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27、マンションの一部屋

今週の月金分です。先週の木金分は今度出します。すみません

まだ空が暗く月明かりと街灯だけが頼りの中、私は麗奈の住んでいるマンションの前まで来ていた。二階建ての小さなマンション。少し錆びれた階段を上り、麗奈が立ち止まった所で私も足を止める。麗奈が部屋の鍵をポケットから取り出すと、鍵を開けて私を部屋に招いてくれた。


「入っていいわよ。少し狭いけど」

「...お邪魔します」


部屋の中に入ると、最初にキッチンが来て、そこを抜けると、色んなものがきちんと整頓された綺麗な部屋があった。


「あんた、家に帰らなくて本当によかったの」

「うん」

「...そう。それじゃあ、あんまりもてなせないけどゆっくりしていって。服はそこにかけてくれたらいいから」


麗奈はそう言うと、キッチンの方に歩いて行った。

気を使われたけど、本当にあの家にはあまり帰りたくない。口には出してなくても、麗奈もそれとなくわかってくれたと思う。

気がつくと湯気の出たコップを両手に持って、麗奈が私の目の前まで来ていた。


「飲み物はハーブティーかココアだったらどっちがいい」

「ココアで」


私が言うと、麗奈は持っていた片方の方を私に出して、残った方をゆっくりと飲んでいた。

渡されたコップからは湯気が立ち上り、甘い香りが漂っていた。1口飲むと、身体中が温まって心も温まったようだった。


『〜日の戦果発...す。我〜軍は先週から行われたマルイカムイ島泊地の占領に成功しました。被害は軽微。敵は一刻と降伏に近づいているでしょう』

「...」


麗奈がラジオの電源をつけると、ノイズと戦記発表をする大きな声が流れてきた。

所々抽象的だったり思うところがある。

前を向くと、麗奈が神妙そうな顔でラジオを聴いていた。


「それで、...何があったの」

「え、」

「悩んでることあるでしょ。私に言いなさいよ」


麗奈は持っていたコップを置いて、真剣な顔で私を見てきた。麗奈の目が私の奥底を覗くように、視線がずっと私に突き刺さっていた。


「ん〜、なんだろう。胸の中でモヤモヤしたものがあるんだけど、それが何なのかよく分からないんだよね」

「自分のせいで死なせたとか、」

「...そういうのもあるとは思うんだ。だけど、それだけじゃないっていうか」


頭の中に目の前で死んだ人の顔が思い浮かんできた。

だけど、死んだ時は本当に心にきてたはずなのに、今はそこまで少しくる位。

多分原因が他にあることも分かるし、麗奈にはああ言ったけど、何となく中身もわかってる。だけどそれを麗奈に言っていいのか。本当に相談していいのか。そう思う私がいた。


「じゃあ、艦長の仕事が忙しいとか人間関係?」

「仕事はちゃんと出来てると思うよ。人間関係は、...多分大丈夫」

「ほんと?」


麗奈の言うことは、殆ど的を得ていた。私が悩んでいた事を麗奈は殆ど言い当てた。それでも、私は心配してくれる麗奈に言うのは申し訳なかった。


「そんなに私できてなさそう」

「うん」

「...ふっ、やっぱり麗奈は変わんないね」


麗奈は昔からそう。思ったことはズバッと言うし、困ってる人がいたら助けてくれる。それでいて、何にでも自信を持っていて、本当に今でもそれは変わらない。そんな姿を昔からずっと見てきた。


「そうでもないわよ。私も色々と変わったわよ」

「?」


麗奈はそう言うと、どこか遠い所を眺めていた。一瞬だったけど、その時の麗奈の表情はどこか悲しそうだった。


「...ふぅー、そういえばシャワーはどっちから入る」

「ん〜、麗奈からでいいよ。私はラジオでも聞いてるから」

「そう、それじゃあ先に入るわね」


そう言うと、麗奈は立ち上がって机に置いてあった資料を整理し始めた。

私がゆっくりココアを飲みながらラジオを聴いていると、足に何か当たったような感覚がした。

その方を向くと、裏返しになった紙が私の足に当たっていた。取ろうと手を伸ばし、何が書いてあるのか見ようとすると、麗奈が無理矢理私の手から紙を奪い取った。


「えっ、」

「...ごめん。見せられない紙だから見ないで」

「あぁ、うん。こっちこそごめん」


絶妙な空気が部屋の中に漂う。

麗奈は持っていた紙と私から取った紙を棚にしまって、風呂場に行ってしまった。

部屋に取り残された私は、今のは何だったのだろうと心にモヤモヤとした気持ちが残って取れなかった。

部屋の中ではラジオから流れてくるニュースの音とシャワーの音だけが響いていた。


「...」


麗奈が隠した紙がなんだったのか、気になって頭に残っていた。しまった本棚を眺めていると、軍関連の本がほとんどだった。

多分軍事機密の紙だったんだと思う。そう頭の中で答えを出して、ラジオを聴きながら麗奈がシャワーを浴び終えるのを待った。だけど、その数十分はいつもより少し長く感じた。


「上がったわよ」

「じゃあ、...私も入るね」


私は重い腰を上げて、浴室に向かった。

扉を開けると、中はまだ熱気が籠っていて、落ち着くいい匂いもした。

そんな事を思いながら、私はシャワーを頭から被った。戦いが終わってからもずっと休めたような気がしなかった。だけど今日は麗奈と会って、久しぶりに休めた気がした。

考え事をしながらシャワーに当たっていると、どれぐらい経ったか分からないけど、相当浴びてた気がする。

私は慌てて身体を洗い終えると、急いで浴室から出た。


「ん?」


浴室を出ると、廊下の電気はついていたけど、部屋の電気が消えていた。部屋の方を見ると、机が避けられて、布団が敷いてあるのが見えた。目の前を見ると、バスタオルと着替えが置いてあった。

そんなに長く入ってたんだなと思いながら、バスタオルで体を拭いて、置かれていた服に着替えた。

部屋に行くと、麗奈が布団の方で眠っていた。やっぱり麗奈は変わらないなと思いながら、麗奈の善意に甘えて電気を消して、ベッドで眠りについた。

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