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第31話 ゲームマスター緋戸出セルの遺言

ゲームのNPCと人間であるプレイヤーの意識が入れ替わった世界の話。ついにレトファリックが田芽助らと合流した。巨大なビリヤード台はデジタル画面になっており、スペードの10の導出が語られ始める。そして棺にはゲームマスターの遺言が置かれており…。

峰未雨と鯱千がまず反応した。


「は」「嘘」


次にレトファリックが反応した。

「100万人以上の人間の知識と最新技術を結集して生まれたsquiがダイヤのKING?は、はは。へーお前敵なのかよ。」


また、レトファリックは衝撃の事実に少し動揺を見せた。


「驚いた。squiが敵だと認識出来ないとこの問題が正答だと確信できないのか。」


峰未雨が戸惑っていたがすぐに反応した。


「DESSQシステムのAIが敵なんて無理じゃ。これじゃメニュー画面開けない。」


しかし、田芽助だけが冷静にsquiに質問した。


「それでは、今ここであなたとゲームか何かで対戦しなくてはいけないという事ですか。」


squiが質問に応答する事は無かったが田芽助の推測は当たっていた。


〔…それでは、これからこのゲームボードでFONUMEES SKILLをBALLにしてビリヤードを用いたゲームをしましょう。〕


デジタル画面の台に大きくゲームの概要が表示された。


〔A BIRIYARD-LIKE GAME USING FONUMEES SKILL BALL〕


「完全に失敗した。squiとゲームが始まってしまった。負けたら消滅とかあるかもしれない。こ、これは英語。誰か説明してくれ。」


レトファリックの声掛けに峰未雨が応えた。


「えーとビリヤードのゲームな事は分かるけど。」


「これは、さっきの説明のまんまだよ。トランプカードになってるFONUMEES SKILL BALLを使ったビリヤードみたいなゲームと書いてあるね。」


〔対戦形式1対4。 挑戦者レトファリック、峰未雨、鯱千、六衛田芽助。ゲームのルール、白色のボールを8つ配置。それぞれにスキル画面のトランプカードになっている表面のFONUMEES SKILLをBALLにして表しています。〕


〔表面の内、判明しているカードのみマークを表示します。クラブの7該当モンスター、レオリープ・カメレオン。ダイヤの3該当モンスター、テママリナネット、モルホデフタ。〕


黒色、青色、赤色、緑色のそれぞれのトランプのマークが描かれたボールが8つ。ビリヤード玉の大きさの丸型の凹みに現れた。


〔ゲームボードの右下の丸型の凹みにトランプのマークに沿って描かれた4色のボールを8つ出現致しました。手に取ってご確認下さい。〕


「このボール、4色のトランプのマークが描かれていて、数字が書かれてる。」


「4色のボールの模様を見ると明らかにトランプカードだ。ビリヤードをするにしても違和感が拭えない。」


レトファリックが、ボールに絵が描かれている事に気づいた。


「このクラブの7のボールには、緑色のレオリープ・カメレオンが描かれてるよ。」


六衛田芽助も絵に気づいた。


「このダイヤの3の裏にはテママリナネットの絵が描かれてますよ。」


〔ボードの右側にある棺の中に今回のゲームで使用される白いボールがありますのでお取りください。白いボールがボードに置かれた時、ゲームの説明を続けます。よろしくお願いいたします。〕


「あの白い花が咲いている棺か。」


レトファリック一行は棺まで向かい、峰未雨が鯱千を静止させて、レトファリックが棺を恐る恐る開けた。棺の中身には白いビリヤード玉のサイズのボールが入っていた。

レトファリックはそのボールを手に持って絵を見ると驚いた。

「モルホデフタの絵だけが描かれてる。」

そこには紙が置かれていた。

紙にはこう書かれていた。


「こんにちは。ダイヤの3所持者。始まりの君へ。私はゲームマスターの緋戸出セルだ。DESSQ開発者リーダーを務めていた私、ゲームマスターはいわば、ゲームの世界での神だ。神がいれば、平等にルールが与えられ、ルールを侵せばシステムに抵触し殺す事もできる。それは君達にとっては平等だ。でもね。それは平等に見えているだけで君達は私の下僕なんだ。君達はシステムの中で予測できる行動をする事が多い。NPCに見えてしまう時があるんだ。


しかし時々、ゲームの世界でただ写真を撮っているプレイヤーの姿を見ると、君達を試したくなってしまった。私が見ているというだけで君達は萎縮してしまう。神は存在するだけで人間全てを威嚇できるからね。現実の君達も空や海、世界のありとあらゆる物体に神が存在していると考え行動する。私が現実主義MMOのDESSQを作ってから、時間が経つにつれて、世界を創造したゲームマスターこそが人間であるプレイヤーを監視している事で抑制していると気が付いた。DESSQを開発した神などとお膳立てされる私はこの世界に不必要だと思ったんだ。


だからね。私のいない世界を生み出してみた。私よりも賢い、DESSQ総ユーザー1000000人のデータ、その他も含め数多の情報を学習させたsquiを神とする事にして私はこの世を去る。この新しいDESSQを楽しんでくれると心から嬉しい。

DESSQ開発者 緋戸出セル」


squiの衝撃を上回り、再び4人とも混乱していた。


「これは、ゲームマスターはもう死んだって事ですか。なぜ。どうやって。」


「じゃあこれは緋戸出セルの棺。」


「自分も意識体となってDESSQ内のユーザーとなり完全消滅を選んだとしたら。」


「なんて迷惑な話なんだ。このデスゲームの全てを生み出しておいてゲームマスター一人で一番早く消えるなんて。」


田芽助が違和感に気が付いた。


「意図は分かりますが、変ですね。確か緋戸出セルはかなりDESSQを積極的に楽しむ方だった気がします。だからこそ、この混乱に陥れる事件を引き起こした。なぜその彼が自分のいない世界を作り出しているんですかね。」


「もう、やりたい事も無くなって飽きてきてたんだろ。お金もあるしな。ただ、この棺で今回の事件の主犯が緋戸出セルだと確定したな。もうこの世にはいないならデスゲームはシステムに沿ったゲームクリアでしか終わらなさそうだ。」


「緋戸出セルが空の景色もフィールドもDESSQの全てを生み出した神。毎回イベントを盛り上げるエンターテイナーがまさか、こんなデスゲームを開催する人とは思わなかった。意外と怖いなあ。神って言われたら普通嬉しいのに。」


意外にも場を静止させたのは峰未雨だった。


「それでもここに棺が置いてある。ゲームマスター…緋戸出セルは生み出したとは思っていないんじゃない。」


「そうか。現実主義のMMOだからね。」


田芽助が、ゲームマスターの思い、苦痛を理解したような素振りを見せた。


「僕は孤独だったんじゃないかなと思います。ただ、これでゲームマスターはいない。やはり、ゲームクリアをするしか無いんですかね。」


レトファリックは、現実世界に戻る他の方法を模索しようとした。

「一旦、squiとのゲームに戻って現実世界に戻る方法が他にないか調べようよ。今の状況がこれじゃ分からない。squiが教えてくれるかもしれない。ゲームに勝った前提の話だけどな。」


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