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22、決断

本当にどうしよう。今すぐにでも離脱するべきなんだろうけど、さっき命令したばっかだし、すぐに命令変更するのも。それにみんなからどう思われるか。私は整備長と別れた後、ずっと頭の中で考えていた。


ドンッ!!!


「!!」


そんなことを考えていると、急に空気そのものを裂くような大きな音と共に強い衝撃が襲ってきた。艦は大きく揺れ、私は立つことが出来なかった。


「艦長大丈夫ですか」

「大丈夫。それよりも被害報告を急いで」

「はい!」


田中に手を貸してもらい立ち上がる。もしかして被弾した。いや、やっぱり空母で砲撃戦に参加するのが馬鹿だったんだ。何やってるんだ。みんなの命を守るんだったら、するべき事はこんなんじゃないはずなのに。


「艦長。被害報告、右舷中央に被弾し艦橋近くの高射装置が使用不能です!」

「...」


被害報告の後、艦橋にいたみんなの視線が私に集まった。艦橋は沈黙に包まれ、一瞬で時が止まったようだった。私が今すぐやるべきことは、みんなを無駄死にさせない行動は、


「面舵いっぱい。30ノットに増速し陣形から離脱する!」

「了解!」

「面舵いっぱ〜い!」


一声で艦が大きく動くのが、私の身体を伝って伝わってきた。白神は陣形から面舵を取り、離脱すると速度を上げて、戦場から離れて行った。


「後ろの駆逐艦は?」

「...ついて、きてます。冬が」

「わかった。...甲板が直るまで進路はこのまま」

「はい」


白神に随伴してきた駆逐艦2隻の内、冬しか付いてこなかった。もう片方の春は陣形についていったし。まぁ1隻でもついてきて良かったと思うべきか。それにしても、さっきの砲撃は危なかった。もしあと少しズレてたら、艦橋に直撃、今頃ここは火の海で私は、


「ふぅ〜」


考えるのはよそう。今はこの戦いで死なないようにすることだけ考えないと。


「田中」

「はい」


艦橋の横に出て、首にかけていた双眼鏡を持って私達の通った場所。今も尚戦っている仲間の艦隊を眺めた。今はただ眺めることしか出来ない。白神に飛ばされる砲撃もなくなり、謎の不足感が身体を襲う。ただ、私の視線の先は水柱が何本も何十本も立っていた。


「...」

「...」


何も喋らぬまま、私と田中は艦橋に戻った。田中はさっきの砲撃から、少し大人しくなった気がする。田中は私の事をどう思ってるんだろう。もしかしたら、私の事を憎く思っているのか、それとも何も思ってないのか。

たのもしいなんて、かっこいいなんてやっぱり私には似合わないな。田中には友達とかたくさんいそうだし、やっぱり私の事を憎く思ってるんだろうな。


「かっこ悪いですよ」

「...え、」


どういうこと。なんで急にかっこ悪いなんて。え、声には出てはいなかったと思うけど。


「どんな顔してるんですか。かっこ悪いですよ。もっとシャキッとしてください」

「...そうだね、うん。わかった」


そんな酷い顔してたのか。...でもそう思われて当然か。自分でかっこいいなんて思ったことなかったし。少しはシャキッとしないとな。艦長としての示しもあるし。


「航空長。終了出来次第パイロット達を集めて、飛行甲板に集合させるように」

「わかりました」


飛行甲板を見ていると、整備員のような人が行ったり来たりしている。その中には整備長の姿もあった。昨日の夜からつづく修復作業。本当に今直してくれてる人達、いや白神で働いてるみんなに頭が上がらないと痛感した。


「艦長。十勝が航空隊の発艦をはじめました」

「ん、」


外に出て双眼鏡であたりを見渡す。十勝は私達よりも早く西に離脱していたから、多分あの辺りに。何回も視線を行ったり来たりしていると、やっと十勝を見つけることが出来た。遠くにいてはっきりとは見えないが、何か黒い点が飛び立っていることだけはわかった。


「頼んだよ」


双眼鏡を持っていた手の力が強くなった。私は砲撃戦に参加していた時よりも、頭は落ち着いているけど、心は全く落ち着いていなかった。


「いい天気ですね」

「ん?そうだね」


天気か。確かに綺麗な青空だな。全く気づかなかった。私には田中が何を考えているのかよく分からなかった。ただ、今日はとてもいい天気であるのはよくわかった。

やっぱり週3投稿は大変なので、時間はそのままで週2投稿に戻します。

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