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第33話 開戦!!ハイドロラッシュ!!


 「それではこれより――水上競技ハイドロラッシュのルールを説明しまーす!!」


 アルコの声が響いた瞬間、観客席からどっと歓声があがる。

 コイツ本当に一年生かよ……。


 「・一チーム五人! 部活動対抗で全十チーム参加!!

 ・使用可能な魔術は水魔術と付与魔術のみ! それ以外は反則!!

 ・相手の魔術陣を濡らすか、水面に叩き落とせばポイント獲得!

 ・敵撃破は二点! 最後まで生き残れば一人につき三点!

 ・制限時間は五分! 総合ポイントの一番多いチームが優勝です!!」


 次々と畳みかけられるルール。声援が重なり、説明の一文ごとに観客席がどよめいた。




 ……だめだ、緊張で心臓が暴れてる。喉の奥が焼けつくみたいに乾く。

 さっきアシェルに笑わせてもらったはずなのに、もう限界が戻ってきていた。


 「「では選手の皆さん、位置についてくださーい!!」」


 プールの縁に沿って十チームが等間隔に立ち並ぶ。

 僕らの足場は、魔力で固定された巨大なフロート、大の大人が数人飛び跳ねても沈まないらしい。



 ……つまり、簡単には落ちない。


 ならば勝敗を分けるのは、攻撃の激しさと生き残る粘り強さ――。


 「みんな、作戦通りにいくわよ。」


 「……アシェルくん、魔力……もう、こめて。」


 「了解です。開始と同時に行きますよ。」


 「わ、わたしとクロキが、前に出て……肉壁になる。」


 作戦はシンプルだった。

 ――アシェルが開幕で詠唱破棄の《リオクル》をぶち込む。超巨大水球で敵を一掃。

 僕とルリアンは前に出て迎撃や盾役に徹する。まずは数を削る。それが勝ち筋。


 緊張で指先が震える。

 観客の視線が針みたいに突き刺さる。

 やれるのか、僕に――。


 「「初めッ!!!!!」」


 開幕の合図。僕は反射的に魔力を込め――


 「下がって!!」


 「えっ!?」「ぶぇっ!?」


 アシェルに首根っこを掴まれ、ルリアンと一緒に後方へ吹っ飛ばされた。次の瞬間――


 「水壁アクオル!!!」


 水面が爆ぜるように盛り上がり、僕らを包み込む巨大な水の壁が立ち上がった。

 直後、視界の外から――轟音。


 「なッ――!?」


 数十発の水弾が、一斉に叩きつけられた。

 水壁に衝突し、炸裂。耳が破れるような轟音と水飛沫が弾けるが僕らには当たらなかった。

 

 壁越しに見えたのは――十方向から放たれた無数の水弾。


 水壁越しに聞こえてくる、絶え間ない爆音。

 矢継ぎ早に飛んでくる水弾が弾け、重なり、壁を削ろうとしている。


 全員が僕らに狙いを定めている。


 「な、なんで……? なんで私たちばっかり!!」

 ルリアンが狼狽しながら叫ぶ。


 「間違いなく、僕がいるからだ。」


 アシェルは唇を吊り上げて笑った。


 「………アシェルくんが………4級までの詠唱破棄と………無詠唱で付与魔術まで使えるって、みんな知ってる………だからまず潰す………それが一番確実な作戦だよ。」


 アニア先輩は詠唱を終え、手のひらに水珠を生成して構えながらそう呟く。


 確かに……対岸に見えるのはエアロス・スキー部やオルドのいるアーサークロス部達だ。


 彼らは手を止めることなく、水球を次々と放ち続けていた。


 オルドやカイから聞かされたのだろうーーーーーーー「アシェルは危険だと。」


 ………まるで観客席にいるのに「お前は手加減しないで勝てる相手じゃない」――そう言われているみたいで。

 

 「やはり狙いは魔法研究部、1年Ⅲ組、アシェル・アルクトゥーガだーっ!!」


 アルコの実況と観客の叫びが渦を巻く。

 作戦なんて、開始の一秒で木っ端みじんだ。


 「………あいつらから聞いたのかな………ははっ……本当に、僕のことを高く評価してくれてるんだね。」


 アシェルは愉快そうに笑う。

 その笑顔は、いつもの快活さよりも少しだけ歪んで見えた。


 でも、僕にはわかる。

 その裏に――確実な危機感が滲んでいることを。


 「チッ……八方塞がりね。」


 ニーナが小さく舌打ちした。


 「四方八方から水弾の雨。数も威力もバラバラで、全部迎撃は不可能よ。」


 僕の背中を冷や汗が伝う。

 アシェルは水壁を維持しながらも、次の一手を打てずにいる。

 ここで中途半端に魔力を散らせば、壁が破られ、僕たちは一瞬で沈む。


 ――このままじゃやられる。


 会場の空気が熱を帯び、観客の歓声が波のように押し寄せてくる。

 だが僕の耳には、自分の心臓の鼓動しか聞こえなかった。


 「みんな!!上!!」


 ニーナが叫ぶ、反射的に上空を除くとそこにはーーーー


 「「おおーーっと!!ハンドボール部1年、スティーブン・スミス!!!!魔法研究部の上を取ったぁ!!!!」」


 真っ青な髪の長身細マッチョが僕らの頭上に飛び跳ねた、その手にあるのは水珠…………


 まさかーーーー


 「先制点ゲットだ!!!」


 凄まじい威力で水珠が迫る。

 狙いはアシェルだ!!!


 「んっ………!!!!」


 「先輩!?」


 アニア先輩が身を挺してアシェルを庇う。

 付与魔術を施された彼女の動きは凄まじい球速の動きを見切り、被害を最小限に留める……‼︎


 が、


 「「おおっと!!魔法研究部、アニア・ネーヴァ選手、魔術陣水没のため!!失格!!ハンドボール部に2ポイント!!」」


 「すみません!!先輩!!」


 「うぇ!?あっ、先輩ぃぃぃぃぃぃ!?」


 絶叫するアシェルとルリアン。


 「ちぃ、あいつ………!!」


 僕は水珠≪リオクル≫を即座にスティーブンに打ち出したが、突然現れた他のハンドボール部が空中で彼を回収して行った。


 「お、怒った!!よくもアニア先輩を!!」


 「ルリアン、落ち着きなさい。この状況じゃ何をしても……」


 「い、いや、出来る。」


 「え、あんた何する気………!?」


 ルリアンはアシェルの前に出ると水壁≪アクオル≫に手を突っ込み、向こう側へ突き出した。


 「こ、これで、手だけ出せば一方的にこ、攻撃出来る。」

 

 おお!!


 自信たっぷりに言い放つルリアンだが、確かに名案だ。

 これなら攻撃される心配もないし、魔術に集中出来……………!!


 「あビャ!?」


 突如、ルリアンの目の前に水珠が飛来。

 水壁がそれを防ぐも凄まじい威力と着弾音にびっくりしたルリアンは………


 「え」

 「あ」


 「ぎゃァァァァァァァァァァァァァァ!!!」


 ……足を滑らせ、ポチャンっと水没した。


 水壁と足場の僅かな隙間。小柄な彼女はそこから沈んでいった。


 「「魔法研究部1年、ルリアン・エトワール!!!着弾の衝撃で足を滑らせ、水没だァァァァァァァ!!!」」


 「はぁ………。」

 「あははははははは………。」


 頭を抱えるニーナと苦笑いするアシェル。



ーーーーーーー


 聖エクス学園体育祭、

 ハイドロラッシュ開始3分。


 魔法研究部、残り3人。


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