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第70話 月伏廃人登場、ゲームバランスを覆す妬みだらけの男

ゲームのNPCと人間であるプレイヤーの意識が入れ替わった世界の話。ゲームマスターの思惑によって全ての仮NPCはダンジョンカジノでの命を賭けたスキルの能力勝負が始まった。バノムロッジとRozESLY、レトファリックとツキレニーの勝負は単純な魔法の撃ち合いとなり死闘の末レトファリックが勝利した。一方その頃、峰未雨はダンジョンカジノで協力するチームメンバーの月伏廃人と言う人物を探していた。しかし月伏廃人の性格はかなり個性的で…。

第1サーバーと第2サーバーにいたNPCはレトファリックの偉業に驚嘆の声をあげた。


「賭けに勝ったぞ。すげー。カード3枚所持者のレトファリックが、最強のDESSQプレイヤーだったバノムロッジを討伐した。」


男は酒をグラスで一気飲みしながら感想を話した。


「負けた。なんて魔法の応酬、スキルもたくさん使用していた。なんて壮絶な争いだ。フェアリーフィールドを使った時なんて凄すぎて叫んじまった。」


ダンジョンカジノで賭け事を行っていたNPCはレトファリックとツキレニーに賞賛の声をあげていた。


その頃、峯未雨は自分のチームメイトを見つけていた。


枝を掻き分け森を進み自分の仲間と思われる人に向かって話かけていた。


「あんたが月伏廃人?このダンジョンカジノに参加するんじゃなかった。ゲームマスターにlevel100の機械兵を送られるって言われたから仕方なく参加したけど本当に億劫。死線があればいいけど対戦相手も第2サーバーでビルを占拠したチームの内の2人みたいだしそこは期待してるけど。田芽助と鯱千とははぐれちゃったし。今頃元気にしてるかな。」


峰未雨は同じチームメンバーかどうか確認し、良ければ仲良くなろうと思っていた。

そこにいた月伏廃人と呼ばれる青年は峰未雨の姿を見ておもむろに話し始めた。


「羨ましい。羨ましい。強い体。たくましい体。可愛い顔。全て羨ましい。ああ。妬ましい。僕は弱くて不細工で惨めて情けない。ああ羨ましい。」


そういうと月伏廃人は峰未雨の体に抱き着き体を触り始めた。

峰未雨は恐怖でその場から離れた。


「きしょ。あんた勝手に女性の体に触るとかどういう神経してるの。最悪な人。こんなのと組んで敵を倒さないといけないとかほんとむかつく。」


峰未雨が月伏廃人の手から離れると彼の顔を見て確認することができた。

月伏廃人の顔は火傷の跡があり、目がでっぱっていて歯も不揃い。鼻も大きく目立つ見た目だった。


「あんた、ちょっと顔変じゃない。」


峰未雨の何気ない一言に月伏廃人は深く傷ついた。


「ひどい。羨ましい。妬ましい。自分は可愛い顔に生まれたのに人の事をけなす。ひどい。ひどすぎる。僕は君みたいな綺麗な顔に生まれ変わりたかったからゲームをしてその鬱憤を晴らしていたのに。ゲームマスターによって現実と同じ顔にされてしまうなんてああ妬ましい。羨ましい。」


峰未雨は自分の言動を振り返り少し失礼だったなと感じ月伏廃人に謝罪した。


「そのご、ごめん。態度が気に入らなくて悪口を言ってしまって。反省する。」

しかし月伏廃人は彼女の言葉に深く傷ついており、峯未雨に言葉を吐いた。


「嘘だ嘘だ。思わず口に出た言葉だから僕の顔はやっぱりひどいんだ。悔しいな。妬ましい。君はいいよね。かっこいい顔と力両方持っているんだから。いいなあ。」


峰未雨は月伏廃人にもう一度謝罪し、スキルを手に入れようと提案した。


「その、本当にごめん。別にあなたの顔愛嬌が嫌いじゃないわ。と、とりあえず行きましょ。スキルを手に入れて対戦相手と試合しなくちゃいけないの。あんたも知っているでしょ。」


月伏廃人は彼女の言葉を聞いて立ち上がった。


「羨ましい。妬ましい。対戦相手はきっと自分より強くてきれいな顔できっと彼女とかガールフレンドがいるんだ。僕がそんなリア充なやつらに負けたら最悪だ。許せないな。」


峰未雨は立ち上がった彼の言葉をきいて少し笑った。


「はは。対戦相手も男みたいだけどガールフレンドはいないんじゃないかな。女の子を攻略するのってそんな簡単な事じゃないと思うよ。月伏くんも女性についてもっと勉強したらきっと彼女が出来たりするかもねー。」


