第10話 レトファリックvsクロシス決着、JOKERCODE
元人魚である彼は自分が人間として扱われている事に腹を立てたが居場所を悟らせないため声を発する事が出来なかった。言葉とは裏腹に無情にクロシスはレトファリックに杖を向けた。
「しかしな。私にも宿っているのだ。復讐から生まれる人間と似た欲が。」
クロシスの最大火力の魔法陣は洞窟の範囲を超えていた。
「私も無事ではすまないだろう。だが油断は出来ない。強敵には全力で葬る。最期に一言言う隙をやる。」
クロシスは彼なら氷の姿になってさらに奥に逃げるかもしれないと思った。そうしたら魔力を使用したことによりまた小さく化けたら流石に魔力探知が出来ないと思った。
彼は死を確信し人間の姿になった。死を体感するという行為は生物上普通出来ない。Kamesisiは死を確信し本能でも理性でも理解した。
「僕もあなたの仲間になれたと思うよ。」
僕は最後まで戦うのか。
「カメレオンの7…。」
死を完全に悟った彼が出した結論は悪あがきだとクロシスに思わせた。
実はこれがカメレオンの作戦だった。実は柱の前でクロシスの魔法を受けようとしているレトファリックはレオリープ・カメレオンが彼に擬態した姿だった。
生物に化けると動けないだからこそ柱の前から動けなくなっていた。
柱の前にレトファリックが移動した時に遡る。レオりープ・カメレオンがレトファリックの前に姿を現した。
「レトファリック。僕、カメレオンが君に擬態してこの柱の前に座っているから君は氷の粒にでも擬態して逃げるといい。僕の事はきにしなくていいよ。」
「そんなどうして、カメレオンはどうなるの。」
「僕は一度消滅するだろうね。なんせエルフの族長の本気の一撃だ。まともに魔法を食らったら仮に回復できたとしても長い時間がかかるだろう。それと大事なことだけど僕が消滅するとカメレオンの7のスキルには制限がかかってしまうんだ。スキルの回復には丸一日かかるだろうね。」
レトファリックはカメレオンに質問を投げかけた。
「なんで僕を助けてくれるの。」
レオリープ・カメレオンは答えた。
「武器ももたずにモンスターに倒させてくれなんて普通は頼めない。君の最後まで諦めず生存の道を懸命に探す姿を見ていたら感動した。君のことが気に入ったんだ。」
レトファリックは氷の粒になってクロシスから逃げ出した。
クロシスは物音に気付きはしたが魔法の詠唱中のため反応できなかった。
「最期まで足掻くとは男らしい。ファイアブラスト。」
魔法が放たれると同時にレトファリックはレオリープ・カメレオンを思い出し、洞窟の出口に向かって懸命に逃げていた。しかし逃げている最中、黒い霧が彼を覆いつくし、転送させられた。
魔法は柱を貫通し地面を砕く程だった。レオリープ・カメレオンは詠唱直後カメレオンの姿に戻り逃げたが、魔法を直接体に浴びる事になった。
洞窟が崩れ落ちクロシスも逃げても無駄だと分かっていたが入り口まで何故か歩いていた。しかし戻ろうとして下敷きになった。
squiは皆に連絡をした。[一時的にクラブの7が消滅しました。回復まではまだ時間がかかります。しばらくの間お待ちください。]
「あれ今の黒い霧はなんだ。洞窟の外に転送させられた。」
レトファリックは気が付くと洞窟から森に出て、何とか逃亡に成功すると、あるパーティーがレトファリックの前に現れた。
まず、Yobaseがレトファリックに話しかけた。
「おい。レトファリックじゃねえか。カードのスキルを手に入れたのをついさっきsquiからの連絡を知って、お前の走った方向からインスタ―ボの森じゃないかという話になって探してたんだ。」
六衛田芽助もレトファリックに挨拶した。
「初めまして。レトファリックさん。あなたがカメレオンのスキルを獲得した人ですね。Yobaseさんと同じパーティーの六衛田芽助って言います。」
「よろしくね。僕はレトファリック、15歳の元人魚だよ。」
峰未雨は普段は人見知りのはずだが相手が幼い少年という事もありレトファリックの顔を見て言った。
「元人魚ってどういうこと。てかまだ少年じゃん。可愛いね、本当にカードのモンスターを討伐したのかな。ねえ頬触っていい。」
「辞めてください。はずか…。ぜひ一度やってみてくれませんか。」
鯱千はレトファリックの言動を記者のような視線で見ていた。
