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第19話 次章へ


 この世界の夕焼けは神秘的だ。

 紫と金色が混ざり合い、雲の輪郭は光で縁取られたみたいに輝いている。


 魔法研究部を後にした僕とニーナは、一緒に寮へ向かって歩いていた。徒歩10分。学園広すぎない……?


「そういえば冬夜、ハイドロラッシュについて知ってるの? さっき微妙な反応だったけど。」


 うっ、知ったかぶりがバレてたか……。


「だ、大丈夫、知ってるさ。こういうやつでしょ?」


 体育祭の部活動対抗戦。ルールは女神様から聞いた通りだ。

•5人1チーム

•使用できる魔術は水と付与のみ

•敵チームを濡らすとポイント獲得

•倒した敵+生き残った仲間の数で勝敗決定

•ポイントが高いチームが優勝


「知ってるみたいね。ならいいわ。」


 でも僕は納得していない。部員を増やした理由も、体育祭で勝ちたい理由も、少し違うのでは……?


「でもさ、いくら体育祭とはいえ、そこまでして部員集めて出たいものなの?そのハイドロラッシュ……は?」


「はぁ……やっぱり。」


 ため息をつくニーナ。どうやら、体育祭にかけるそれなりの理由があるらしい。


「うちの体育祭は学園最大の行事なの。ハイドロラッシュで優勝した部活には、新設される新部室棟の部屋を1つ、自由に選べるのよ。」


「え……?」


思わず声が上ずる。単なる恒例行事だと思っていたのに……!


「だから、部活にとっては結構大事なの。私も、やるからには本気を出すわ。」


「…………水珠リオクル


 ニーナの手のひらから野球ボール大の水玉が現れる。

 これは………!!


「ニーナも使えるの!? 詠唱破棄……」


「当たり前でしょ。元貴族の家系は魔力も才能も突出してるのよ。」


 なるほど、これならハイドロラッシュでもいい勝負ができるはず。


「トーヤ、アシェルを誘うつもりなんでしょ?


「うん、あいつなら絶対全力になる。」


 全部、お見通しってわけか。流石だな。


「いい判断よ。彼、なんでも詠唱破棄で使えるから。絶対に勝って”わたしの”新部室を手に入れるわ。」


………本音漏れてますよ。

 そうか、ニーナが魔法研究部に入った理由は……自分用の部屋のためか。


 女子寮に着き、ニーナとお別れ。


「そういえばトーヤさ。」


「ん、何?」


「どうしてアニア先輩とルリアンは、冬夜が魔法使いだって知っていたの?」


 あっ、そういえば……


「……聞き忘れた。」


「………はぁ。ほんとあんたって抜けてるわね……。」


「……ごめん。……………ん?」


 その時、マジホが震えた。差出人はアニア先輩。


――――――――――


『トウヤくん、どうして君が魔法使いだってわかったのか言い忘れてたね。』


 ちょうどメッセージが来た。

 確かに、どうしてわかったんだろう。


『君が魔法使いだって話している生徒がいたの。部室棟で……複数人ね。

私も知らない生徒だったからカマをかけるつもりでルリアンに連絡させたの。

君を見て確信したわ。』


 生徒が話していた? ……それも複数人?

 また謎が深まった。てかカマをかけて釣られる僕も馬鹿だな。


「………困ったわね。」


 ため息をつくニーナ。


 「アニア先輩に聞こえる音量でトーヤが魔法使いかもって話をしている連中がいるってことでしょ?

 そんなデリカシーのない奴らに私の魔法までバレたらたまったもんじゃないわ。」


 ……確かに。しかし結局、僕が魔法使いってバレた理由は分からなかったな。その生徒を探し出すしかない………。

 もしかして、そいつらの中に「魔王候補」がいるかもしれない………!!


 フブっとまた通知。

 僕はその"2度目"のメッセージに嫌な予感がした。


――――――――――


『あとね、学園におそらく「エルマナス」のエージェントが潜入してる。

おそらくだけど、目的は“魔法使い”を見つけること。気をつけて。』


「……えっ?」


 冬夜の頭の中が一瞬で混乱する。

 エルマナス……? エージェント……?

 名前は聞いたことがある、でもこの世界のエージェントが一体何をする存在なのか、全く知らない。

 敵? 諜報員? 魔法使い狩り……?

 想像の中で最悪のシナリオが次々と浮かぶ。


「……エ、エージェントって……?」


 思わず声が震える。

 しかし、ニーナは僕のマジホをちらりと見て、ため息ひとつ。


「……ふーん、そう。」


 ――あまりにも軽い。まるで“普通のニュース”でも聞いたかのような反応だ。

 彼女の声に軽く笑みが混じる。


「大丈夫よ、下手なことせず“普通”にしていれば平気よ。じゃあまた明日ね。」


――普通? 普通って……!?


 僕の心臓は早鐘を打つ。

 見知らぬエージェントが学園内に潜んでいる。目的は“魔法使い”の発見。

 つまり僕だ、僕が狙われている――。


 それなのに、ニーナは本当に平然としている。怖がるどころか、あまりにも日常の一部のように言い放つその態度。


「……気軽に言ってくれるな……!!」 


 小声で頭を抱える。

 夕焼けが僕らを包むその道は、普通の帰り道に見える。

 けれど、僕の中では戦闘態勢のスイッチがもう入っていた。


 魔王候補、魔法使い、エージェント、体育祭。未知の脅威が迫る中、まず何から手をつけるべきか――。







<第1章 学園入学編ー完ー>

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