第18話 迫る祭り
「じゃあ……トウヤ・クロキくん……我々魔法研究部入部おめでとう………。」
「ふっ、ふっ、これで私より新入りが、ふっ増えた。」
気だるげ少女と小動物の拍手は耳をすませば聞こえるかというほど小さかった。
友達作って部活入って、日本よりも日本らしい学生生活送れている気がするな僕。
「よ、よろしくお願いします。」
あ、また噛んだわ、くそっ。
この部活まともに話せる人いないのか。
「……それで、この魔法研究部って何するんですか? 僕の魔法、研究します?」
「いや……しない……みんなでアニメ見るの。」
えぇ……研究しろよ。
いや、待てよ……アニメ? アニメ見るのか、それめっちゃいいな。この世界の配信サービスや有名作品まだ知らないしこの機に履修出来るじゃん!!
***
『俺は絶対にお前ら天使を根絶やしにしてやるよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!』
絶賛アニメ鑑賞中。
早くも2時間が経過し1クールの半分を消化した。
このアニメは「ヴォルフ」という作品。
なんでも一万年前の人類と天使の戦争をモチーフにした大作らしい。
作画はヌルヌル動くし、エフェクトも凄まじい。何より声優の演技が本当にその場にいると感じられるほどの熱量に圧倒される。
「どう……? 面白いでしょ?」
アニア先輩一推しの作品。
名シーンがあるたびに僕にこう聞いてくる。もう10回目だ。
「はい、最高です!」
決まって僕は答える。もう何度も繰り返しされた問答だが、最高なのは事実だ。
王道だが、どこまでもシビアで壮大な世界観がとてもいい。
女神様に頼んで日本で見れるようにしてもらおっかな………ん?……そういえば何か忘れているような……。
「ねぇ、何してるの?」
!!!!?
「うわっ!!」
突如、背後から声がした。
「ニ、ニーナ!?」
彼女だ。腰に手を当て眉間に皺を寄せている。抜群のプロポーションを活かして僕を見下ろす。
「トーヤ? あんた、私を差し置いてなにくつろいでるの? 」
やばい、そ、そうだ!!ニーナ、ニーナも一緒に来てたんだ!!どうしよう……2時間も放置してしまった……殺される!!!
「ご、ごめん!! 緊張が解けて完全にニーナのこと忘れてた!! マジでごめん!!」
「ふん………」
やっちまった。怒らせたぁ………。
「お、お前、誰だ?」
「あなた……誰? トウヤくんの知り合い……?」
再び警戒体制に入るルリアンとアニメを止める先輩。
「1年Ⅲ組 ニーナ・ヒューバン・エドガーウルフです。 トーヤくんとは友人です。 あと、私も魔法使いです。」
「「「えっ。」」」
三者二様の「えっ」
2人は魔法使いであることに。
1人はあっさりと明かしたことに。
「いいの? えっ、そんな簡単に明かしちゃって……」
「あんたは黙ってなさい。」
「はい。」
今日の僕に発言権はないらしい。
***
「……なるほど、それで僕がいつまでも出てこないから来た……と。」
「そうよ、あんたいつまでダラダラしてんのよ」
ニーナは僕がアニメを見初めると呆れて部屋に戻ったそうだ。……で、メッセージをしても全然既読がつかないから僕を呼ぶために部室に来たらしい。
「……それで、ニーナ……ちゃんの要件は…何?」
本題に入るアニア先輩。
確かに、忘れる僕が悪いんだけどどうしてわざわざ部室に来たんだろう。
「私も魔法研究部に入部させてください。」
「いいよ。」
「え!?」
入部するニーナ、即OKするアニア先輩。
え、これなに、展開急すぎるけど2人とも打ち合わせでもしてんの?
「そ、そんなあっさり……」
「アニア?先輩でしたっけ、この部活部員が欲しいんですよね? なら私が入ればこれで4人。 あと1人で目標達成ですよね?」
あと1人? 目標達成?
「え、魔法に興味のある人を増やす以外に理由があるんですか?」
「あるよ………体育祭までに5人……集めたいの。」
「体育……祭?」
体育祭、こっちの世界にもあるのか。
しかし、人数が必要? なにかあるのか?
「ん? ジパルグにはないの? 体育祭。 みんなでいろんな競技をするやつ。」
「い、いや知ってるけど。 こっちの………あー、デア王国の体育祭はどういうのなの?」
ニーナが説明してくれたけど、これ、体育祭って言ってるけど多分僕が知る日本のやつとはほぼ別物だぞ。
女神様の翻訳機能のおかげで"体育祭"が一番分かりやすい表現として用いられてるだけだ。
「そうね。エクス学園のは2日間で行われるの。1日目が団体競技と部活対抗。2日目がカラー対抗戦。」
なるほど。チーム対抗の団体戦を2日間にわたって行うわけね。なら日本のとあまり変わらないのか……?
「トーヤも知ってると思うけどハイドロラッシュとかルレーとかよ」
「ふーん、そうなんだ。」
ハイドロ……? ルレー…?
なんだそりゃ。とりあえず知ってるフリしちゃったけど後で女神様に聞いておこう。
「それでね……ハイドロラッシュは……部活動対抗なの……5人1チームで……出場。」
「それに水魔術が得意な人が有利だからトーヤが誘われたってことね。」
あ、なるほど。僕は転校してきて早々、不完全とはいえ詠唱破棄で魔術を使ったもんな。
よくわからないけどハイドロっていうくらいだから水魔術使うのか。
「ってことは、今僕とニーナ、アニア先輩とルリアンで4人。あと1人集めればいいってことですよね?」
「うん………。」
「こ、こころあたりはあるのか?」
そのハイドロなんとかとやらは知らないが魔法使いだとバレた以上、彼女らを無下には出来ない。
……それに、まさか異世界で一緒にアニメを見る関係ができるとは思わなかった。
なにより、この"魔法研究部"とても居心地が良い。
「はい、あります。」
魔法に興味があって、水魔術が得意な人物。
僕の頭には、赤髪の蒼い目をした早口オタクが浮かんでいた。
「まかせてください。」




