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第20話 役者は揃った


 首都アルディア。

 寮の窓から外を眺めると、街の中心にひときわ巨大な石造りの建物がそびえていた。

 周囲の高層ビルを見下ろすその威容は、光を反射して白く輝き、まるで“近寄るな”と言わんばかりだ。


 その建物こそ、世界中の魔術のエリートが集う機関、

 エルマナス対魔法国際連邦機構。

 通称「エルマナス」。


 かつて世界を混乱に陥れた“魔王”への対抗策として設立され、魔法使いや危険人物を監視・調査しているらしい。

 地球で言うFBIみたいなものだと考えると、ここに目をつけられたら本当に厄介だ。


 ……でも、あの大きさ、ただの石造りじゃないな。

 壁には複雑な魔術陣が刻まれ、屋上には見張り塔が並んでいる。

 近代的な高層ビルに囲まれたその建物は言い表せない異質な雰囲気を纏っていた。

 遠くから眺めるのすら躊躇うほどに。


***


 「エージェント、そんな奴らが学園にいるんですか?」


 寮に戻って、僕は女神様に報告と今後の立ち回りについて話していた。


 ちなみにアニア先輩とルリアンが魔王候補であるかは「保留」とのこと。

 確かに、あの傲慢な性格が本性ならルリアンに関しては魔王候補もあり得る。

 ……個人的にはあんな小物じゃないと信じているけど……。


 「《エクス学園はデア王国最高峰の学園です。秀才が多いということは、脅威も多いと見なされるのでしょう。》」


 確かに……アシェルやニーナ、ルリアンのことを考えると、油断はできないな。

 僕が魔法使いだとバレたら、魔王候補捜索に支障が出る。監視や管理だけじゃ済まないかもしれない。うかつに魔法は使えない……。


 「心得ました……。」


 ひとまず、今できることは魔法をうかつに使わないことだけ。

 僕は今ある課題に向き合おう。


***


 「魔法研究部?」


 「そう、魔法についてあれこれ調べたり、みんなでアニメを見たりする部活だよ。アシェルも興味があれば入ってみない?」


 異世界生活8日目。僕とニーナはアシェルを絶賛勧誘中。あれだけ魔術好きなら、少しの誘いで乗ってくれるはずだ。


 「うーん、悩むね」


 意外な返事が返ってきた。

 アシェルはどうやら魔法自体にはあまり興味がないらしい。


 「魔法ってさ、理論もへったくれもなくて、個人差が大きいじゃない?でも、魔術なら詠唱や魔術陣、歴史まで含めて体系化されているから、面白いんだよね。あ、でもトウヤやニーナさんが興味あるのは否定しない!気分悪くしたらごめん……!!」


 「お、おう……。」


 またしても早口で弁解するアシェル。

 しかし……困ったな。アシェルが乗り気でないとなると他の人を探すのにも………


 「もし入部してくれたら、トウヤが自分の“特異体質”についていろいろ研究してほしいって言ってるけど、興味ある?」


 アシェルの目がピカリと光った。

 特異体質……僕が? 一体何のことだ?


 「マジ? なら入るよ。」


 そう発するアシェル。

 えぇ…‥軽すぎない?

 てか、また僕だけ置いてけぼりなんだけど。マジでニーナ周りの会話についていけない。

 

 「魔法はダメなのに特殊体質はいいの?」


 てかなんだよ、特異体質って、また異世界のわけわからない概念出てきたな……。


 「いいに決まっているじゃないか!!魔術の中にはね、大昔の特殊体質の人を解析してその体質を魔術陣に術式化して、それを誰もが使える魔術にしたんだよ!!魔法と違って理論化出来て誰でも使えるようになる、そんな面白い体質があるならもっと早く教えてよ!!」


 どうやら魔法とは別に特殊体質なんてものもあるらしい。まぁよくわからないことはあとで女神様に聞こう。


 「じゃあ、この紙に名前を書いてくれる?」


 満面の笑みのニーナに、アシェルは早速名前を記入する。

 ……軽すぎる。魔法は嫌いなのに、特殊体質は大歓迎とは……。


 聖暦2030年2月15日10時31分。

 アシェル・アルクトゥーガ、魔法研究部入部

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