15話
パシャパシャと顔を洗い、ふかふかのタオルで顔を包む。
柑橘系の香りに癒される。
…くー兄の匂いがして、落ち着く。
さっぱりした後、後ろを向くと、扉の入り口にお行儀よく座って伊達を見るまくろが居た。そんな光景にに頬がゆるむ。
この後食べれる甘味を想像して伊達の機嫌はこの日最高潮に達した。
「――おいしいっ」
溶けてコクのある豊潤なバニラの味わい、美味しいとしかいいようがない。
伊達は今アイスに夢中だ。ちなみにまくろはスヤスヤ眠りの中。
ご飯を食べるまくろに癒された後、久々汰の入れてくれた抹茶と限定生チョコを頂いて、また甘いものを摂取している。
そんな伊達の横で言いつけを守り、遠隔操作でシャッターをきる久々汰。
しかし撮られながら、伊達はこんもりバニラアイスを盛ったスプーンを口に運ぶと思った。
くー兄はああして一緒に写っているけど、あれ…もしかして、後からいくらでも加工出来るんじゃ…
はかられた…
スプーンを持つ手で頭にあちゃーと手を当てる伊達。
何もかも今更だと当人以外が見れば思うのだろうが。結局納得するのは本人次第なのである。もぐもぐと味わいながら対策を諦めず考える。
「ねえ…、くー兄」
「何?一沙樹」
「俺に、プライベートは無いの?」
「きゅ、急に…な、何の事だか、はは」
「……最近も、あったんだ、例の人から」
「へ、へえ。そう、どんな…?」
目を泳がせ、白々しく訊いてくる久々汰に合わせて伊達も、あえて知らないフリをして返す。
「うっかり忘れものをした時、何故か新品で名前入りの、サイズもピッタリな体操着の入った袋が机に掛けられてあったり、お風呂のシャンプー買い忘れたのに気付いて、夜出掛けようとしたら、いつも使ってるのと同じのが玄関先に置いてあったり、他にも…まあ、"助かって"はいるんだけど」
そう言って久々汰の顔を見ると、目を反らしながら口元を引き締めている。
僅かに上がる口角が色々と隠しきれていない。
「ふーん、そうか…」
「この間は、友達の家で流れでワンピース、試着することになって…そしたらいつもみたいに手紙が入ってて、消すようお願いしたけど…あの時のデータ、ちゃんと消してくれたかな……?」
「…………消したんじゃないか…?」
「…流石に、友達の家までとなると、俺も黙ってられないし」
「………」
「ねえ、くー兄。どう思う?」
「…引き伸ばして壁には張ってないと思う、…プリントして終わった後消した、と思います。…あくまで想像でだけど」
「そっか。…プリントって何?」
「…さあ……、…」
「…くー兄、アイス、食べる?」
こてんと首を少し傾けアイスを乗っけたスプーンを口元へ持っていく。
久々汰は無反応だが目だけはこちらをしっかり見ているので、続けて「ハイ、あーん」と開くよう促す。
あざといと声が聞こえるが、これが久々汰には効く、はずだ…たぶん。
こうなれば…アイスの力で割ってみせよう…、その口。ふふふ
と目論む伊達。アイスじゃなく、どれだけやれるか伊達の力にかかっているのだが、本人は知る由もない。
そこら辺は無自覚でたちが悪い。
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