峰未雨の言葉を聞いて彼は再び縮こまった。


「女子が僕の彼女に、つまり君が僕の彼女になる。うへへ。そんなことあるわけない。君も他の女子も男は金と顔の二本柱で選んで付き合うんじゃないか。君は僕に彼女になれるって本当は思っていないんじゃないか。ひどい。」


峰未雨は月伏の言葉を聞いて少しアドバイスをした。


「うーん。まずその話し方から変えた方がいいかもしれない。少し気味が悪いかな。君の喋り方。」


月伏廃人は彼女の言葉を聞いて自分を省みた。


「うるさい。妬ましい。でも分かった。女子といる時はこの話し方控える。」


峰未雨は彼の言葉を聞いて素直に感心した。


「なんだ。意外と素直で話通じるじゃん。可愛いとこあるじゃん。月伏くん。それじゃスキル集めしようか。」


しかし月伏廃人はまたネガティブな捉え方をした。


「僕の顔と力、お金に魅力がないから話し方で僕を褒めたんだ。ああ、いいなあ。始めから好かれる性質を持っている人間は。可愛い顔、見た目、かっこいい体を持っている人はああ妬ましい。」


月伏廃人と峰未雨はスキル集めに動き始めた。

峰未雨は既にタイジットカーフ、クロウメハカアマルとスキルを2つ持っているため、他にいいスキルを探しつつ月伏廃人の護衛を任され実行していた。

月伏廃人は残像を持った機械兵のモンスターと対峙した。


「なんだこの敵、残像になって敵を攻撃したり僕の攻撃を避ける。」


月伏廃人は危険で強力なスキルをもった敵と対峙したが手にもっている剣をうまく使う事ができずに結局峰未雨に助けられた。


「あたしが、このモンスターを討伐したげる。残像機械兵モンスターかおもしろい。あたしに死線を感じさせる攻撃期待しようかな!」


峰未雨は手に持った剣を活用して相手の攻撃を受けスキルを発動した。


「クロウメハカアマル、タイジットカーフ。」


黒い袴姿となった峰未雨は頭に虎の耳が生え尻にしっぽが生え虎の体となった。


「この体いつもの2倍近い速さと力が手に入るんだよね。おりゃおりゃ。」


袴を来た虎になった女が残像使いの機械兵を翻弄する。

峰未雨の斬撃が機械兵を何度も襲い残像になった敵は見を隠していたが、虎に見つかった。


「残念。残像ちゃん。あたしこのモードだといつもより敵の位置把握も鋭くなっちゃうんだ。」

峰未雨は残像機械兵を倒しスキルを手に入れた。目の前に見たことない画面が現れた。クロウメハカアマルを月影のクロウメハカアマルに強化いたしますかという質問文が書かれていた。


「スキルが強化されるってこと。今までのスキルも使えるんだ。これはすごい。」

当然、峯未雨はスキルを強化して新たなスキルを手に入れていた。


その頃、月伏廃人は峰未雨のそばにいたが、彼の目の前に幽霊が現れた。そして同タイミングに目の前に画面が現れた。


[これは不運のカード。]


月伏廃人は何のスキルを持たない状態で幽霊と勝負を始めてしまった。

幽霊はかなしばりで月伏廃人の動きを止めようとした。幽霊は月伏廃人を見てまた弱い怠け者が現れたと思いあまり乗り気ではなかった。


「振動停止。」


しかしなぜか月伏廃人は止まらなかった。彼の剣は幽霊の体に当たるはずがなかった。しかし、実際には剣の攻撃を受けたと感じ幽霊のモンスターはその場から逃げるしかなかった。


「まさか貴様、あまりにもネガティブすぎてかなしばりの悪夢を見ないってことかそんな馬鹿な。」


不運のカードの幽霊モンスターは現状を正しく分析しようと試みた。


「剣が当たると思ったのも貴様の殺意、そして相手のことを羨ましいと思う感情が増幅し、ゲームバランスが彼に力を与えようとしている。」


不運のカードの推測は正しかった。ゲームマスター緋戸出セルが設けた弱すぎると感じた人間への優遇措置が発動しコンプレックスの塊である月伏廃人には全てを倒す威圧が放たれていた。


「面白い。ひょっとするとレトファリックや獅子川より面白い人間かもしれない。」






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