少女A
椎名もた様の『少女A』をもとにした作品となっております!
聞いたことがない人はそちらを聞いてから読んでみると違った楽しみ方ができるかもしれません。
解釈違いがあったらそういう風に感じる人もいるんだなー程度で読んでくれると幸いです。
ビルから漏れ出る機械的な光や、街を彩る淡いカラフルな光が暗い夜を照らしている。
_…はずなのだけれど。
僕の視界は真っ暗で、落ち込んだ気分は浮き上がることなく、その暗さに沈んでいく。
机の上には書き途中の原稿用紙が散乱していて、先ほど投げやりになって床に放り投げられたペンが、インクを垂らしながら寝そべっている。
本棚を見上げため息を吐き、考える。「この物語を作った人も、かつては僕のようだったのか」と。
16歳で小説家を目指そうと頑張ってきて、今に至るのだけれど。周りの大人からは僕が求めている言葉が一つもその口から出てこない。「まともな職に就け」や「ふざけてるの?」など、小説家を馬鹿にしたような言葉ばかりが耳に届く。
なんで僕には小説家にならせてくれないのだろうか。世の中には本の数だけ小説家がいるというのに。世界の大体は不公平だ。小説家になりたいという意思が同じなら、他の人と同じように小説が書ける最低限の環境を用意してほしい。そんな傲慢な気持ちがあるから、僕はいつもこうなのだろうか。
暗い視界と雨粒が地面に落ちる音を聞いていると、なんだか無性に寂しい気持ちになってくる。今まで書いてきた小説を読んで、僕は今までこれだけ書いてきたんだと、その事実に肩を預けてまた暗い世界に戻っていく。
_どうしよう。
一歩ずつでも進んでいかないといけないのに、いろいろな足枷で体が動かせない。
『大丈夫だよ、何とかなるって』
むなしく終わる愛を、腐るほど長くしがみついてくる憎しみを、大人からの希望も夢もない言葉を、君はなんでそんな簡単に飲み込んで受け入れられるの。なんで澄ました顔で微笑むの。
自分の気持ちを、伝えたくて小説を書いてみても、抽象的で曖昧な言葉選びしかできずに余計彼らを刺激してしまうだけだから。君にだけ、僕の本心は伝わってくれればいい。
「小説家…?やめときなよ」
「才能ないって、順位四十七位じゃん。無理だよ。」
「もっと他に向いてるのあると思うよ?」
道端にどんどん落としてきたこれまでの出来事を拾っていくにつれ、胸が締め付けられていくような気持ちになる。この『夢』が間違いであると、周りからの言葉によって定義づけられているような感じがする。頭ではそんなことないと、合っていると思っても体がどんどん後ろにのけぞっていく。
_間違えたのかな。
「まだ若いんだから、躓いたって、」
つい前まで否定してきていた人たちが、今後の自分の人生に対して何か言ってきたところで、何か響くといえばそんなことはなくて。その代わり、ちょっとした嫌悪感と不安な気持ちが頭の中に薄い膜を張っているようで無性に落ち着かない。
_あなたたちがあんなこと言ってきたから、気を取られて躓いたんだよ。
_怖い、来ないで。
いろんな気持ちが押し寄せてきて、制御できずに頭から滝のように全部出てきてしまいそうな感覚に襲われる。
「…言い寄ってこないで」
苦しく不安に包み込まれている僕の体をそっと抱きしめてくれるような、君の声がした。
「大丈夫だよ、何とかなるって」
慰めてくれる君の声がどんどん遠くに行ってしまう。その声を求めて歩いていく。
「もうやめたら?」
求めて歩いていた足を止める。耳を疑ったが、もう一度その言葉は君の声で発せられた。
_なんでそんなこと言うの?
君も、僕が望んでいる言葉を聞かせてくれないの。
「向いてないんじゃなっ」
最後まで聞こえなかったことが不幸中の幸いなのだろうか。
いや、既に取り返しのつかないところまでメンタルは沈んでいる。唯一の味方だと、僕のヒーローだと思っていた君まで、僕の夢を間違いだと言うの。
一番じゃなくても、四十七位だとしても、僕が僕であるために、必要…なんだよね?
