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63話 鑑定眼の進化


 剣聖ってたしかさっき【 鑑定眼 】で視たけど、攻撃スキルの欄にあったよな。


「【 剣聖 】を発動したぞ。お前も本気を出せ!」


 玲央は剣を構えている。

 発動したといっても、見た目上は特に変化もない。


 ブシュッ――


「……っ!?」


 あれ、なんか痛いんだけど。

 そう思った時にはすでに俺の横腹に大きな刀傷ができており、そこからドバドバと赤黒い血液が流れ出ていた。


 俺自身全く反応ができなかったが、たしかに【 自動反撃 】は発動している。

 その証拠に致命傷は避けることができた。


「かろうじて致命傷は避けたようだな」


 玲央の声が俺の背後から聞こえてくる。

 さっきまで目の前にいたはずなのに。

 振り向くと、たしかにそこに奴がいた。

 つまり俺を刀で斬ると同時に、移動したのだろう。


「痛みで声も出ないか? そんなお前に今何が起きたか説明してやろう。察しはついているだろうが、俺はお前をすれ違いざまに斬りつけた。ただそれだけだ。つまり俺のこの【 剣聖 】というスキルは斬るという動作全般を極限にまで能力を高めたもの。他のスキルみたく炎を出したり爆発させたりなんて派手なもんはないが、剣技では最強を誇れる。そう、このスキルに敵はいないんだ」


「き、効いてねぇなぁ……。それにただ剣を振るだけのスキルなんて怖くもなんともない。剣聖ってのも大したことないみたいで良かったわ」


 と少し強がってみたのはいいものの、現状の問題点が多すぎる。

 まずあの剣技、全く動きが見えない。

 かろうじて【 自動反撃 】が反応してくれているが、それでも完全に避けきれないときた。

 それに……めっちゃ傷口痛いし……っ!!!


「ふん、強がっているのも今のうちだ」


 ザシュザシュッ――


 再び玲央は前に出て、攻撃を仕掛けてきた。

 というのも、彼の動きを見てではなく【 自動反撃 】が自分の中で発動した時に自覚ができる。

 今の斬撃はギリギリで避けることが出来た。

 つまり全て避けられないわけでもなさそうだ。


 ブシュッ――


「く……っ!」


 それでもやっぱり何発に一回かはヒットする。

 直接攻撃を喰らうなんてあまり経験のないことだから痛みや死に対する恐怖が俺の脳裏に過ぎった。


 怖い。

 素直な感情が俺の中で渦巻いていく。


 恐怖なんて感じるのいつぶりだろう。

 それこそ冒険者になってからは【 不屈の闘志 】が発動するおかげで恐怖心を感じることがあまりなかった。

 しかし今、自身の中にそういう感情があるということは本能が今の俺では玲央に勝てない、そう言っているということだ。


「戸波海成、それがお前の全力ならばこの俺には勝てない。即刻降参しろ」


 俺は玲央のその言葉に一瞬頷きそうになったが、ギリギリのところで踏みとどまる。

 そしてなんのために戦っているのかを思い返した。


 そうだ、これはヨウスケ……俺の友達を守るため。

 いや、それだけではない。

 地下5階の調査のためだ。

 あの先に何があるか、それを知ることができれば玲央の様子がおかしくなった原因だって分かるかもしれない。

 紗夜さんだって玲央のこと心配していた。

 あの2人には兄弟として仲良く暮らしてほしいのだ。

 あんな不安そうな紗夜さんの顔、俺はもう見たくない。


 ニューロヴォアのことだって……っ!

 俺はネクサリウスに行った事がないから実感が湧かないけど、瑠璃にとっては仇のはず。

 それにこのまま放っておけば地球だって危険だ。

 その決定的な手がかりがその先にあるとしたら、俺は知りたい。


 この一戦は状況を大きく変える可能性を秘めているのだ。


「俺は……っ!」


「なんだ? 降参するつもりになったか?」


「俺は……諦めないっ! ここでお前を負かして、俺の言うことを聞かせてやる!」


「そうか……。なら俺もこのまま全力でいく」


 玲央は再び剣を構える。


 決めた――。

 俺はこの戦い、死んでも勝ちとると。


 その気持ちに呼応したのか、


 (通常パッシブスキル【 隠蔽 】をLv 10からLv 7にレベルダウンさせることで、スキルポイントを1000得ることができます。スキルポイントを2000使用して専用パッシブスキル【 鑑定眼 】をLv 1からLv 2へ進化させますか?)


 呼びかけていないにも関わらず、おそらく最善であろう手を提案してきた。

 足りないスキルポイントを補ったのか。


 目の前には戦闘体制に入った玲央。

 【 剣聖 】によって極限にまで高めた能力。

 斬りかかってくると思った瞬間にはもう手遅れになるくらい速い。


 これはもう迷っている暇はない。


「ステータス! 答えは『はい』だっ!」


 別に声に出して返事をしなくても良いが、勢いで発してしまった。

 それによって変な注目を浴びる。


「……っ? 気でも狂ったか?」


 そう言いながら玲央は斬りかかってきた。


 速い。

 彼の太刀筋は振り上げた右上から斜め下にかけて振り下ろされる。

 その剣には明確な殺意が隠っている、そんな気がした。


 シュッ――


 俺は体を逸らして避ける。


 シュッ――


 またしても避ける。


 三太刀目、右から左へまっすぐ横に軌跡が描かれた。

 俺はそれを宙に舞うことで、躱し、【 自動反撃 】によって与えられた攻撃の選択肢によって空中蹴りをかます。


「ぐ……っ!」


 その攻撃は見事玲央の頭部へ命中し、【 剣聖 】の手が一瞬緩んだ。

 そして大きく見開いたその瞳は俺を見ながら何度も瞬かせる。


 攻めるなら怯んだ今のうちだっ!


「【 アークブースト 】」


 シュシュッ――


 駆ける。


 駆ける。


 吸収した魔力を脚力として放ち、俺は最速で玲央の周りを駆け回る。

 すでに俺を見失ったタイミングを見計らい、背後へ回り込んだ。


「【 アークスマッシュ 】」


 玲央が俺に気付き振り返ろうとするが、もう遅い。

 吸収した莫大な量の魔力は【 アークスマッシュ 】によって右拳へ集約され、俺はそれを玲央へ直撃させたのだった。

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