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第37話 鯱千がレナリアを説得する、レトファリックカメレオンの能力使用

ゲームのNPCと人間であるプレイヤーの意識が入れ替わった世界の話。レトファリックらはゲームマスターの音源をかけて巨大なビリヤード台を使用しトランプカードを模した特別なビリヤードをすることに。オートビット・レナリアが不調でゲームから離脱してしまいゲームが進まなくなってしまった。重くなった空気の中、鯱千が直接的な言葉で説得を始める。

レナリアの様子を見てレトファリックが話しかけた。


「レナリアさん。難しい。やはり俺と田芽助は男だから怒りを増長させるだけみたいだ。」


長時間同じ状態が続きそうな雰囲気を変えたのは鯱千だった。


「羨ましいんだけど。なんで、峰未雨の抱擁は許してるの。女子は全員味方だと思ってる。人間を信用できないんだったら、剣で一撃でも与えたらいいよ。」


鯱千の言葉にレナリアが動揺して、目を向けた。


「エレミルの兵士は人間じゃない、人型の獣だよレナリアさん。後別にNPCだからって狙われた訳じゃない。前国王の時はプレイヤーの多くも犠牲になってたし。」


鯱千はレナリアの近くに行き、顔を近づけた。


「squiがゲームを続けてしまってる。多分だけどレナリアさん。あなたはsquiの手足としか思われてないんじゃない。あなたが人間を信用しない程じゃないけど私もNPCを信用してない。というか、人間は自分以外信じないことが多いよ。あなたがいつ生まれたのか知らないけどね。」


レナリアは実はsquiから自分が対戦相手によって消滅したら、別のNPCを登場させると言われていた。彼女は鯱千の言葉に鼓舞されて抵抗をやめた。


「可愛いじゃん。さっさとゲームをしようぜ。」


その後も鯱千と峰未雨に看病されて、レナリアは勝負に向き合えるようになった。

レナリアはもう一度squiの能力を使用した。


「ごめんなさい。squi。私からの情報も推測もちゃんと伝達しますね。これからはもっと連携したい。FONUMEES SKILL BALL squi」


〔情報の共有感謝致します、オートビット・レナリア様。レナリア所持FONUMEES ダイヤのKING squiを使用致します。〕


オートビット・レナリアが頬を上げ前を向いた。


「鯱千さん達人間と本気でゲームがしたくなりました。」


ゲームボードの上には手球が壁に阻まれないように置かれていた。squiが最低限のギミックで敵を足止めしたのは精神面の不安なレナリアの次のターンのためだった。


「squi。道具にレオリープ・カメレオンの能力が無いか調べる事って出来る。」


〔1ターン目の最中、対戦で使用する道具の通信が一つ増えました。現在はゲーム開始時に戻っています。〕


「なるほど。一度擬態して効果を試したみたいです。鯱千さん達ならやりそうですね。」

レナリアはその後同じ銃を取り出して、細工がされていないかどうかを銃口の中まで確認した。


「次はダイヤの9かな。」

ゲームボードに置かれていた5つの球を見て、彼女の眼は冴え、疑心暗鬼な表情を浮かべていた。オートビット・レナリアはエレミルでの悪夢によって、人間の憎悪が強いので今回のゲームに選ばれていた。そして、もう一つ。彼女の全てを疑う事のできる目が評価されていた。


「squi。もしかしてダイヤの9を突いたらお手付きですか。先ほどまでボードを見てなかったから右と左のダイヤの9どちらの球が死に球か、擬態したクラブの7の能力か判断しかねています。」

〔情報のみを伝達致します。得点を表示します。〕

〔オートビット・レナリア 3-6 挑戦者 レトファリック、峰未雨、鯱千、六衛田芽助〕


〔レオリープ・カメレオンの能力であれば中身のセンサーまで擬態する事が可能です。前回のターンまでに、挑戦者側が、モルホデフタ、テママリナネット、レオリープ・カメレオンの能力を使用しているため、その可能性は高いと推察できます。〕


「squiはあくまでFONUMEESとしての参加だから知ってても教えられないはず。先ほどまでの間にレオリープ・カメレオンが使用されているのであれば、死に球の使用はあり得ると考えます。」


オートビット・レナリアは、ゲームボードに置かれた6つの球の内、一つが偽物であれば、それはダイヤの9だと考えた。理由は、ダイヤの9がボードの上に2つあったから。


「なるほど。そうですか。人間と対等に向き合ったのは初めてなので嬉しい。右か左のダイヤの9がクラブのが擬態したものみたいだし間違えた場合はダイヤの9が最も小さい数字なのでお手付きになりますね。得点が入ってないという事は、ボールを能力で操作して落とした。レオリープ・カメレオンであれば、更なるケースも考えられます。」


自分がゲームボードから目を離している間にボールの入れ替えがあった事に気付き、しばらく思考した後、彼女は決断した。


「これはボールの散らばり合い具合から右のダイヤの9の位置に普通ボールは置かれていない。右のダイヤの9を落下させようと思います。」



レナリアが腰を低くして前かがみになった。今までとは違い一点を狙って四角い棒の銃を撃った。


レナリアの推測は正解だった。


操作はレトファリックに任せ、田芽助はそれを隠す。レナリアはゲームに集中していない様子からsqui任せの復讐だと考え、自チームの所持しているFONUMEESが相手には知られないため、クラブの7レオリープ・カメレオンの能力まで目が行き届くほど冷静ではないと判断した。


レトファリックがクラブの7レオリープ・カメレオンの能力を使っていたのは始めのターンだった。


「クラブの7を何と入れ替えればいいんだろう。相手のターンが終わればいいんだから、スペードの10やクラブの11辺りがいいだろうね。」


田芽助はレトファリックに反応して、作戦を伝えた。


「とりあえずレオリープ・カメレオンの擬態能力で、ボールの内どれか一つを擬態させればいいと思います。」


鯱千は、相手の最後のターンがから始まると予想した。

「とりあえず、オートビット・レナリアの最後のターンはハートのQueenになりそう。その前にビリヤード台で一番小さい数字に化けさせよう。相手が2択を間違えればターンが回ってくる。」


レトファリックは鯱千のアドバイスを聞いてハートのQueenをクラブの7に擬態させることにした。

〔オートビット・レナリア 12-13 挑戦者 レトファリック、Yobase、峰未雨、鯱千、六衛田芽助〕


彼女の推測は正しく、お手付きにはならなかった。


「あ、はは。まじかよ。まさかボールの散らばり合い具合でどちらがクラブの7が擬態した死に球かすぐにばれるとは。こちらのブラフを読まれるとは思わなかったなー、レナリアちゃん。切り替えが半端ないね。」


「テママリナネットの能力で防御します。すいません。レナリアさんに同情してました。」


「賞賛してる場合じゃない。レオリープ・カメレオンの能力であれば、squiであっても数字で騙す事ができると気付かれた上でダイヤの9を丁寧に落とされたんならここからダイヤの13まで持ってかれるぞ。」


峰未雨は危機感が無く田芽助は焦って準備をし始めた。


鯱千もレトファリックも落ち着いた表情を繕ってはいるが、レナリアの観察眼が想像を超えたため、本気で連続得点を止めにかかっていた。

「テママリナネット FONUMEES SKILL BALL」

「レオリープ・カメレオン FONUMEES SKILL BALL、

モルホデフタ FONUMEES SKILL BALL」

能力を総動員して、レナリアの好調なプレーを止めようとしていた。

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