「あなたが、最速カードモンスター討伐者のレトファリック。うんうん。体は貧弱、足腰もそんな強くない。この洞窟の推奨レベルから考えると生きて帰ってこれたのは奇跡だね。」
「自分もそう思います。」
レトファリックとYobase一行は合流を果たし団らんしていると、後方から敵が来ていることに気づいた。
「誰だ。エルフか、レトファリックがここにいる事は知らないはず。」
すると草むらからドワーフの一団が現れた。
「再び奴隷として生活するあの悪夢の日々を繰り返すわけにはいかない。カード所持者を殺せ。」
「逃げろ。お前ら。」
レトファリックとYobase一行はドワーフから逃げていた。
振り返ると剣や斧を持って戦士であるドワーフたちが迫ってくる。恐怖の光景だった。
少しでも止まったらドワーフに捕まって殺される。
走って逃げていると六衛田芽助が木の枝につまづいて転んだ。
ドワーフは一瞬の隙も逃さなかった。ドワーフの戦士の斧が六衛田芽助を襲った。
しかし、斧は六衛田芽助をかばったYobaseの肩を貫いていた。
「Yobaseさん。」
「田芽助、俺の事はいいからお前は逃げろ。」
六衛田芽助はドワーフの標的が田芽助からYobaseに移ったことを知った。六衛田芽助は起き上がりすぐに剣を構えた。
「僕も戦います。」
危機にすぐに気づいた峰未雨もスキルを使用した。
「タイジットカーフ、クロウメハカアマル」
彼女は黒い梅模様の袴を着た虎になった。月が彼女を照らし妖艶な雰囲気を纏っていた。
「Yobaseさん今助けます。」
斧を向けたドワーフを追い払おうとした。
しかし相手はlevel30の強敵だった。峰未雨の攻撃が意味を成さなかった。
「峰未雨、田芽助、このドワーフ達は俺らが勝てる相手じゃない。体がまともに動かない俺を置いてとっとと逃げろ。」
峰未雨は彼の言葉を聞いて動揺した。
「Yobaseさんがいなくなるなんてそんなのいやだ。」
田芽助がYobaseの覚悟を受け取り峰未雨の手を引いて逃げた。
「峰未雨、田芽助、鯱千、短い間でも楽しかったぞ。生きてまた会えたら一緒に担々麺食べようや。」
Yobaseは肩に斧が刺さったまま無理やり立ち上がりドワーフを挑発した。
「お前らドワーフの相手は俺一人だ。簡単に死ぬと思うなよ。」
ドワーフの戦士の群れは剣や斧で一斉にYobaseを襲った。地獄絵図だった。
「小さい頃はこういう場面になると足が竦んで動けないこともあったっけな」
Yobaseが子供の時、親と一緒にスキーに出かけていた。本名は夜場かなせという名前だ。
「うわ。」
スキーボード教室で初めて八の字を習い練習していた。
「なあかなせ。そんな先生の言った通りにやらなくていいんじゃね。ほら、あの上の大人の人達すげえぞ。でこぼこした道を猛スピードで駆け下りてる。あんな感じでやらね。」
「ちょっとやってみる。」
「OK。競争しよ。」
元々、夜場は臆病で素直な子供だった。比較的なだらかな雪の斜面を上手い人の真似をして下っていた。
「うわわわわ。ばふ。」
彼は斜面を下るスピードが速かったので反射で転んでいた。
「かなせー。たく、兄貴が教えてやるしかないな。ついてこいよ。」
その後、何度かの転倒ののち素早く、的確に滑れるようになっていた。
「よし。集中しよう。」
上達が早く何度も往復していた。
「一旦休憩でもしない。かなせ。」
「いや。あと3回。」
兄弟が二人で何度も素早く滑っているのを周囲が見ていた。
「ねえねえ父さん。あの二人凄くない。」
「雪が多めに積もっているところも綺麗に避けて滑ってるな。上級コースでも大丈夫そうだ。」
「かっこいい。」
兄貴は手を振っていた。俺は聞こえないふりをしていたが、偶然目が合い同い年くらいの子が驚いた表情で見てくれていた。
俺は内心浮かれていた。次滑った後、まだいたら挨拶でもしようかなと考えていた。
「まあ3回ならいいかもな。次は同じスピードで滑ってみるか。かなせ。」
「もっと上手に出来る気がする。」
「スキー楽しいな。有名人になった気分だ。お前さっき顔赤かったぞ。気になる人いたんだろ。」
「別にいないけどね。…秘密。」
「次降りた時に教えろよ。」
リフトに乗りながら、俺と兄は談笑していた。俺は有頂天になっていてあまり、前方を見ていなかった。
