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23、帰投

「...十勝の攻撃は」

「報告によると、至近弾のみとのこと」


薄々わかっていた。敵は巡洋艦部隊。そんな容易に当てられるものではないと思っていた。だけど流石にこれは、この攻撃を目にした後に、今から私達も攻撃を仕掛ける。私がそこに行く訳でもないのに、背中に重りがのしかかったようだった。もしここで攻撃決めないと仲間が、今あそこで戦ってる仲間が


「艦長。甲板の修理が終わりました」

「...ありがとう。航海長、針路を風上に向けろ」

「針路を風上に向けます」


整備員が報告をしに来てくれた。私は今から攻撃に行くパイロット達と話すために、すぐに甲板に向かった。


「...」


下に降りると、昨日まで空いていた大穴が、色は少し違うものの、そこに穴があったと思わせないほど綺麗に塞がっていた。


「総員傾注!」


左を向くと、指揮官の大きな声と共に多くのパイロットが整列してこちらを向いていた。私は目の前にあった壇上に上り、周りを見渡した後、大きく息を吸った。


「敵は巡洋艦部隊だ!今敵に有効打を与えられるのは君達しかいない。今まで訓練の成果を、死んでいった仲間を、存分に発揮してくれ。君達の武勇を期待する」


言い終わると、パイロット達は強く頭を頷かせ、急いで機に向かっていた。


「西中尉」

「はい、何か」


その中にいた、隊長の西中尉を引き留めると、西中尉は急いでこちらに戻って来た。


「攻撃終了後は白神じゃなく、ツタフマヤ島の飛行場に向かって」

「わかりました!」


話終わると、西中尉は大きな声で言って、すぐに飛行機に向かって行った。


「はぁ」


やっぱりこういうことは性に合ってない。途中自分でも何を言ってるのかよく分からなかった。どこか間違えてる気もするけど、階段を登っていると段々とどうでも良くなってきた。


「艦長。またこっちで見ますか」

「あぁそうする」


艦橋に戻ると、田中がいつものように入口の近くにいた。田中に誘われ、今回も私は艦橋の横で見ることにした。ここは、中と違って飛行機が近く感じられる。それでいて指示は出しやすいし、人も多くない。白神に乗ってから、発艦や着艦の時のほとんどをここで過ごした。


「いつ見ても凄いっすよね」

「そうだね。...本当に凄い」


エンジンを響きわたらせ、空気が裂けるほどの轟音。甲板に並ばれたたくさんの飛行機は、プロペラを回して、まだかまだかと飛ぶのを待っていた。

航空長が旗を降ると、先頭にいた飛行機が動き始め、そのまま勢いよく甲板を走って、飛び立って行った。


「頑張れー!!」

「頼んだぞー!!」


飛行機が次へ次へと飛んでいくと、甲板にいた乗員がみんな大きな声を上げて、飛び立つ飛行機を見送っていった。しかし、飛行機が1機上がるごとに、私の心は辛くなった。


「私達は願うことしか出来ないよ」

「どうしたんすか、急に」

「いやただ、空母はやっぱりあまり好きになれないなって」


本当にそうだ。待ってる側は本当につらい。自分は何もすることが出来ない。ただパイロット達を信じてただ待つことしか出来ない。それが本当に、悔しいし辛かった。


「まじすか。俺はいいと思いますよ、空母」

「...田中は、パイロットに憧れてたんだもんね」

「そうですよ。やっぱかっこいいですからね」

「そうかもね」


かっこいいからか。...私も昔はこんなふうだったのかな。今でも私の中では戦艦が1番かっこいいと思うけど、もうそんな時代じゃないし。憧れてものには乗れなかったけど、今では白神も愛着が湧いてきたし。あぁいいな、陸斗。今頃戦艦かぁ。


「...戦艦いいなぁ」

「え、ちょ...艦長まずいっすよ」

「大丈夫だよ。白神に特警は乗ってないから」

「そうですけど。今度から気をつけてくださいよ。いつ見てるかわかんないすから」

「わかってる」


攻撃隊は今も隙間を開けずに飛び立って行く。私はそれをただ眺めてるだけでいた。下にいる人達の声にも慣れてきた頃、甲板にいた攻撃隊が全て居なくなり、全機発進することができた。


「航海長。帰投するぞ」

「わかりました」


艦橋に戻り、帰投する準備にかかった。航海長は机の上に広がっている地図を見て、最適航路を考えていた。


「帰投するんですか。攻撃隊は?」

「ツタフマヤ島の飛行場に向かうように言っといた。攻撃隊を発進させた空母がここに長居する必要もないからね」

「まぁ、そうですね」


私だって出来るなら一緒に敵と戦い。だけど、あの戦場に空母が行った所で、さっきの砲撃戦で結果は分かってた。攻撃隊を発進させた空母は潔く戦場から離脱した方がいいんだと思う。それが全体としても、仲間からしても1番いい。


「艦長」

「わかった。後は任せたよ」

「了解。...面舵30度だ」

「面舵30度」


空母白神は針路を変えて、自国の港に向かった。空母1隻と駆逐艦1隻が静かに戦場から離れていく。白神の背後では、今も砲撃の音と爆発音が鳴り響いていた。

次回からマルイカムイ島奇襲作戦のパイロット視点を今ある話の間に差し込みす。

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