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3、集結

私が鏡の前に立って数十分経った。一昨日に陸人と会って話したこと、みんながどんな気持ちで戦っていて、どうしたらいいのか、その日はわかった気がしていた。それでもいざ、空母の中で作戦が始まるのを待っていると、不安と死にたくないという気持ちが溢れてきた。だからといって逃げていい訳でもない、それに私には艦長としての責任があった。唯一休憩できるのは、この艦長室だけ。それでも、次には自分の不安の気持ちが出てくる。そんなことを思いながら、鏡の前に立っていると時間が刻刻と過ぎていく。

すると、廊下の方から歩いてくる音が聞こえてきて、ドアがノックされる。


「どうぞ」

「艦長。もうそろ準備できますよ」

「わかった、今行く。田中は外で待ってろ」

「は〜い」


私は副官の田中を部屋の外に出すと、コートスタンドにかかった、黒い制服を手に取った。白いシャツの上から制服を羽織り、ボタンを閉めていく。制服の中に入った髪の毛を襟の外に出すと、肩まである白色の髪が窓から入った光で、神々しく銀色のように光った。かかってる黒い制帽を手に取って、頭に深く被り、鏡の前で身だしなみを整えた。準備も出来て、行く前に机にある水を飲み切ろうと、コップを手に取ると、手が震えて途中で落としてしまった。


「あっ、」

「音したけど大丈夫ですか?」

「大丈夫。すぐ片付けるから外にいて」


私は近くにあった白い布を使って、机にこぼれた水を拭き取った。床にこぼれた水は、拭くかどうか迷ったけど、拭くと布が汚れるし、すぐに行かないと行けなかったので、拭かずにそのままにして、使った布を机に置いた。田中が待っているのでドアを開け、周りを確認する。左を見るとドアの近くの壁に寄りかかってる田中が居た。


「田中。行くよ」

「は〜い」


艦橋に向かって通路を歩いていく。何回も人と出会っては、道の端に避けて、私に敬礼してくる。それは目上の人に対して、当たり前のことだけど、今の状態だと、更なるプレッシャーが私にかかった。通路を歩いて、階段を上ってを繰り返すと、やっと艦橋に着いた。


「艦長。航空機全機出撃可能です」

「こちらも兵装の最終点検全て終わりました」

「機関の準備も出来てるようです。いつでも出港できます」


艦橋に入ると、私を待っていた航空長と砲術長、航海長が、現在の艦の状況について報告してきた。艦の準備は全てできている。艦内の雰囲気は、乗組員がみんなそれぞれ話し合い、最後になるかもしれない故郷を惜しみ、憎き敵国と最後まで戦うという気が合わさっていた。


「旗艦から何か報告は来ているか」

「まだ来ていません」


しかし、そんな状態が続いていると、段々と艦内の雰囲気がピリついてくる。そんなの当たり前だ。この戦いで今までの訓練の全てが発揮される。緊張しない訳が無い。それのせいで、みんな繊細になってる。出港できるのなら出港して、今すぐにでも戦いたい。だけど、私の乗っている空母白神は旗艦じゃない。旗艦の指示があるまでは勝手に行動できないし、待つしかない。


「航空長、砲術長。再度航空機、兵装の点検を、軽くでいいから」

「またですか。もう十分に点検は、」

「何かあっても困るし。それに、出港までまだ時間がかかりそうだからね」

「...わかりました」


航空長と砲術長が艦橋から出て行った。今のままだと、みんな暴れだしそうだから、何か手を動かしてもらって、気晴らしして欲しかった。それに、万が一にも大事な場面で使えなくなったら困るからね。そんなことを思いつつ、窓の外を眺めていた。外からは、光が熱をおびて艦橋の中に入ってくる。待っている間、航海長と航海予定ルートの周りの島の位置関係や攻撃予定のマルイカムイ島の地図を見て、話し合った。時間が経ち、太陽が移動し、艦橋に光が入らなくなった頃旗艦から連絡がきた。


「艦長、旗艦から光信号。出港せよです」

「よし。出航するぞ。抜錨」

「抜錨了解。機関前進微速」


 私が号令をかけると、今か今かと待ち構えていた歯車が回り始めたかのように、みんなが一斉に動き出す。私の一声が、人を通じて、艦の隅々まで行き渡る。白神はゆっくりと、それでも力強く動き始め、前へ前へと進み始める。波をかき分け、白神は旗艦を追いかけ、前進した。集結地点は港を出て2日かかる所、マルイカムイ島はそこから5日かかる。旗艦白老を先頭に、白神も続いて、その後ろに駆逐艦が続く。単縦陣で集結地点まで移動した。海には何の影も見えず、ただただ水平線だけが広がっている。海面は太陽の光で、白く輝いていた。それはまるで別世界のように、無限に広がっているようで綺麗だった。そんな景色が目の裏に染み付いて、離れなかった。


「艦長。もう少しで集結地点のルム島です」

「やっとだね」

「そうですね」


緊張していたせいか、数日がいつもよりも何倍に感じて、正直立つのも疲れるぐらい疲れた。みんなもそれは同じようで、疲れが顔に出ていた。そんな中、双眼鏡を覗いていた田中が声をあげた。


「艦長〜。南南西から艦影多数接近中」


田中がさした方には、肉眼で見えるほど近くに艦影が見えた。手に持っていた双眼鏡で覗くと、艦影がはっきりと見え、自然と笑みがこぼれた。


「田中、あれは味方艦隊だ。第四戦隊の戦艦部隊だよ」

「なんか嬉しそうですね」

「まあね」


南方に位置する小さな孤島、ルム島。そこに帝国初となる、空母4隻を主軸とした、総勢30隻近くの艦艇を含む空母艦隊が集結した。この艦隊はマルイカムイを目指し、帝国の命運を背負って、ルム島から出撃した。

投稿する余裕がありそうだったので投稿しました。

次回はいつも通り金曜日ですが、投稿時間を9時から6時に変更してみたいと思います。1週間やってみて、次は3時に投稿してみます。1番PV数が良かった時間に変更したいと思います。

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