「なあ。雪がかなり積もってきたから一回部屋にもど…おい。どこだ。かなせ。」
白い線より手前で腰を下ろし俺はリフトから落ちた。
「おい。かなせしっかりしろ。大丈夫か。」
「うえ。え。あれ風が。」
リフトの下には網がかかっており俺はそれに救われた。
その時頭の一部が網から出ており、風を感じて振り向き下を見つめた。
今でも覚えている。網すらなく見た景色。リフトから下20m以上先に人が通れないほど積もった雪があった。
実際は分からないが落ちれば死んでいたと思った。俺は動けなくなっていた。気づいたら体を起こされ部屋についていた。次の日からは親とリフトに乗ることになった。
それから大事な場面では急に怖くなり足が動かなく事が多くあった。
現実に戻る。ドワーフらの猛攻がYobaseを襲った。
「ありがとう。最年長の務めこれで果たせたかな。」
YobaseはHPが0になりその場で消滅していた。月明かりが彼の最期を看取っていた。
六衛田芽助は泣きながら逃げていた。
「僕のせいだ。僕がこけてドワーフに追いつかれたからYobaseさんが犠牲になった。僕はもう無理だ。」
レトファリックと峰未雨、鯱千、田芽助は無きリーダーYobaseの事を想って泣いていた。
レトファリックが周りを鼓舞した。
「Yobaseさんのためにも僕らは生きなきゃいけない。リーダーの分まで俺らは生き抜かなきゃいけない。違うか。」
鯱千が彼に答えた。
「そうね。まだ生きて会えるかもしれない。この世界の事まだ完全に分かってないから。希望を捨てちゃいけない。」
峰未雨はYobaseがいなくなったことで自我を保てないほど怒り泣いていた。
「あのドワーフども、強くなったら絶対皆殺しにしてやる。」
田芽助も自分が逃げるのが遅れたせいでYobaseさんを失ったことで罪悪感を抱えながら走っていた。
「僕のせいだ。僕は無力だ。とにかく井戸まで逃げないと。」
それからレトファリック一行は井戸の中まで走って逃げていた。
ドワーフの追手がこないことを確認して井戸の中に4人で逃げ込むとYobaseがいなくなって重い空気になっていた。
峰未雨が重い口を開いて話し出した。
「なんでレトファリックに会いたいからって外に出たんだろ。Yobaseの言った通りこの井戸の中にいれば安全だったのに。」
鯱千は会ったばかりのはずのYobaseを失ったことで悲しんでいた。
「うちもYobaseに会ったばかりなのに失うと寂しいな。担々麵食べたの悪かったな。」
六衛田芽助は何とか口を開いて話し出した。
「確かに此処にいれば命を失う必要はなかったですね。本当に申し訳ありません。実は僕の不注意でYobaseさんを失ったんです。」
六衛田芽助は自分が転んだことでYobaseが身代わりになったことを話した。
「そんな嘘でしょ。完全に戦犯じゃん何やってんの。」
峰未雨は怒りで田芽助に剣を向けた。
きつい言葉を言われ剣で刺されると思った六衛田芽助は身構えた。
「Yobaseを返せ、返せよ田芽助。」
剣で刺そうとする所をレトファリックは抑えた。
「待ってください。田芽助を生かす判断をしたのはYobaseさんです。田芽助さんをここで殺してもYobaseさんの顔が浮かばれません。僕らは本気で逃げていました。故意じゃなく事故です。」
峰未雨がレトファリックの抑えた手を払った。そして田芽助に鼓舞する言葉を吐いた。
「六衛田芽助、お前は死んでも生きなさい。何があってもこのデスゲームを生き抜くの。」
六衛田芽助は頷き涙を見せていた。
「分かりました。何があっても生きてみせます。」
そのころ、ウェルジーナ、ドゴスペラ両国は相手がエルフだと勘づき、今のlevelでは太刀打ちができないと思い作戦を練っていた。
彼らが落ち込んでいた時、squiからまた連絡が来た。
[おはようございます。squiです。 FONUMEES SKILL JOKER CODEを使用したものが現れました。回答までの時間は3分です。
正解の場合は、報酬として該当スキルの一部、システムに干渉しない願いを叶えることができます。
不正解の場合はプレイヤー名公表の上、消滅となります。
また、次回は入手可能なカードを全て集めるまでFONUMEES SKILL JOKER CODEは使用できません。該当者へ。本当にコードを送信いたしますか。]