表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/31

第3章:鈴香の影編ー第6話:鈴の記録

観香庁の奥深く――立ち入り制限のある特別記録庫。

静華は、玲華が遺した“記録香台帳”の中から、ある未分類の香壺に目を留めた。


壺の名は《鈴ノ記》。

蓋には、母・玲華の花押が押されている。


「……これ、母さんが最後まで公開しなかった香……?」


庁の許可を得て香を焚くと、ほのかな白梅と練香の混ざった香気が立ちのぼる。

そして――静華の意識に、記録が流れ込んできた。


玲華の視点――。


夜の香都街。

まだ若い玲華は、香塔の書庫でひとりの研究員と向き合っていた。


「リュウ……あなた、本気なの?」


「玲華。香は可能性だ。記憶の保存だけじゃない。

人の心を、過去を、全部書き換えられる。新しい“人間の再設計”だよ」


「それは人の意思を奪う行為よ。……記憶は、香に記録すべきじゃない。“生きて”こそ意味があるの」


リュウは静かに笑った。


「……君の“香”は優しすぎる。

でも僕は、苦しみを消す香を作りたい。

誰もが“過去から自由になれる世界”を、香で作るんだ」


その背には、まだ銀の鈴などなかった。


記憶が終わり、静華はそっと香壺を閉じた。


(……母さんとリュウは、やはり“理想”の違いで袂を分かった)


その直後――扉がノックされた。


「静華さん、観香庁の外に、例の“記憶喪失者”が新たに見つかりました!」


ユウの声。

静華は香壺を抱えて立ち上がる。


(リュウは動いてる。記憶を消し、理想の“白紙の人間”を作ろうとしている)


でも静華は、母の香を手にしている。

香で人を縛るのではなく、香で人を“生かす”ために。


そして今、かつて母が辿りつけなかった“答え”を探す時が来たのを感じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