20、誤算
ほんとに最近やばいです。時間が全く守れない。いちよ今週の土日頑張ってみます
ドンッ!
「!!」
砲弾の音が、冷静さを削っていく。また近くに砲弾が落ちて、水柱を作られる。私の後ろで手を組む力は段々強くなり、とても痛かった。だけど、落ち着くためにはそれぐらいしないと。いやほんとに冷静になれてるか、自分でもよく分からない。
「...ちょう。艦長」
「え、ごめん。どうしたの」
「先程の件ですが航空隊の準備が出来ました。もう甲板に上げていいですか」
「あぁ、...うん。いいよ」
あぁ、くそ。頭が回らない。敵はもう目の前まで来てるのに、しっかりと指示しなきゃいけないのに。
「はぁ」
外を見ると、駆逐艦達が艦隊から離れている最中だった。煙幕をまいて敵から逃げる。距離も離れてるし多分大丈夫だろうけど、もし逃げれなかったら。砲弾がもし白神に当たったら。そんなことしか頭の中に浮かんでこなかった。
ドンッ!ドンッ!
そうだよ1度落ち着かないと。自分は白神の艦長。そう心の中で言い聞かせた。今私達に出来ることはただ、前の艦について行くだけ。そんなんだから、特にみんな誰も話さない。その時間はまるで、私のことを責めてるみたいだった。
「田中来い」
「え、はい」
「...」
「どうしたんですか」
外に出て、離れていく駆逐艦をただ眺めた。別に艦橋の中でもできるし、やっていた。ただ、自分には艦橋の中の空気が、とても重かった。いやそう思いたかった。私は逃げてるんじゃない。意味があってそうしてるんだと。
「田中」
「あっ、煙幕が」
「...何も見えなくなるね」
駆逐艦が煙幕を投下して、段々と海に白い煙が立ちこめていく。敵の艦影は水平線の上に頭を少し出している姿を最後に、私達の視界から消えた。
ドンッ!
「まぁ、そのためにやってるんですけどね。それにこっちはレーダーを積んでますから」
「!そうだよ。レーダーか」
「急にどうしたんすか」
「悪い、少し通信室に行ってくる」
「わ、かりました」
そうだなんで忘れてたんだ。レーダーを見れば敵のおおまかな位置と規模がわかるのに。それに、まだレーダーをつけてるのはるのは白老型ぐらい。それを旗艦にさえ報告すれば。私の頭の中で考えていたことが、色々と結びついていく。私は駆け足で、通信室に向かった。レーダーに強い思いをのせて。
「君!」
「あ、艦長。見て欲しいものが」
「レーダーに何か写ってたりする?」
「その件でお話が。これを見てください」
通信員の指した方向、スコープの画面には黒い画面の中に光の線が回ってるのみだった。
「あれ、敵は?」
「そうなんですよ。砲撃が始まる前からずっと写っていなくて。本当だったらここら辺に映るはずなのに」
通信員はスコープの東側を指で指す。指の先には何も写っていない。その言葉は今白神にできることを本当の意味でゼロにした。私の口からは何も出てこない。ただ、近くにあった椅子に勢いよく座り込んだ。
「艦長?」
「このレーダーを作った人には、...苦情を言わないとね」
帽子を取って、天井を見上げた。この部屋を照らす、ほのかに明るいランプが目に入った。一気に体に重りが乗ったような、そんな気分になった。私は、体が重すぎてその場から立ち上がれなかった。
カチ、カチ、カチ
時計の音、タイプライターの音が通信室に鳴り響く。私はさっき何をしたら良かったのか。どうするのが正解で、どういう行動を取るべきだったのか。頭の中で何回も何回も考えた。ただ私に残ったのは、過ぎていった意味のない時間と答えの見つからない問題だけだった。
ドン!!
「!!」
横から急に大きな爆音と、衝撃が襲ってきた。もしかして被弾した。私の頭の中で最悪のパターンがいとも簡単に想像できた。どうにかしなきゃいけない。急いで戻らないと。そんな思いが、私の体を動かした。
「ん、...艦長お待ちを!」
勢いよく通信室を出て、艦橋へ向かった。何か色々とぶつかった気もするし、ぶつかってない気もする。私はただ急いで艦橋に向かって、走った。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
「何があったの!」
「艦長どこにいたんですか!敵がもうすぐそこまで」
「っ!」
外を見ると、さっきよりも敵の影がハッキリと。私達の艦隊近くまで接近してきていた。
「どうして」
「いや、それは」
「はぁー。艦長!はぁ。木津偵察機から報告です」
息の上がった通信員は持ってきた紙を手渡してきた。紙の内容を見ると、敵の艦種と数が書かれていた。重巡に軽巡に駆逐艦。それも相当の数。ただ私はそれを見た瞬間、急いでもう一度外の敵を双眼鏡で覗いた。
「なんで」
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
見えたのは敵の軍艦。艦種はよくはっきりとせずとも戦艦は見えない。それなら絶対私達の艦隊よりも速い速度を出せると分かっていたのになぜ分からなかった。こっちは戦艦に給油艦。速い速度なんて出せない。これだったらもう
「追いつかれる」




