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第50話 血潮見の過去回想、神に挑む研究

ゲームのNPCと人間であるプレイヤーの意識が入れ替わった世界の話。獅子川らは第2サーバーのアニープ都の電脳城を占拠するために侵入するのだが、そこでクラブの2の能力を使用するものが現れる。式部が登場しその後もミノタウロスやロボットと対峙することに。ゴブリンが数学を解く場面に遭遇し、上の階を目指してエレベーターに乗った。

エレベーターは17階で停止した。


「また、敵か。」


17階に到着するとそこには、大きなバーとレストランがあった。

そこには研究者がたくさんいた。


「時神ルーピルの10。」


「振動停止。」


スキルを使用したのはルーピルの能力の方が早かった。

研究者たちは固まって動けなくなった。


「ずいぶん、クラブの2の能力に入れ込んでいるみたいだが他になにができる。」


獅子川がクラブの2に興味を示していると研究者が突然彼らの前に現れた。


「ゴーストテレポート。いけ崇高なる研究者たちよ。」

黒い霧が17階を覆った。突然現れた敵100名に対して5人で迎え撃った。

「雷神セト・トルエドの10。」

式部がスケルトンアーム。瀬高がコールドアーチャーを使用した。

血潮見レタスはゲラリオレミニールを使用したが、あまり戦力になっていない事に薄々気づき始めていた。


血潮見が学生のころ彼は周りから煙たがられていた。


「漫画ばっか描いてるね。友達とか作らないの。」


「遊ぶと漫画が下手になる。人のモーションを書かないと。」


血潮見は人体の骨格は表情、モーションを教科書を映して丁寧に書いていた。


「ふーん。なんかレタ君ってつまんないよね。」


血潮見レタスは本名、血潮見レタ。カタカナ言葉の名前は珍しくそのせいで周りの友達から目をつけられていた。

バスケをやっている一軍の男子、キヨシくんからレタは気に入られていた。

血潮見レタはキヨシとバスケをしていた。

血潮見はキヨシのボールをブロックしようとした。

しかしキヨシの動きは速く捕まえられなかった。


「もっとボールをよく見るんだぞレタ。」


「分かった。くっそ。」


血潮見は鋭いドリブルを仕掛けるキヨシについてきていた。


「おお。フェイントにも引っかからないんだな。やるなレタ。」


「何度もすごいドリブル見てるとこっちも動きがよくなっちゃうよ。」


キヨシとのバスケは終わり相談を持ち掛けられた。


「レタ、俺らのバスケを漫画にしてくれないか。」


「難しいと思う。」

血潮見は正直に答えてしまった。なんて言われるかびくびくしているとキヨシくんは優しくエールの言葉をくれた。


「そっか。でも漫画応援してるぜ。」

人生の中で悪い言葉をかけるものもいれば嬉しい言葉をかけてくれる人もいる。

でもたまに、自分の一番欲しい言葉をくれる人もいる。


「お前なら絶対いい漫画家になれるよ。」


最も欲しい言葉は最も残酷な言葉だ。

それから16年が経った。今じゃもう26歳。漫画の賞は一度佳作をとっただけで、編集者は今はついていない。いまだに賞を取るために漫画を描いている。


「満たされない気持ち一杯分漫画にぶつけてみたら。」

編集者替わりをしてくれてる友達からそう言われた。


「俺だって頑張ってるんだ。俺だって…。」


「いつかの葛藤や悔しさも力に代わるって。」


「うるさい。」

友達からの親身な言葉も自分を蔑む言葉に聞こえる。

黙々と漫画を描いていると面白いゲームを見つけた。DESSQだ。社会経験があまりにも少なかった血潮見にとってゲームだけが居場所だった。


そして現在に戻る。俺だってやってやる。


「植物鎧。」


つるのとげを自身の体にまとい防御できる状態になった。


「植物グローブ。」


手にとげのついた植物を巻くことで、相手により強力なダメージを与えられる状態になっていた。


「おりゃ。おら。」


ひたすら相手の研究者を殴っていた。

他のチームメイトはそんな血潮見を見て士気が上がった。


