14話
「か、かわいい…桃色のほっぺが…顔色いいな、寝不足で気だるげなのも良いが…やはり本来の愛らしさが倍増されて…あのデカブツに少し感謝だな…、いや一沙樹と学校生活を共にして放課後制服デートにあまつさえ女性の服を着させ間近で拝むなど、うらやま…んん゛っ…」
……何か、うるさい…折角、気持ちよく寝てたのに。まくろが起きる…
「眉が寄ってる…起きた?一沙樹。一沙樹の好きな限定生チョコ。取り寄せてあるから、起きたら後で食べようね」
…ううん…好きな限定、…ん?…
ちょこってあのお店の?もしそうなら
「いま、たべる…」
食べ物につられて起きる。
我ながらどうかと思うが食べてみよ、誰にも文句は言わせない。
広がるカカオの香りと中の生クリームと合わさった濃厚口溶けに桃のような後味は、まさにやみつきになる事間違いなし。食べてみよ。
目を擦りながら久々汰の服の端を掴む。
「起きた、くー兄」
「擦ったらだめだよ、顔洗ってきて」
そんな子どもっぽい仕草に久々汰が癒されている事を知らない伊達。
優しい声で手を掴まれて眼から離される。
「うん…先に食べちゃだめだよ。ぜったい」
「…信用ないなあ、待ってるよ。ちゃんと」
「待ってて」
「そう何度も言われると、食べろっていう振りに聞こえるよ。一沙樹」
「違うから。顔洗うまでそのままで居てね、くー兄」
どうしよっかな、という声を背に戻ってなくなってたらどうしよう、と要らぬ心配をする伊達は相当食い意地がはっている。
そんな姿を見て、ぷっと久々汰は吹き出す。この一面は久々汰だから見れる。他にも数人いる事はいるが。
一沙樹を堪能する事が許されるのは今、この瞬間は、自分だけだ。
過ごした年月が違うのだ、他とは。
いつの間にか目覚めて、一沙樹の後を追うまくろを付き従えて、顔を洗いに行くその眠たげな背中を見送る。




