10話
久しく見ていなかった学ラン。伊達は頬を緩ませ手を挙げた。
「遥!」
「久しぶり、いーくん」
「待たせた?」
「今来たとこ」
「そっか…行くか。そう言えば、何で制服?」
「コレは…昨日友達の家に泊まってそのままここに来た、から?」
「…」
バイト帰り、家の近所にある公園で二人は待ち合わせをしていた。
これから食材を買い足しに出かける所だ。
元気だったか、などとお互いの近況を喋っているとき、何気なく遥が言った。
「いー君、オレ原チャリの免許取った」
「…遥何歳だっけ」
「もうすぐ14」
「確か…取れるの16、俺の年から」
「うん、先輩の本免に合格した」
「……危ないことはするなよ」
「うん、今度乗せるね」
「遥…」
「何?」
どう言えば伝わるだろうか、と考えて伊達は立ち止まる。
そんな伊達に気づき振り向いた遥と目が合う。
遥は俺の事を信頼して気を張らず何でも話してくれてる、とは思う。そういう存在でありたい。けど。
遥のことをある程度、信じているけど…言わないと、伝わらない事もあると思う。
「俺、遥が心配…。遥が元気でいれば、何も言わない。けど、そうじゃなくなったら泣く。ご飯も喉を通らない…ほんとに」
伊達と背丈はほぼ同じで、学ランを着てはいるが中身が小学生の子どもに話しかける。
「……、車は?くるまだったらいい?」
「よくありません」
「……」
「今俺が言ったこと、おぼえて」
「車はよくない…」
「その前」
「オレが元気だと、ご飯が美味しく食べれる…」
何かちょっと違うけど、その通りなので伊達は頷いた。そしてまた話しかける。
「そう。もし…俺が、事故ったり怪我したら、遥はどう思う…?」
「やだ」
即答した遥に、それと同じだと伊達は伝える。
「俺、ずっと遥に元気でいて欲しい。こうやって、一緒にご飯作ったり食べたり、これからもしたい。だから…大切にして欲しい、自分の事」
「……」
無言なのは考えてる証拠だな、良いことだと人知れず頷く伊達。
「…死ぬ気で回避する」
「何か言った?」
「うん、危ない事はしない」
「…」
遥の聞き分けが良すぎるのが逆に怪しい…
スーパーの中に入り、目の前の品を見ている内にそれも隅へと追いやられて行く。
後でもう一度念押しをしておこう。
決めていたのに、結局伊達は伝え忘れた。




