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第14話 神様、女神様、ニーナ様




ーー処刑台に立つ罪人の気分ってのはこんな感じなのだろう。


 異世界学園生活4日目。


 二日間にわたる中間試験が終わり、教室で今、テスト返しが行われている。

 転校生の僕の出席番号は一番最後の40番。仲間たちの処刑を見届け、僕は死を迎える。


 ちなみにあのあと職員室でマイト先生から補講の案内と山積みの課題をプレゼントされた。


 現在30番。 

 王国一の名門校、エクス学園に通う屈指の秀才たちが"勉学"で苦しんでいる。


ーーいや、一部はそうではなさそうだ。


「よっし!!術理96点!!」


 アシェル・アルクトゥーガ。

 クラス一の魔術オタクの彼は持ち前の知識で試験を蹂躙したのだ。


 ちなみに、「術理」の学年最高得点は96点。

やつが一位だ。

 ところ構わず喜ぶ彼はまるでクリスマスプレゼントを貰った子供のようだ。


「アシェル静かにしろよ」

「お前がいい点を取る一方で、報われない者もいる。弁えろ。」


「うっ、ごめん……。」


 謝るアシェル。素直なのはいいことだ。

 昔の僕なら「努力してこなかった馬鹿が悪い」とイキリ散らしてただろうに………。


 って、まずいまずい!!

 危うく"共感性羞恥"が発動するとこだった。

 嗚咽のように漏れ出る魔力を必死に堪え僕は教卓の近くに進む。


「次、トウヤ・クロキ」


 僕の番だ。皆、行ってくるよ。


 点数に打ちひしがれるクラスメイト達を横目に僕は手を差し出した。

 僕で最後となった答案用紙を受け取り、その紙の右下、名前の横にある数字を凝視する。


「…………。」


 声にならない声。


 覚悟はあった。手応えはなかった。

 理解していた運命を前に僕の心はそれでも揺らいだ。












23/100


23点。僕の点数だ。


………。


うん……。


 阿鼻叫喚にわずかな歓喜の混じ入る教室。

 しかし、この瞬間はそれがとても静かだった。


!?


うおっ


静寂が破られる。

突然、後ろから肩を叩かれた。

結構強い力だ。誰だ……………!?


「トウヤ、テストどうだった?」


 アシェルだ。

 さっき学年最高得点を記録して大喜びしてた彼が学年最低得点に話しかけてきた。


「い、いや、全然良くなかった。」


 まるでそこそこいい点を取った謙虚なやつっぽく僕は返す。でもこう返すしかない。本当にゴミみたいな点数取ったんだから。


「またまたぁ〜そんなこと言っちゃって〜」


「謙虚なのは良いことだ。どこぞの魔術バカにも見習って欲しいな。」


 カイとオルドも来た。

 ……2人とも僕が良い点数を取った前提で話しかけてくるのやめてくれないか?


 多分、前の授業で僕が詠唱破棄なんて高等技能使ったせいだろう。


 こんな惨めな"勘違い展開"はない。


「ほら、見てみなよ。」

観念した僕はアシェルにテストを手渡す。


「お、ありがと……………!?」


 絶句するアシェル。カイとオルドもノーコメント。気まずい空気が流れる。


「…………。なんか………ごめん。いや、ほんと……悪気はなかったんだ……ただ……あんなことできる人だからテストも凄いのかなって……。うん。」


 謝罪するアシェル。やめろ、それ以上謝るな。余計気まずくなるだけだ。


「ま、まぁクロキは転校してきたばっかだし、テスト勉強する時間も全然なかったからしょうがないよね。」


「もののはずみということもある。……うむ。だがこの点数で君が詠唱破棄を使用した事実は変わらない。そう落ち込むな。どんな人間にも得意不得意があるものだ。」


 めちゃくちゃ励ましてくるカイとオルド。

 やめてくれ、そういうのが1番メンタルに来るんだよマジで。


「な、なにかわからない問題があったら何でも聞いてくれよな?俺、手伝うからさ……」


「え? う、うん。 そのときはその……お願いします………。」


絞り出すようにフォローするアシェル。

咄嗟に返せず僕はぎこちなく答えた。


***


昼休み。

 中間試験という試練を乗り越えた教室には、久しぶりに活気が戻っていた。


「いや〜ようやく終わったな! テスト!」


「これでようやく……部活できるー!!」


 カイが叫ぶ。随分と嬉しそうだ。

 その横でオルドとアシェルも頷いていた。


「部活動、か……」


 僕は高校では部活に入ってなかった。

 中学では"かっこいい"という理由でバスケ部に入部したが、まぁ……察しの通りだ。


ううっ。


「そういえば、この学園にも部活ってあるんだね」


 僕は隣のフォンに話しかけた。

 彼もテストの結果は振るわなかったようで随分と落ち込んでいる。


「うん……うちは結構スポーツ強豪校なんだ。課外活動にも力を入れてるらしいし。」


「へぇ……なんか、意外」


 異世界の名門学園といえば、もっとこう、魔法訓練とか、剣技稽古とか、そういう軍隊みたいな活動が中心だと思っていた。


 たしかに、この異世界やたら現代よりでファンタジー感薄いが。


「なら、君は何部に入ってるの?」

純粋な疑問。


「俺? 俺はアエロス・スキー部だけど」


 あえ? なんだって?


「おい、どうしたクロキ?」


 いや……ちょっと待ってくれ。

 なんだその単語群は。変なところで異世界してくるんじゃねぇよ。




***




 昼休み、授業はもう終わり……。

 the endの意味でもfinishedの意味でも。


 言うまでもないだろうがその後の世界史と語学のテストも爆死だった。


 僕は1人机で昼食中。教室は随分と静かだ。

 

 学生の大半が学食か購買に行き、ガラガラになった教室で僕は外を見ていた。

 ちなみに僕の昼飯は毎度何故か部屋にある弁当だ。


 こちらの世界も空は青いらしい。


くそっ。


 23点なんて人生で初めて取ったわ。

 高校の初めてのテストですらここまでひどくはなかった。(64点)

 午前ほどの衝撃は薄れてきたがまだメンタルにはきている。

 


「うぅ……」


 ふと、教室の隅。金髪が揺れた。

 見ると、ニーナが机に突っ伏している。


 ああ……わかるよその気持ち。

 きっと彼女も散々な点数だったのだろう。


 今日は全然話さないなと思ったが彼女も同様、凹んでいたのだろう。


僕は静かに彼女の机へ歩み寄った。


「……ニーナ、だいじょぶか? 点数……ひどかったのか?」


心からの同情と共感を込めて声をかける。

苦しむ仲間は、手を取り合うべきだ。


ニーナは、ゆっくりと顔を上げた。


そして、言った。


「うん……ひどかったの。……80点しか、取れなかったの」


……。


……は?


80……点? 18点の間違いじゃないよな?


いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや。


 それのどこがひどいの!?  

 僕の3倍以上なんですけど!?!?


 落ち込んだ声を出して彼女は続ける。


「80点なんて……っ、私……生まれて初めて……」


 顔を覆って震えるニーナ。肩がプルプルしている。

 きっと、これまでずっと完璧だったのだろう。


 ここは王国一の名門校。

 ここに来る生徒なんか皆勉強で負け知らずだったのだろうが……この落ち込みよう。


ま、まぁ、これはこれで……可愛いけど。


……じゃなくて!


なんだこのすれ違い。


「そ、そうか……うん、辛いよな……80点……」


 とりあえず僕は励ました。言いながらも僕の手は震えていた。

 なんだろう、この拭い切れない敗北感。

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