19話
閉店後。ロッカールーム前で伊達は明石を待っていた。
明石が先に入り着替えた方がいいんじゃないかと入る前に思い立ったからだ。
それを確認するため待っていた。
…服に付いたまくろの毛が原因なら、俺が先に入るよりもいいと思うんだよな。今日はなるべく近づかないよう心掛けたつもりだけど…営業前に見た先輩の眼、赤かったし…。
壁に背中を預け待っていると、明石がやって来た。
伊達を見て「何をしている?」と訊いてきた。
「センパイを待ってたんです、あの」
「幻聴か、今伊達氏の口から『先輩を待ってたんです』と聞こえた気が…」
近寄る明石に一歩下がる伊達。
「…言いました」
「俺のツボを心得ているな、感心するぞ。是非とも目の前で相手と共にもう一度見せてくれないか」
「あの、どうしますか?先に入って着替えます…?」
「それを言うために待っていたのか…何、気にする事は無い、さあ共に入るぞ」
そう言うと明石は伊達の腕を引っ張りロッカールームへ入った。
「え、ちょ…」
…大丈夫なのか…?
いいから、という明石の言葉に半信半疑で着替え始める。ロッカーを開け、服を取り出した瞬間。
「ぶえっくしゅッ」
全然大丈夫じゃないじゃん…
聞こえたくしゃみに、伊達は気遣う気持ちでそっとロッカーを閉め出ようとする。
「何処へ行く」
………。
「俺、外で着替えますね」
「何故だ、俺は構わないぞ…」
「俺が心配なだけなんで、気にしないで下さい」
「む、そう言われると…伊達氏ありがとう。しかし平気だ、もう着替え終わった」
安心しろ、と何故か笑顔で言うと「じゃあな、先に失礼する」と鼻に詰め物をしたまま出ていった。
閉まった扉を伊達はしばらく見ていたが、そのうちシャツのボタンに手をかけ着替え始めた。
……あ。そうだ、遥にお土産買って帰らなきゃ…
…先輩って意外と意地っ張りだよな。
何時も喋り倒す明石が通常よりもあっさり出ていった事に、少しだけ物足りなさを感じた気がした。




