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53話 ようやく2人になれたな


 (専用パッシブスキル【魔力吸収】を発動します)


 ここでそれはヤバいって。


「……なっ!?」


 彼女が纏っている樹の根がみるみるうちに身から剥がされていく。


 吸収する過程で初めて気づいたが、両足のふくらはぎにも樹の根が巻き付いていた。

 あぁ、これが彼女の動きを速くしていたんだな。


 そして全てを吸収し終えた時、瑞稀を見るとその場で呆然と立ち尽くしていた。


「なにそれ……」


 どうしよう、彼女めっちゃ落ち込んでる。

 そりゃあんだけ戦いを楽しみにしていたのに、こんな結末ないよな。

 どう見ても反則、そもそも俺には【 自動反撃 】で避けていたんだし、実力的にはボロ負けであって……。


「瑞稀……その、これはだな……」


 だめだ、言い訳が思いつかない。


「海成くんすごいやんっ!」


「……へ?」


 思っていた反応と違うかったので、素っ頓狂な声が出てしまった。

 あれ、落ち込んでたんじゃないの!?


「いや〜武闘家ってそんなことできんねやな! なぁ、まだ隠してる技あるんやろ? 続きやろーや!」


 そう言って彼女は再び構え始める。


 マジ? まだ戦うのか!?


「ストーップ!! 終わりだ終わりっ!!」


 試合を止めに入ったのは、さっきまで楽しそうに観戦していたリーダーだ。

 この人に戦いを止める脳なんてあったのか……いや、失礼だな。


「えーっ! 戦えゆーたんリーダーですやんっ!」

「その理屈で言うと、止めるのもリーダーで正しいんだよな?」

「グッ……。それはそうかもしれへんけども……」


 よく分からないが、瑞稀が言い負けたらしい。


「なら終わりだなっ! 恒例の罰ゲームも無しでいい!」

「え……よっしゃー!! 内心めっちゃビビってたねんなぁ!!」

 

「え、まじか!?」

「こりゃラッキだな!」


 瑞稀含め、他のメンバーは大喜びしている。

 一体どんな罰だったんだろ……。


「その代わりにお前らっ!!」


 リーダーはこの部屋にいる全員に声をかけた。


 そのまま彼は続けて、


「海成くんのあれ、見ただろ? ここだけの秘密にしろ! 分かったな?」


 メンバーは全員お互いの顔を見合わせて、頷く。

 秘密にしよう、そう誓ったのだろう。


「「「「「分かりましたっ!!」」」」」


「もし言ったら分かってるよな? お前らの恥ずかし〜い過去、この社内だけじゃなく大事な身内や友達、恋人全員に言いふらして生活しづらくしてやるからなっ!!」


「「「「「は、はいぃ……」」」」」


 みんなさっきまで威勢の良い返事していたのに、元気なくなってんじゃん。

 いや、あれはリーダーの言動に引いてるんだろう。

 だってもうやり口がもう陰湿すぎて。

 仮にも武闘家なんだから正々堂々と何かしろよ。


 でもなんでリーダー俺の【 魔力吸収 】隠してくれるんだろう?

 それに、そんな驚いてる表情じゃなかったし。


「じゃっ! 今日はちょっと早いが解散っ!! また明日なっ!」


「え? もう?」

「今日めっちゃ早くない?」

「なんでだろ?」


「返事はっ!!!」


「「「「「は、はいっ!!」」」」」


 と言うわけでリーダーは半ば強引に今日の集まりを解散させた。


 解散か、この後のこと聞いていないんだよな。

 リーダーにも聞きたいことたくさんあるし……どうしようか。


「海成くん!!」


 瑞稀が走って俺の元へ駆け寄ってくる。

 ダメダメ……そんな走ったらたわわが揺れて……。


「ど、どうした?」


 もちろんそんな下心が見えないよう平然とした感じで返事をする。


 すると彼女は俺の耳元へ口を持ってきて、


「ウチまだスッキリしてないんやけど? さっきの続き……せーへん?」


 そう耳打ちをしてきた。

 

 やめて、さっき彼女の胸を見てたからいかがわしい考えしか思いつかない。


「さっきの続きって戦いのことか?」

「せや! それ以外に何がある?」


 純粋に首を傾げてくる彼女に対して「エロいこと考えてました!!」なんて言えるわけもない。


 でもリーダーに解散って言われてるのに良いのだろうか。

 俺がそんなことを考えていると、


「おいー瑞稀!! 解散っつったろ?」


 やっぱりお声がかかった……。


「えーウチまだ海成くんと戦いたいのに……」

「いいからお前はダンジョンにでも行ってこい!」

「ダンジョンだって午前中終わったし……。まぁええわ、海成くん、行こ? ついでに社内案内したるわ」


 案内か、昨日今日で散々社内を歩き回ったから充分だけど、これから暇だしまぁいいか。


「だめだっ! 海成くんはここに残って俺と面談だっ!」

「め、面談ですか??」


 予想外の展開だ。

 でもリーダーに聞きたいこともあるし、ちょうどいいかもしれない。


「リーダー。ウチから戦いを奪った挙句、海成くんまで奪るんですか? 非情っ! この人非常やわっ!! うう……」


 瑞稀はオエオエと見事な嘘泣きをしている。


「お前はそんなんで泣く女じゃないだろ? ほら行った行った!」


「……てへっ! まぁバレるか! ほな海成くん後でまた会おなっ!」


「後で? うん、まぁ分かった!」


 嘘泣きをやめた彼女は手を振りながら颯爽とこの部屋を後にした。


「ようし、ようやく2人になれたな」


 事実そうだけど、嫌な言い方してくるな。

 そのセリフどうせなら瑞稀に言われたかった。

 いや彼女の場合は「やっと2人っきりになれたね(これで思う存分戦えるやん)」って感じだろう。


「そうですね。俺も聞きたいことがあったのでありがたいです」


「そうだろうなぁ。まず話をする前に自己紹介がまだだったか。俺は久後健斗。久後渉の実の弟だっ!」


 え、ガチですか?


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