1話
笑みを浮かべて、テーブルへご案内する。
「お決まりになりましたらお呼びください」
平日の店内はいつもよりすいていた。
バイト先の小さなレストランは勤め始めてそろそろ半年が経つ。
「ありがとうございました」
出ていくお客さまをお見送りし、もしかしたら早く上がれるかもという期待をして、業務に戻った。
しばらくすると、徐々に混み合ってきた。いそがしく動き回っていると、新規が来店し出迎える。
その二人の姿を捉えたとき、一瞬伊達の息が詰まる。心の中が騒々しいが、平静を装い対応した。
「いらっしゃいませ、宜しければ、傘お預かり致します」
傘を預かり、席へとご案内する。
伊達はみた。お迎えする際、繋がれていた手を。しかも、預かった傘は、ひとつしか使用されておらず、もう片方は一滴も濡れていない。
刮目せよ。
相合傘、されてここまで来られたんですね…。
顔の微笑みがとまらない。
おかげで退勤するまで優しい気持ちで接客できそうだ。なんて、無敵オーラにあやかっていたら、入り口の鈴が鳴り、新たなお客さまが来たことを知らせた。
出迎えに行くとバイトの先輩、明石がいた。…確か今日は休みだったはずだ。
「え、センパイどうしたんですか?」
「ああ、シフト確認するのを忘れてな…。来たついでに食事も、と思った次第だ」
そうですか、といいながら伊達は、外との寒暖差で曇りきった明石の眼鏡を見えてんのかな、と凝視しつつ、こちらへどうぞ、とあいてる席へ案内した。
先程のカップルの出来上がった料理をテーブルに運ぶ。
「失礼します。お待たせ致しました、オムライスとハンバーグでございます」
笑顔で料理を置くと、「ありがとう」と仰られたので、ごゆっくりとスマイルとお辞儀をして席を離れる。
背を向けてすぐ、「半分こ」と聞こえ、今すぐ振り向いてその様子を見たい衝動にかられたが、理性でなんとかおさえる。
ああ、隣の席に座って傍観者になりたい。
立ち止まりそうになる足を動かして、明石にも水を届ける。
「お水置きますね」
「ああ、ありがとう」
返事はしたが、下を向いて何かを熱心に書いているようだ。
注文を聞き、出来たサンドイッチとナポリタンを明石の席へ運んで、失礼しますと踵をかえそうとしたが引き留められた。
相変わらず曇った眼鏡で自分の料理を見たまま伊達に喋ってくる。
「伊達氏、あのカップルは俺の幻想か」
「存在してるとおもいます」
「…ああ、神からのプレゼントに感謝する。ああ直視したい、だが出来ない…あの天国の花園では一体どんな展開を繰り広…、待て、伊達氏。…今日、共に帰るぞ」
断ろうと口をひらく前に呼びベルがなる。
「待っている」と明石が伊達を見て言った。