あの日から数日経って、最近は原稿用紙と向き合う時間が極端に減った。
大人たちの言葉が日に日に鋭さを増していき、精神が限界を迎えそうだったのもあるが、『君』が僕の夢を否定してきたことで、余計にメンタルが沈んでしまったからだ。
布団に寝っ転がり、天井と見つめあいながら考える。
_僕の夢は本当に間違いなのか。
これを認めて飲み込むのは、あまりにも鬼畜で苦しい。それなのに君は今もなお、周りからの評価や言葉を気にせず受け入れ飲み込んでいる。
自分自身に嘘を吐き、大丈夫だと安心させる。この夢は続けていいと、改めて自分で納得させる。
_もう、大人たちに期待するのはやめよう。
今まで、会話をしていればいつかきっと、この夢を認めてくれる日が来るとそう信じていた。でも、もう無理なんだ。確信づいた言葉などは明確にはないが、今ふとそう思った。
遠い夢を追いかける。
しかし、大人たちの邪魔や自分自身の葛藤に阻まれ、周りの成長や時代に追いつけない。
やっとみんなと同じ土台に立てると思っていたのに、僕がどうこうしている間にみんな次の舞台に上がってしまったみたいだ。
頭がぐらついた。必死に手を伸ばしながら走っても、追いつけないその早さと遠さを実感し、絶望する。
その瞬間、諦めきったと思っていた大人たちへの憎しみが身体中を蝕む。
あいつらのせいで、こんなにもみんなと距離があるんだ。
あいつらがつけた足枷が、僕を阻むんだ。僕を呪ったあいつらを、僕は許せない。
「許されないよ、」
ポツリと、一人取り残された道端で呟く。ずっと目指してきた夢が、すぐ近くにまであった夢が、こんなにも遠い。
ただひたすらに走って、走って、走り続けて。
足枷も取れて、やっと忘れられそうだったその時。
「…ぁ」
遠くにあるときはあんなに小さかった夢が、改めてすぐ近くにあるのを目の当たりにすると、その規模はあまりにも膨大で、到底一人では抱えられない大きさだった。
僕を蝕む呪いが、そのちょっとした恐怖心から増殖していく。ずっと目指してきたその『夢』は、自分自身に圧し掛かる『プレッシャー』となり、過去の自分を苦しめた『間違い』として脳が認識し始めた。
違うんだと、僕が、今まで色々なことを犠牲にしてまでつかもうとしてきた僕の宝なのだと思いながら近づこうとするが、体が拒絶し動いてくれない。
「何?まだやってるの?」
聞き覚えのある嫌味な声が聞こえる。周りを見渡しても僕しかいない。
_頭から流れてる…?
夢をつかもうとしている時、毎日のように聞こえてきていた言葉。
身体が固まり、動けなくなる。
_怖い。
すぐそこに、『夢』があるはずなのに。頭が怖いで支配される。脳内から聞こえる声に対してではない。そこにある『夢』に対してだ。
「近づかないで!」
圧迫感のある大きなその物体は、もちろん動くはずはないのだが。
それでも、言わずにはいられなかった。声を荒げでもしないと、自分が自分ではなくなりそうだった。
なんでもいい、なんでもいいから、僕が僕でいられるように。
_お願い。
そこにある『夢』を背に向けて、ただひたすらそんなことをずっと願っていた。
私の個人の解釈で、『少女A』は『どこにでもいる少女』を表していると思うんですけど、彼女の一人称が「僕」なのは少し個性を出すため?というかなんというか…語彙力がなくてごめんなさい。
何はともあれ、最後まで読んでくれてありがとうございました!
曲パロもそれ以外も、時間を作って頑張っていきたいと思っていますので、どうか温かい目で見守っていてください!改めて、最後まで読んでくださってありがとうございました。