「血潮見に続け、研究者だろうがなんだろうがぶっ潰すぞ。」


式部の言葉通り4人で100人の研究者を圧倒していた。


「振動停止、かなしばりを使える研究者は数人なんだね。よかった。」


「覚えておけ。セト・トルエド所持者。」

100人の研究者を一通り消沈させた獅子川ら5人は再び、エレベーターに乗り始めた。

エレベーターは20階で止まった。

彼らはいつ攻撃されても対応できる態勢をとっていた。

そこには、衝撃の光景が待っていた。


レトファリックは思わず驚きの声をあげた。

「なんだこれ。ミノタウロスの脳みそが抜かれている水槽!?。」


「ミノタウロスの目も抜かれてる。これも研究ということか。」

すると、研究者20名がそこに立っていた。


「いかにも我々の行っているモンスターに人間脳を授けるという神の研究だ。」

獅子川は水槽を見て純粋に答えた。


「これのどこが神の研究なんだ。趣味が悪いな。」

研究者の一人はまた解説を続けた。


「このDESSQの世界、人間やNPCはスキルや魔法を使用できる。しかしモンスターにその能力はない。だったらモンスターを人間と遜色がない心と脳を手に入れればスキルや魔法を使えるのではないか。これは神に挑む研究なのだ。第3サーバー ダンジョンカジノはモンスターのスキルを研究するためにある。」


獅子川は話を聞き思わず拍手した。


「なかなか面白い研究だな。」


研究者の一人は理解を示した獅子川に油断した。

「おお。そうか。お前もこの研究の偉大さがわかってくれるか。」


しかし、獅子川は言葉を付け足した。


「しかし品がない。せっかくなら人間も混ぜて戦わせればいい。スキルを使えるモンスターと人間どちらが強いか試してみようじゃないか。」


獅子川は5人の仲間とともに研究者を追い詰めた。

血潮見が話を始めた。


「おい。こいつら全員殺していいか獅子川。」


瀬高も同調した。


「せ、せ、生命を弄んでいる節がある。」

式部はあまりこの実験に興味がなさそうだった。


「モンスターの研究自体はいいんじゃないか。そんなことより、俺の前頭筋を見るか。」

瀬高は獅子川さんの判断に任せた。


「あ、あなたの判断に任せます、獅子川さん。」


判断を委ねられた獅子川は結論を出した。


「この研究者全員、第3サーバーに送ろう。そして俺らがこの電脳城、雲上貝ビルを占拠しようと思う。」

式部は嬉しそうに答えた。


「そりゃあいい。面白そうだ。」


獅子川は研究者全員を捕縛し集めてメニュー画面を勝手に使用しまた、瀬高のハッキングも利用した。そうして、研究者全員を第3サーバーダンジョンカジノに強制転送させた。キルトッシュは獅子川に質問した。



「それで第3サーバーダンジョンカジノってなんだと思いますか。」


「あの画面を見れば分かる。」


その画面には獲得ポイントとランキングが書かれていた。

第1位ミノタウロスE-11 獲得ポイント432

第2位スケルトンY-9 獲得ポイント345

第3位レミザリアG-4 獲得ポイント334


「まあ見てろ。すぐに順位が入れ替わる。」


獅子川の発言通り数十分後、順位が入れ替わっていた。

ダンジョンカジノランキング

第1位研究者トリナ獲得ポイント765

第2位研究者レコ 獲得ポイント697

第3位研究者ダボリ 獲得ポイント679

ダンジョンカジノ。その名の通りプレイヤーはダンジョンで相手と交戦しひたすら倒してポイントを稼ぐ。ポイントが増えれば増えるほどお金も増えて、メニュー画面から食料や衣服、寝室、部屋を買うことができる。そうして死亡遊戯は続いていく。


レトファリックが目的を達成した事を確認してレトファリックは第1サーバーに戻る準備をした。


「占拠達成。では僕は帰りますね。獅子川さん。電脳城に乗り込むの楽しかったですよ。」


レトファリックに獅子川が答えた。


「ああ、また会おうレトファリック。」

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