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第17話 レトファリック、地下遺跡で怪文書を見つける。

ゲームのNPCと人間であるプレイヤーが入れ替わった世界の話。六衛田芽助は北極のカードに勝利した。対してレトファリックは、地下の推奨レベルの表示を見てカバリウレムから逃げ出していた。逃げた先には部屋があり、そこでは誰かが書いた文章が置かれており…。

もしかしたら、死体のモンスターの部屋を見つければ穴を使って出られるかもしれない。とにかく血のある部屋を探さないといけない。


彼はカバリウレムの腹の中を思い出そうとしたが、方向は分からなかった。

『もっと隅々まで神経を張り巡らせれば生きて帰れたかもな。』


そんな遺言が頭に浮かんだ。


それでもレトファリックなりに神経を張り巡らせており一歩間違えれば死ぬという状況だった。足に疲れが来て息を切らしながら走っていた。一瞬めまいがした。近くを見ると何の気配もない部屋があった。彼はひとまずそこで休もうと判断した。


そして現在に至る。


この地下遺跡で圧倒的なlevel違いのモンスターがいてひとまずよく生き残れたなとレトファリックは自分に感心した。


暗い部屋でうずくまり、この地下遺跡をどう抜け出すか考えていた。煙玉も簡易爆弾もなくなった彼はあの文言を思い出した。


[この先 地下遺跡 10階 推奨level30]


「うん。無理だわ。」


彼は生き残ることすらどうでもよくなっていた。もうこの石で出来た寝心地の悪そうな部屋から動かないでおこう。心が落ち着く場所に彼は留まることにした。


カバリウレムが来る前に準備できることを考えひとまずランプで明かりをつけた。


本棚があった。本が数冊置いてあり、近くにはガラクタのようなものがあった。


「なんだこれ。マジックハンドみたいだな。手で持てるバネの先に石がついてるだけ。でも思った通り動かねえ。バネが長いわ。あはは。」


近くのガラクタはどれも戦闘では使えないものに見えた。


「忘れてた。この周辺の死体のモンスターからアイテムを漁れば何か戦闘で使えるものが手に入るはずだ。」


普段であればアイテム集めに必死だったが、今は違う意味で必死寸前だった。

明かりの灯った部屋を抜け、カバリウレムによって残骸となったモンスターたちからアイテムを拾い集めていた。


電気系モンスターからは乾電池のようなジジベムパワーというアイテムが手に入った。狼モンスターからはウルフの牙が手に入った。level20辺りにふさわしいほど頑丈で大きかった。


慎重にアイテムを漁っていると動かない死体からつるのようなものが迫った。つるで体を巻きつかれ身動きが取れなくなった。首につるが侵食したと思い、咄嗟に手に持っているジジベムパワーを投げた。


植物系モンスターのゲラリオレミゾカはつるで体を守り何とか一命を取り留めていた。体が動かないほどの衝撃をくらってもつるだけは動かすことができた。


アイテムとして保管している内では乾電池のような個体だが、使用すると前方に放電の衝撃波を当て、植物モンスターのレミゾカは動けない状態になった。


「すごいなこれ。」


レトファリックは無意識で次の危機が来た時に使用するアイテムを手元に持っていることが功を奏した。


「危なかった。一旦部屋に戻っておこう。その前にこのジジベムパワーを集めておくか。」


相手のlevelを再確認し危険を自分に言い聞かせるようにアイテム漁りを再開した。


「よし。モンスターの気配はなさそうだな。」


潜ませた声で部屋の安全を確認し、ランプを再び点灯させた。


「相変わらずこの部屋だけは生活感があってなんか落ち着くな。」


既に地上に戻ることを諦めているYobaseにとって居心地の良い本とガラクタのおかれたこの部屋はやすらぎだった。


ひとまず本棚でも漁ってみるか。


石でできた本棚には本やつるでできたインテリアのようなもの。紙や、固い槍先のようなものがあった。


「俺のように迷い込んだやつがいたんだろう。気持ち分かるぞ。転送先が同じだといいな。」

YobaseはNPCとなり下僕のように働き自分たちへの復讐を受ける覚悟、諦めのようなものができていた。すぐに殺されるたとしても仕方がないと思うようになっていた。


本を手に取り中身を読むと変な内容が書いてあった。


[きききようはじっけんがはじまるひひで。わたしはにににんげんさんとはなしができききるようにななりたたいのででここことばをおぼぼぼえられれれるよおようにがががんばりります。]


「これはなんだ。文字があまりに下手だ。子供でもこんなに文字の一部が尖ったりするか普通。」


[2つにちめ。ほんじつはてつだいのかたがきてくれたのでていねいにもじがかけます。いえにはいんてりあをかざるらしいので、げらりおれみぞかさんをたおし、てにいれたあいてむをつかったしょくぶつのいんてりあをつくりました。]


「まてよ。こいつ人間と話がしたいって、まさかモンスターか。」


[8日目。ようやくいっぱん的に話せるようになりました。わたしはもともとひとがたのごぶりんだったので人間のように文字を書いたり話たりすることは他のモンスターより得意でした。]


「なんなんだよこれ。いつまで続いてんだよ。」


[30日目。私が正式に学習材料に選ばれました。VARMARD PARADOXという近未来な場所に案内してくれるみたいです。ようやく人間さんと仲良くなれると思いました。でも、私は文字を書くよりも絵を描く方が楽しいみたいなので手伝いの方に内緒で日記をさぼり絵を描いていました。最後まで見てくれた人に場所を教えようと思います。」


Yobaseは書いてあった通り、がらくたの中を漁り、鉄の箱を見つけそれを開けた。


彼は怖いと感じると真相まで突き詰めるようになっていた。


YobaseはNPCとの対話を見てあることに気が付いた。


「これは鳥か。」


Yobaseはあまりの衝撃に本とこの絵から目を離せなかった。地下遺跡という絶望的な場所で寂しく感情も不安定だった。声も制御できてはいなかった。


「まずい。一旦落ち着いて整理しないといけない。ゴブリンが人間によって実験を受け人間と同じように話せるようになった。そして何らかの学習材料にされた。」


紙の中には人間の絵や鳥のような絵が描かれていた。


人間に関しては身近にいたのか人間と同程度上手くかけていた。


「これ。まさか飛行機か。これはパンチする武器か。」


鳥の絵だと思っていたがよく見ると目が四角くくちばしも小さい。



「おいおい。僕もこのDESSQに住んでるけどここゲームの中の世界だぜ。勘弁してくれ。」


紙にはこう書かれていた。


「空にこの乗り物で飛んでみたいな。」


「無理だろ。上空まで判定がねえ。この世界の限界だ。」


彼はもう一度冷静になり、被検体となったゴブリンの思考を汲み取ろうとしてレトファリックはアップデート前のNPCとの対話を見てあることに気が付いた。


「そうか。僕らNPCと違って後から自我を持ったモンスターにとってここが世界なんだ。そしてスポーン場所、生息地域が決められていて行動できる場所が少なかったから現実の人間さん達と入れ替わったんじゃないか。」


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