わせるのも何か違うし…
ここで雨宿りするよりも、途中まで入れてもらい、何処かで傘を調達すればいいのでは?
少し歩けばコンビニもある。
「あの、センパイ…途中まで、コンビニまで一緒に行ってくれませんか?」
その瞬間、ずっと鳴り響いていた雷がまた何処かに落ちる轟音がした。




