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fudanshi  作者: 真砂木
16/24

16話

 結局、久々汰はゲロった。

 特製の抱き枕カバーになっている、らしい、と。


 「そっか、くー兄…その筋の人と仲いいから何でも知ってるんだね」


 伊達の言葉にソファで座りながら返事をかろうじてする久々汰。


「…、ああ。…ブフっ」


 興奮冷めやらぬまま、止まらない鼻血をティッシュで押さえ、上を向く残念な美形、久々汰。


 …普通にアイス食べさせただけなのに…いや、少しだけ…、よくお邪魔する創作サイトを参考にさせてもらった…

 そこに描かれてるキャラが、くー兄に瓜二つ、というか良く似て…激似だ。


 思わず試してみたが、恥じらいを捨ててやった甲斐があった。

 伊達は思いの外うまく聞き出せて、24時間以内に破棄する約束もしたのでご満悦だ。


「よし、確認も出来たし、まくろにも会えたから、俺帰るね」

 「え、待って一沙樹」

 「上向いてなきゃ、またぶり返すよ?」

 「うん…ってそうじゃなくて、やだ。帰らないで」

 「俺も帰りたくないけど…バイトあるし、お金稼がなきゃ」


 …腐活の為、萌えを頂くにもお金が要るんだ


 「それに、くー兄も忙しいでしょ。ほんとは」


 実は久々汰の方がきっと忙しい日々を送っているはずなのだ。

 今日だって、寮から帰ってきて、確か会うのは三週間ぶりだ。

 委員会に、進学の準備、そしてもうすでに自ら稼ぎ口も作っているみたいだし。


 学校で配布された、校内新聞をくれたりして、伊達が久々汰の通う学校事情に意外と詳しいのは、また別の話。


「隈、出来てるよ…ちゃんと寝てね…」


 目の下、ややお疲れ気味の目元を優しく撫でる。

 久々汰の事を少なからず伊達は尊敬していた。身近すぎる存在故にその事を時々忘れそうになる。

 本人がそれを感じさせないのもあるが。

 こうして自分の為に時間を割いてくれている、ということを伊達なりに理解していた。


 だからこそ、長居は出来ない。したくても出来ない、といった所である。


 「一沙樹、卒業したら俺と一緒に棲も?それで俺と…け、けけ、」

 「え、やだ」

 「秒速で断…ぐっダメージが、うう゛」


 少しぐらい考えてくれても…と鼻にティッシュを詰めて俯いている。久々汰の残念な姿。

 「面白いね、くー兄」

 「本気なのに…俺は毎日でも一沙樹の事見ていられるのに。考えてよ、一沙樹」


 伊達を真っすぐ見つめ手を握る久々汰。そんな風にされても冷静な伊達。

 このやり取りは何回目だろうか。


 そんな風に約束して、縛っておく気はない。…簡単にこたえられないし、割と本気で言ってるような気もするし。どのくらい本気かはわからないが…。

 毎日見ていられるのは…ほんとだろうな…変な所で確信が持てるのがやだ…


 でも今はここから出る事が先だ。


 「くー兄、俺くー兄の事"好き"だよ、それじゃだめ?」

 「ずる、い」


 "好き"、という言葉を吐くときだけ、伊達の表情が僅かにはにかんで久々汰の心を射止めた。


 ◆


 久々汰の肩に器用に座るまくろに手を振る。


 「バイバイ、まくろ」

 「一沙樹のバイバイはいつ聞いてもいいな」

 「なんだそれ…じゃあ、また来るね」

 「あ、そうだ一沙樹。来月文化祭があるから…良かったら来ない?」

 ……え、

 「行くっ!」

 「そんなに目を煌やかせて…可愛いっ」

 「おっと、バイバイくー兄。詳しいこと、また後で連絡してね。楽しみにしてる」


 ハグしようとしてきた腕を避けて素早い身のこなしで遠ざかる。


 「つれない…でも、好きっあ、今度チャイナ服着てくれないか訊くの忘れた」と背後からきこえたきがした。



 最後の方は幻聴だと思いたい。


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