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25、お店

懐かしい声が聞こえて後ろを振り返ると、海軍士官学校時代の同期、麗奈が立っていた。


「あんたこんな所でなにしてるの」


少しムスッとした顔に、キリッとした目。黒髪でポニーテール姿。そして、ピシッと身に着けた海軍の黒い制服。

昔と殆ど変わっていなかった姿に、私は懐かしい気持ちになった。


「えっと、久しぶりだね。麗奈」

「挨拶は聞いてないのよ。質問に答えなさい。あなたはこんな所で何をしてるの」


麗奈はハキハキとした口調で話してきた。

私はこれといって、何をしてるかと言われても、特に何もしてないなかった。ただここら辺をフラフラと意味もなく歩いていただけ。そんなことしか頭の中に浮かんでこなかった。だからそのまま思ったことを麗奈に言うことにした。


「私はさっき宿舎から出たばっかで、ただ歩いてただけだよ」

「じゃあただ意味もなく歩いてたってこと」

「うん」

「...はぁ〜。まぁ、七海らしいちゃ、七海らしいか。これからの予定は?」


七海らしいって結構失礼なことを思われているような気もしたけど、麗奈はしぶしぶ納得したような様子だった。


「特にないかな」

「そう、だったら一緒にこれから夜ご飯行かない?食べてないでしょ」


確かに気にしていなかったけど、あの陸人との夕食以来、ちゃんと食事を取っていなかった気がする。

そう意識すると、無性にお腹が空いてきた。


「いいよ」

「じゃあ行きましょ」


麗奈はそう言うと、急に私の手を掴んで歩き始めた。そんなに速くなかったから、転ぶことはなかったけど急なことで驚いた。

麗奈はただ無言で私の手を掴んで前に歩いてく。私はそれを子供のようについて行くことしか出来なかった。

ただ歩いていると、段々と歩く先がさっきよりも賑やかに明るくなってくる。私はふと後ろを向くと、人通りがなく街灯がほとんど付いていなかった。


「ここよ」


明るく賑やかな場所を歩いていき、少し曲がった所で麗奈は立ち止まった。

顔を上げると、デカデカとなんて書かれているのか分からない漢字2字の暖簾が垂れ下がっている店だった。


「ここって、」

「さ、入るわよ」


麗奈はそのままドアを開けて、中に入って行った。

その横顔は私でもわかるぐらい、どこか嬉しそうな顔をしていた。


「あぁいらっしゃい。...っておぉ海軍の嬢ちゃんじゃねえか。久しぶりだな」

「そうね仕事があって」

「おぉなんだ、今回は可愛らしい軍人さんも一緒じゃないか」


 お店の中に入ると、どこか落ち着いた雰囲気のある内装だった。

 そこの中心、厨房からこちらを見ている元気のいいおじさんがいた。見るからにしてここの店長なのだろうけど、それを感じさせない、人当たりのよさそうな雰囲気を感じた。


「こんにちは」

「あぁいって、そんな俺はお辞儀されるほど偉い人間じゃねえんだ。楽にしてくれ。それより海軍の嬢ちゃんはいつものかい?」

「いや、メニュー表見てからにする」

「そうかい、それじゃあ空いてる席座ってくれ」


 店長が指した方向、店内には誰一人としておらず、がらんとしていた。

 どうしようか悩んでいたけど、麗奈が自然と動いていくもんで、私は後に付いていった。麗奈に付いていきテーブル席に座る。

 私は麗奈と店長の会話ぶりを見て、結構常連なんだなとそんなことを考えていた。


「これがここのメニュー表」

「あっ、ここ蕎麦屋だったんだ」


 メニュー表を見て、一番上に蕎麦と書かれていて、その横に店長オススメと書かれた文字があった。他のメニューを見ても、大体蕎麦関連のメニューばかり。まぁ今は特にこれと言って何か食べたいものでもあったわけではないから、オススメの蕎麦にすることにした。


「決まった?」

「うん」

「店長」

「は~い、何にしやすか」

「天ぷら蕎麦一つ。それと、」

「きつね蕎麦一つ」

「はい、天ぷらにきつねね」


 注文し終わると、店長は軽いステップで厨房に入っていった。ここからでも調理しているのが見えるようになっているから、下ごしらえしてるのがよくわかる。

 周りを見ても、誰も客はいないけど、テーブルであったり色んな所がきれいに整頓されているのが目に入った。

 そんなことを思っていると、ふと前から視線を感じた。前を向くと、こちらをじっと見ている麗奈がいた。

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